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第23話 ゴブリンキングと謎の少女!

穴の中は三人が並べるほどの通路が迷路のように広がっていた。


狭い穴の中では剣を振り回すのに不利なので、俺とリアは武器を短剣に持ち替えて、ゆっくりと暗がりの通路を進む。

リアの体に憑依しているエルラムが、魔法で光球を作ってくれたので、明かりについては問題ない。


穴と穴が複雑に繋がっていて、どの通路からゴブリンの群れが現れるのかわからない。

それなのに、俺とリアに憑依しているエルラムとオランは、気にする様子もなく俺達の体を使って、ズンズンと穴の中を歩いていく。


すると通路の前後から数体のゴブリンが現れて挟み撃ち遭ったが、オランの暗殺術とエルラムの土魔法の攻撃により、簡単に撃破することができた。


地中深くへ続いている通路を進んでいくと、徐々に出没するゴブリンの数が増えてきて、前も後ろもゴブリンだらけの状態に。


幾らゴブリン達が詰め寄せても、穴の幅があるから、一度に三体ぐらいしか襲ってこれないんだけどね。

後ろからの圧力に負けて、俺達の手前で転がるゴブリンもいたりして。


そんなゴブリン達に、俺とリアは、オランとエルラムの憑依の力を借りて、サクサクと討伐して通路の奥へと進んでいく。


そして下り坂が段々と緩やかになり、どうやら最下層に到着したらしく大きな地下空間が広がっていた。

その広場に足を踏み入れた途端、四方の暗闇から鉄の矢と大きな石礫が飛んでくる。


それを察知したリアが短剣を大きく振るい、『ウィンドウォール!』と叫ぶと、俺達の周囲に突風が巻き起こり、次々と飛来物を叩き落とした。


「周りを警戒して! ゴブリンの上位種が出てきたみたいよ!」


すると暗闇から鎧を装備したゴブリン達が突っ込んできた。

ゴブリンソルジャーとゴブリンウォリアーだ。

しかし、オランが憑依している俺の敵ではない。


《ちゃっちゃと討伐しますよ!》


オランが俺の体を操り、暗殺術を駆使してゴブリン達を瞬殺する。

彼女が力を貸してくれなければ、殺されていたのは俺のほうだろう。


続々と出現する上位種達の攻撃に苛立ったリアが、大声で叫ぶ。


「もう面倒臭! エルラム、やっちゃいなさい! コキュートス!」


リアが手の平を床に叩きつけると、そこから絶対零度の冷気が発生し、俺を避けて周囲を凍らせていく。

俺達を襲撃していたゴブリンの群れは全て動かぬ彫像になった。

やっと静かになった広場を奥へ歩んでいくと、突然に強烈な威圧が全身を覆う。


「なんかヤバそうな奴がいるぞ!」


「やっと大ボスの登場ってわけね!」


ビビる俺の隣でリアがニヤリと笑む。

俺とリアが短剣から剣に武器を交換し、威圧が強まる方向へ走っていくと、三メートルを優に超えるゴブリンが煌びやかな剣を手に、俺達を待ち構えていた。


その姿を見た途端、俺の体に悪寒が走る。


「こんな体格のゴブリンがいていいのかよ!」


「あれはゴブリンキングよ! 奴がゴブリン達を扇動していたってことよね!」


気持ちを奮い立たせるように、リアはギリッと奥歯を噛む。


「グァグゥウアアーーーー!」


巨大なゴブリンキングが、剣を振り回して俺達を襲ってくる。

剣が振り下ろされると、砂塵が巻き起こり、地面に大きな穴が開く。


オランが瞬間移動のように体を動かしてくれたから避けることができたけど。


あんな一撃をもらったら、一発で致命傷だろ!


すると俺の頭にオランの声が響く。


《アタシの暗殺術でやっちゃいますよー!》


彼女の意識に委ねると、体が勝手に動きだしゴブリンキングへ近接する。


「頼むから、俺の体を大事に扱ってくれよ!」


《わかっています。回避能力は私のほうが上です。奴の攻撃はアタシには通用しないです》


ゴブリンキングの攻撃をかい潜り、オランが攻撃を加える。

しかし、ゴブリンキングの皮膚は分厚く、筋肉を断ち切ることができない。


「グァグゥウアアーーーー!」


傷を負ったゴブリンキングが怒り狂い、剣を大振りに振るい暴れ回る。

その一撃が俺を襲った。


強烈な一撃を無我夢中で剣で受け流したが、俺は盛大に吹き飛ばされた。

それを見たリアが両手を前にかざして、エルラムの特大魔法を使う。


「全部、凍っちゃえ! コキュートス!」


エルラムの魔法が発動し、地面から冷気が溢れだし、ゴブリンキングを一瞬で凍らせる。

しかし、ゴブリンキングは、その巨大な膂力で分厚い氷を粉々に砕き割った。


「グァグゥウアアーーーー!」


すると俺の頭の中に、小さな声が流れ込んでくる。


《私の剣を使って……キングが持っている剣を奪い取りなさい……》


《この声は一体、何ですか? 敵意は感じられないですが》


どうやら俺に憑依しているオランにも、少女の声が聞こえたようだ。


エルラムが火炎、風、土の特大魔法を使えば、天井が崩れて生き埋めになる可能性がある。

だからといって、氷結魔法ではゴブリンキングを倒せない。


ここは声の主の言葉を信じるしかない!


俺はリアに向けて大声で指示をだす。


「リア、エルラム、ゴブリンキングの剣を持っている腕を破壊してくれ!」


「何か策があるのね! エルラム、切り刻んでちょうだい! トルネード!」


リアが剣を大振りすると、そこから強烈な竜巻が発生し、ゴブリンキングの右腕を粉々に斬り刻んだ。

そして竜巻に弾き飛ばされ、剣が俺の手前に落ちてきた。


「この剣に何かあるのか?」


戸惑いながら剣を手に持つと、いきなり剣から意識が流れ込み、オランの憑依が解けて、彼女の霊体が体から飛び出してきた。


『アタシを追い出したアナタは誰ですか! トオル様はアタシが守るんですよ!』


「私はゴブリンキングに借りがあります。戦いの間、この体を貸してもらいます」


先ほどの声の主である少女の精神が、俺の意識を乗っ取り、勝手にしゃべり始めた。


肉体を共有することで、その素性がわかった。

あの英雄王子のようだ。


あれ? でもエルラムの話では王太子だったような?

でも、俺の体に入ってきた意識は少女のもので?


今はそんなことを気にしている余裕はないよな。

俺は心の中で、少女に声をかける。


《ゴブリン共に恨みがあるなら、俺の体を自由に使ってくれ》


「ありがとう。ゴブリンキング、今度こそ、八つ裂きにしてあげます」


俺の体の主導権を握った少女は、剣を片手にゴブリンキングへと跳躍する。

ゴブリンキングは赤く染まった眼で睨みつけ、俺に向かって拳を繰り出す。

しかし、その拳を、剣の一振りで両断する。


「宝剣エクリプスに斬れぬモノはない!」


地面に着地した俺は、次の瞬間にゴブリンキングの背中に転移し、その巨大な体を首から真下へと切り裂いた。


それと同時に、ゴブリンキングの体が轟音を立てて仰向けに倒れる。


あれだけ苦戦していたゴブリンキングを一瞬で倒すなんて。

英雄王子って本当に強かったんだな。

でも、どうして精神が少女なんだろう?

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