第25話 『閃光の翼』と一緒に領都アルノスへ!
宝剣エクリプスは冒険者ギルドで厳重に保管されることになり、俺とリアはゴブリン調査の報酬を貰って、街外れにあるアルバート様の別邸へと戻った。
今朝早くに邸を出たのに、なんだか久しぶりに帰ってきたような気がする。
今日はゴブリンの巣穴に潜入したり、ゴブリンキングと交戦したり、色々とあったからな。
邸の玄関を開けると、アリスちゃんが飛び出してきてリアに抱き着く。
『リアお姉ちゃん、トオルお兄ちゃん、お帰りなさーい! アリス、ドリーお姉ちゃんのお手伝いをして、いい子で待ってたのー!』
「そうなんだ、アリスちゃんは良い子ね」
リアは自分の両手に魔力を集め、アリスちゃんをギュッと抱く。
すると廊下からドリーが現れ、俺達に向けて軽く会釈する。
「お疲れ様です。食事の用意ができていますよ」
「ありがとう。お腹がペコペコだよ」
俺はお腹に片手を当て、ニッコリと微笑む。
俺、リア、エルラム、オランの四人はアリスちゃんの後ろに続いて食堂に入る。
そしてテーブルの椅子に座っていると、台所からカーゴに乗せてドリーが料理を運んできてくれた。
それから皆で楽しく食事をして、今日は疲れ切っているので、シャワーを浴びてそのまま就寝となった。
今回の報酬で結構な額の大金をもらったので、五日ほどは冒険者ギルドにも行かずに、邸で戦闘の基礎訓練やリアと組手などの自己鍛錬をして過ごした。
そんな日々を続けていると、冒険者ギルドからの使者が邸にやってきてた。
どうやらガストンさんが呼んでいるという。
エルラムとオランはどこかへ遊びに行ったようで邸に二人の姿はない。
アリスちゃんはドリーから家事を教わっている最中なので邸でお留守番だ。
なので俺とリアは急いで装備を整えて、二人だけで冒険者ギルドへと向かった。
そしてギルドマスターの執務室の扉を開くと、『閃光の翼』のリーダーであるヨークとガストンさんがソファに座っていた。
「ヨークさん、レグルスの街に戻ってきていたんですね」
「三日前に帰ってきたばかりさ。とんぼ返りになりそうだけどね」
ヨークさんはニッコリと笑い、ガストンさの方へ視線を向ける。
するとガストンさんが険しい表情をして口を開いた。
「ゴブリンの異常発生とゴブリンキングの討伐、その経緯をバックランド伯爵に伝える必要がある。それとレグルスの街近郊の森が焼け野原になったこと、宝剣エクリプスのこともな」
「それならガストンさんが直接、アルバート様に報告してくださいよ」
「俺は冒険者ギルドの運営で忙しい。よってバックランド伯爵への報告は俺の代理としてヨークにやってもらう。それで『ホラーハウス』の二人は『閃光の翼』と一緒に領都アルノスへ迎え」
ガストンさんは脚を組み替え、フンと鼻を鳴らす。
リーゼのことはエルランド王国の王家も絡むことだから、冒険者ギルドからアルバート様へ報告してもらって、対処してもらおうと考えていた。
だって一介の冒険者が関わることではないからね。
「それなら『閃光の翼』だけで領都に行けばいいでしょ」
「ヨーク達は領都アルノスから帰ってきたばかりで、ゴブリンの異常発生については何も知らないんだぞ。それにゴブリンキングを倒したのも、宝剣を持ち帰ったのもお前達だろう。今回の一連の騒動の全てを知っている当事者が一緒にいたほうが話が早いからな」
「えー、報酬を貰えない仕事なんてイヤよ」
「レグルス近郊の森を一つ焼け野原にしたんだから、キッチリとバックランド伯爵に謝罪してこい」
頬を膨らませるリアに、ガストンさんが強い口調で言葉を投げつける。
エルランド王国では魔獣の素材や魔石は貴重な財源だ。
その魔獣達が生息する森を消失させたのだから、当然ながら領主様に報告義務があるわけで。
そこまで考えて俺はガックリと肩を落した。
「わかりました。アルバート様に謝ってきます」
こうして俺達『ホラーハウス』は『閃光の翼』と共に領都アルノスへ出発することになった。
翌日の早朝、冒険者ギルドの建物の前で待っていると、豪華な馬車と共に『閃光の翼』の面々が姿を現した。
そして馬車の扉が開いて、ユーリンさんがゆっくりと降りてきて、俺達に向けて微笑む。
「私もバックランド伯爵と会うため領都アルノスへ赴くの。冒険者ギルドに馬車の護衛を依頼したら、ガストン氏からアナタ達と同行すればいいと提案していただいたの。旅の間、よろしくお願いするわね」
そんな話は全く聞いてないんですけど。
ガストンさんめ、俺達を便利使いしたな。
ヨークさんが軽く手を上げ、俺達に近寄ってくる。
その後ろに『閃光の翼』が続く。
『閃光の翼』のパーティメンバーは、戦士職のライカさん、魔法職のロコさん、治癒師のソフィアさんの三人だ。
皆、それぞれに個性的な魅力のある、スタイルの良い美少女だったりする。
いわゆる『閃光の翼』はヨークさんを中心とするハーレムパーティなのだ。
やはりイケメンは異世界であってもモテるようだな。
何にも羨ましくないんだからね。
今回の旅には、俺、リア、エルラム、オランの四人の他に、アリスちゃんも一緒に同行してもらっている。
愛娘であるアリスちゃんがいれば、アルバート様も上機嫌で報告も上手くいくはずだ。
ヨークさんと少し打ち合わせをし、その後にユーリンさんが乗っている馬車を中心に、前方を『閃光の翼』、後方を『ホラーハウス』が護衛して、レグルスの街を出発した。
エルラムの説明によると、レグルスの街から領都アルノスまでは馬車で二日ほどの距離らしい。
一時間に一度は馬の体調を整えるために休憩が必要なので、馬車の旅は予想以上に進まなかった。
体力のない俺にとっては休憩が度々あるのはありがたい。
夜は魔獣や野盗が出没するため、夕暮れには道中の街で宿泊することになった。
旅の間に感じていたことだけど、リアと『閃光の翼』の女子達は仲よく話ているのに、なぜか俺は彼女達から避けられているような気がする。
宿で相部屋となったヨークさんに、そのことについて質問してみると目を逸らされた。
いったい俺について、どんな噂が広まってるの?




