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さくらの恋  作者: ゆり
6/30

スタート地点

「…………大丈夫?」


「…………………………!!」


 優しくいたわるような声に導かれ目を覚ますと、斗真さんの美しいお顔が近くにあり心臓がばくばくした。なんだかいい匂いもして、それが私をなおさら緊張させた。


 失神した後、近くのベンチに座り肩にもたれて休ませてもらっていたようだ。申し訳なさで冷や汗が出てきた。


「だ、大丈夫です!!すみません、いつも迷惑かけて……!」

 

 斗真さんから私ってどう見えているんだろう。きっとよくひっくり返るミドリガメみたいな感じなんだろうな。


「あはは、別に迷惑とは思ってないよ。病院で慣れてるから。倒れるときに怪我しないか心配はするけど」


 そこまで言って、斗真さんが「あ、そうだ」と言った。


「次からはさ、倒れるときは俺の方に倒れなよ。絶対受け止めるからさ」


 ね?と極上の笑顔で言われ、私はまた顔が真っ赤になるのを自覚した。


「そ、そ、その前に倒れたりしないように頑張ります……!」


 そう言うのが精一杯だ。


「はは、ま、それが一番だね。慣れてほしいなぁ。にらめっこでもする?」


「……この辺りに血の池ができると思うので遠慮します……」


「あっはっはっはっは!」


 斗真さんが大きな声で笑った。神の贈り物のような麗しい見た目に反した豪快な笑い方。

きいているこっちまで嬉しくなってしまうような、明るい笑い声。


「…………………………」


 少しだけ斗真さんと仲良くなれた気がして、とても嬉しかった。ますます、斗真さんのことが好きになった。






ーーーーー






「今日は本当にありがとうございました。そして迷惑かけて申し訳ありませんでした」


 腰かけていたベンチから立ち上がり、深々と頭を下げた。


「あはは、ほんとにいいんだよ。でも今度からは、倒れるときは俺の方にくるように」


「は、はい……」


 がんばれ、私の迷走神経。(そして耐えた!)


「家の近くまで送ろうか?荷物持つの大変じゃない?もちろんさくらちゃんがよかったらだけど……」


 斗真さんの気遣いに思わずニヤついてしまう。

くぅ〜〜〜〜!なんて素敵な提案なの!だけど……


「あ、すみません、実はバイクで来てて……」


「バイク!?へーー意外だなぁ。なに乗ってるの?」


「CBっていうやつなんですけど……」


「あぁ、なんとなくわかる……。ホンダ?のやつだよね。友達が乗ってた」


「あ、はい、そうです!父のお下がりで……斗真さんが知ってたことにびっくりです!!」


「あはは、また一つさくらちゃんのこと知れて嬉しいな。バイクは生身で危ないから、気をつけて帰るんだよ〜」


「はい」


「またね。いつでも連絡ちょうだいね〜」


 ひらひらと手を振りながら、斗真さんは私がバイクを停めている駐車場とは逆方向に歩いていった。後ろ姿が見えなくなるまで、見送った。

 

 そして、街の喧騒が耳に戻ってくる。ーー斗真さんといるときは斗真さんの声しか聞こえていなかったけれど、こんなに音がしていたことに驚いた。そして、周りの人がずいぶん私を見ていることに気がついた。


(ひゃ〜〜〜〜きっと斗真さんのせいだーー!あんなかっこいい人の何なの?って感じなんだろうな〜〜)


 女性たちの厳しい目線から逃れるように、そそくさとその場を後にした。








 それからは医師国家試験に向けて勉強、勉強の毎日だった。楽しいクリスマスも、ゆっくりしたお正月も過ごせずえーんとなっていたけれど、鈴木くんが送ってくれた年末年始を実家で過ごす斗真さんの画像で自分を鼓舞した。(勉強頑張って♡の直々のメッセージ付!)






 そして、春 ーーーーーー






「藤村さくらと申します!!整形外科希望です!!よろしくお願いします!!」


 新人歓迎会での挨拶。


 おぉ〜という拍手と指笛が鳴り響く。


 美味しそうなお料理に、たくさんの職員さん達。その中にはーーーー愛しい斗真さんの姿が。




 試験をパスし、無事に研修医になれた(わたくし)藤村さくら、鈴木病院にて頑張ります!!!!

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