46・蓮花
座卓に料理がきちんと並べられ、いよいよ食事となった時、和室の外の縁側の方から由那の声がした。
「ほら、お姉ちゃん」
「……ちょっと。由那、引っ張らないで」
翔子が見ると、和室の敷居の所で由那が一人の少女の腕をつかんでいる。
由那が腕をつかんで引っ張っているその少女は、彼女の姉である霞乃蓮花だった。
どうやら、由那は母である清衣の言う通り、ちゃんと蓮花を連れてきたようだ。
由那と蓮花は共に和室に入ると、空いている場所に座ろうと畳の上を歩いてくる。
翔子の近くまで来た所で、由那が蓮花に言った。
「あ、ほら、お姉ちゃん、翔子さん。今日から家に泊まりに来てるんだよ」
由那のその言葉で、蓮花が初めてその存在を認識したように翔子を見る。
翔子は軽く頭を下げて、蓮花に挨拶した。
「蓮花さん、こんばんわ」
「……」
蓮花は少し頭を下げたものの、素っ気なく何も言わずにそのまま歩いていき、翔子とは少し離れた場所に腰を下ろした。
(……やっぱり素っ気ないなあ、蓮花さん)
そんな風に思いながら、翔子はちらりと蓮花を見る。
長く黒い髪に整った綺麗な顔をした、Tシャツにハーフパンツ姿のその少女を。
蓮花は眠たいのか、大きな欠伸をすると目をこすっていた。
蓮花は翔子よりひとつ年上の18歳だが、高校には通っていない。
都会の全寮制の中高一貫校に通っていたらしいけれど、そこで何かあったらしく、4年前に村に戻って来てからは引きこもり状態でほぼ家にいる生活だという。
素っ気なくて、何を考えているのかよくわからない。
翔子としては、そんな印象のある蓮花だけれど、そこまで悪い印象があるわけでもない。
その理由としては、やはり蓮花のその容姿が、あまりにも翔子のよく知る人物に、そう、はすな様によく似すぎているというのがあった。
蓮花の容姿は髪型も、その顔立ちも、まるではすな様の生き写し……。
はすな様がそのまま成長したかのような、そんな見た目をしているのだ。
もし蓮花がはすな様のような和服を着れば、瓜二つの本当の姉妹のように見えるだろう。
だからこそ、翔子にははすな様が蓮花と顔を合わせたくない、苦手だと思う気持ちも分かった。
はすな様は幽霊なので、鏡に映った自分の姿を視認する事は出来ない。
でも、昔見た自分の容姿については長い時を経た今でも覚えているのだろう。
そんな自分とそっくりな見た目の人物が、生きて自分より年を重ねて成長しつつも、家に引きこもり人との接触をなるべく避けるように生活している。
幽霊が見える翔子のような人間としかコミュニケーションを取れないはすな様としては、そんな蓮花を見ていると微妙な気持ちになるのかもしれない。
(もしはすな様が蓮花さんと話すことができれば、はすな様が蓮花さんに抱く感情も何か変わるのかな……)
そんな事を考えている間にも食事時となり、和室に集った翔子や夜須美たち6人は各々用意された料理を食べ始める。
和食中心の料理はどれも美味しく、料理を味わいながらこんな食事を取れるだけでも翔子は夜須美の家に泊まりに来てよかったなと思うのだった。




