53・朝
翔子が起床すると、とっくに朝の8時を回っていた。
昨日はお風呂を終えて部屋に戻ると、眠気に誘われてすぐに眠ってしまった翔子だが、深夜の0時頃に一度目を覚ました。
その際に、持ってきていたパジャマに着替え、お手洗いを済ませた後に洗面所で歯を磨いて再び就寝。
次に目を覚ますと、もうすっかり朝だった。
翔子は服を着替えて昨日夕食を食べた和室の方に向かう。
すると、前からやって来た女性に呼び止められた。
霞乃家に雇われている三人いるというお手伝いさんの中でも一番年長らしい、50代くらいの女性だった。
その女性が言うには、なんでももうすぐ村長が梓に会いに屋敷にやって来るらしく、話し合いには昨日翔子たちが夕食を食べた和室を使う事になっているという。
お手伝いさんの女性は、翔子を別の部屋へと案内すると言って歩き出した。
後に続いてついて行くと、中央に洋風のテーブルの置かれたダイニングルームらしき部屋に翔子は案内される。
そこでは椅子に腰掛けた由那が朝食を取っていた。
「あ、おはようございます、翔子さん!」
そう言って、由那は翔子に笑いかける。
翔子も由那に挨拶を返した。
「おはよう、由那ちゃん」
「先に朝食頂いちゃっててすみません。翔子さんも朝食に呼ぼうかどうしようか迷ったんですけど、起こしちゃったら逆に悪いかなって思っちゃって。でも、ここが分かって良かったです」
箸を置いて、由那は答える。
翔子も口元に薄く笑みを浮かべながら言った。
「お手伝いさんに案内してもらったからね」
「坂見さんに案内されたんですね。いま彼女が翔子さんの分の朝食も用意してくれてるので、一緒に食べましょう!」
由那の言葉に頷くと、翔子は隣の椅子に座る。
由那の話によると、梓と由那の両親である清衣と英治、姉の蓮花の四人はすでに朝食を食べ終えたらしい。
夜須美とその両親は離れの方で普段は朝食を取るらしいので、ここでは食べないと由那が教えてくれた。
翔子は自分をこの屋敷に誘ってくれたのは夜須美だし、食事を取る前に離れの彼女に朝食について一応確認したほうがいいのかなと思いつつも、折角食事を用意してくれているし、由那にも悪いと思ったので、ここで朝食を取ってしまう事にする。
朝食は白飯に味噌汁、焼き魚にほうれん草のおひたしという、いかにも日本の朝ご飯という感じの献立だった。
素朴な味のする朝食は、きちんと用意された朝食を取ることがほとんどない翔子に取っては新鮮で、すごく美味しく感じてあっという間に食べ終えてしまう。
「翔子さん、もう食べ終えたんですか? わたしより早いです!」
「ちょっとお腹すいてたみたいだね……」
まだ食べ終えていない由那が驚きの言葉を出すと、翔子は少し恥ずかしそうにしながら答えた。
坂見というお手伝いさんが「おかわりもありますよ」と勧めてくれたものの、翔子はさすがにそれは断り、由那が食事を終えるのを待つ。
由那が朝食を終えると、二人で夜須美のいる離れに行こうと言う事になり、一緒に母屋の玄関へと向かうことになった。
昨日縁側で脱いだままの翔子の靴は、玄関の方に移しておいたと、食事を用意してくれた坂見というお手伝いさんに言われたからだ。
部屋を出る前に翔子が壁に掛けられた時計をちらりと見ると、時刻は午前9時前。
(ふわ先生、今日、何時くらいにここに来るんだろう?)
時計を見ながらそんな事をちょっと考えると、翔子は由那と共に部屋を出て、玄関へと向かった。




