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第14話 ロックウェル商会のユーリンさん!

ギルドマスターの執務室を出た俺達は、すぐに冒険者ギルドを出て街の中央にあるロックウェル商会の建物へと向かった。


リアの話によると、ロックウェル商会はエルランド王国でも有数の大商会で、王宮御用達の商会でもあるらしい。


そしてロックウェル商会の現商会長にであるユーリス・ハミエルは、三代目にも関わらず、その功績を認められて、商人であるのに準男爵の爵位を持っているという。


大通りに面した大きな建物の中へ入ると、数々の武具や防具がキレイに棚に飾られている。

その他にも旅行に必要な装備、日常品など色々な商品が並べられていた。


店の中をキョロキョロと見回していると、俺達を発見した私用人の少女が声をかけてくれた。

それでギルドマスターからの依頼で店に来たことを伝えると、少女は礼儀正しくお辞儀をして、俺達を最上階の一室へと案内してくれる。


室内に入って、しばらく椅子に座って待っていると、扉が開いて眼鏡をかけた女性が入ってきた。


あれ? ユーリスという名前だったから男性だと思っていたけど、妖艶な美女が現れたぞ。

それにしても豊満な胸、キュット締まった腰、リアよりもスタイルが良さそうだな。


俺が女性に見惚れていると、なぜかリアに脇腹を抓られた。

イテテテテッ……これから女性の勘は侮れない。


優雅な動きで俺達の前の椅子に座ると、眼鏡を外して美女がニッコリと微笑みかけてくる。


「私が商会長のユーリスよ。よろしくね。あの筋肉お化けが来ると思っていたのだけど、可愛らしい冒険者さんが来てくれて嬉しいわ」


あのギルドマスターめ、自分の仕事を俺達に回したらしい。

もし面倒な案件だったら文句を言ってやる。


「俺はトオル、隣にいる彼女はリアと言います。それで依頼内容を教えてほしいのですが?」


「トオル君とリアちゃんね。あら、依頼内容はガストンに伝えていたのけど、もう一度説明するわね。この街に来てから変なことが立て続けに起こっているの。最初は執事のセバスが原因不明の体調不良で倒れたことね。その後も店の使用人が次々と倒れて、店の警備を頼んでいた冒険者のパーティも危篤状態になっているの」


「それって毒を含まされた可能性があるのでは?」


「私もそれは考えたわ。街の治療師に頼んで治癒魔法を施してもらったんだけど、何の効果もなかったの」


この世界に転移してから知ったのだが、この異世界には病院や医者はいない。

その代わりに治療院があり、治癒魔法を使える治療師達が人々の病や傷を治している。

その他に薬師や錬金術師という職があり、その者達が薬草を使って薬を作ったりしているのだ。


ユーリスさんの周囲で、次々と人が倒れているってわけか。


一番に考えられることは、ユーリスさんを狙った犯行だけど、それなら彼女が被害に遭っていないことがおかしい。


「この街に来た目的をお聞きしても?」


「レグルスの街の近くには『メルロムの樹海』があるでしょ。それもあって、この街では多くの魔獣の素材や魔石が売買されているわ。ロックウェル商会では、それらを加工して商品にしているの。それで今回はミルキースパイダーの糸を買い付けに来たのよ。あの糸で紡いだ生地は絹よりも高価で、貴婦人の方々にとても人気だから」


「ミルキースパイダーのドレス、私も一度は着てみたいわ」


「そうよね。ウェディングドレスにもピッタリな生地だし、女の子の憧れよね」


リアとユーリスさんは、意気投合してニコニコと微笑み合う。


日本にいた三十数年間、彼女の一人もできずに独身を貫いていた俺にとって、正装といえばビジネススーツしか思いつかない。


家にいる時の衣服はスウェットの上下を着ていれば十分だったからな。

そのおかげで洋服についての知識は疎いんだよ。


しばらくユーリスさんと話し合い、彼女が狙われている可能性もあるため、俺とリアは身辺警護をすることになった。


そして俺達の代わりに、エルラム、オランの二人には、ミルキースパイダーの糸を扱っている商会の調査をお願いする。


するとアリスちゃんが不満そうな表情で頬を膨らませた。


『どうして私にはお使いをさせてくれないの? 私だって役に立てるんだから』


「そうだよね。だからアリスちゃんは俺と一緒に居てね。もしもの時は俺とリアを守ってほしいから」


『そういうことなら、許してあげる。二人のことは私が守ってあげるから安心してね』


どうしてアリスちゃんを手元に置いておいたかというと、俺に戦闘能力を求めるのは無理だからだ。

リアから毎日のように剣術の指導も受けているし、基礎体力も向上はしている。


しかし、未だにスライム一体も倒したことのない俺が、身辺警備の任務なんて熟せる自信はないからな。


俺とアリスちゃんが話していると、その様子を見たユーリスさんが首を傾げる。


「トオル君は誰と話しているのかしら?」


「トオルはネクロマンサーの固有スキルを持っている冒険者なんです」


俺の代わりにリアがニコニコと応える。

すると俺を指差して、ユーリスさんは怯えた表情で目を見開く。


「それって死霊魔術を使って、人々をゾンビやグールの集団に変えて、国々を破滅させたって言われているネクロマンサーのことよね?」


いったい、この異世界のネクロマンサーはどんな悪事を働いたんだよ。

それだとまるで魔王みたいじゃないか。


すると姿勢を正して、微笑みながらリアが敬礼する。


「トオルが暴走した時のために私がいるんです。トオルは私に頭が上がりませんからね」


「ふふふ、それは頼もしいわね。それではリアちゃんに全てをお任せするわ」


「はい、お任せください」


リアさんや、その言い回しだと俺が悪役であることは確定じゃないか。

それにどうして、俺がリアの下僕みたいになってるんだよ。


確かに俺はリアに借金があるから、彼女の言葉を無視することはできないけどさ。


少し悲しくなって落ち込んでいると、アリスちゃんが優しく俺の体を擦る。


『トオルお兄ちゃんはいい子、いい子』


やっぱり小さな女の子って癒しだよな。

でも幼女に慰められている大人って……ちょっと泣いてもいいかな?

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