45・夕食時
「うう、もう駄目。がくっ」
「翔子さん、死なないで! しょおおおこさああああああん!」
ダイスロールに失敗し、翔子のプレイヤーキャラが死亡してしまった事にショックを受けた由那が絶叫しながら叫ぶ。
「しょおおおこさああああああん! 翔子さんの敵は、絶対わたしが取ります! 翔子さんを食い殺した凶悪な邪神はこのわたしが絶対に異界に追い返してやりますから!!」
ゲームに熱中し、興奮気味に話す由那を見ながら、死亡したことでゲームから開放された翔子はふうとため息をつく。
(由那ちゃん、熱中しすぎだよ……)
翔子が由那の用意してくれたジュースとおやつを口にしながら二人とテーブルトークRPGを遊び初めてから、すでにかなりの時間が経過していた。
(……今、何時だろう?)
翔子がふと時計を見ると、もう午後六時を過ぎている事に気がつく。
進行役のGMをしていた夜須美も時間が気になったのか、壁の時計を見ると言った。
「もう六時か……。そろそろ夕飯だし、ゲームはこの辺で切り上げて母屋のほう行こっか」
夜須美の言葉に、ゲームに熱中している由那はまだ続けたそうに強い口調で言う。
「まだです! まだ終わりません! わたしのプレイヤーキャラであるところの名探偵ユナちゃんはまだ夜須美さんの鬼畜シナリオの凶悪な殺人事件を解決していません! おぞましい邪神にSAN値を削られ、無惨にも食い殺された翔子さんの敵を取るんです!」
「いや、そろそろ飯の時間だから。ゲームの続きはまた後でやろう。あたしも熱中してたからお腹すいちゃったし」
「むー、じゃあご飯食べたら絶対続きやりますよ」
夜須美の言葉に由那は渋々納得し、後でまたゲームの続きをすると言う事で、翔子たちは母屋の屋敷の方に移る事になった。
靴を履き外に出ると、まだ空は明るいものの、外の暑さは幾分か昼間よりはましになっている。
翔子たちは縁側から母屋に入ると、夜須美たちが家族が揃っている時はいつもそこで夕食を取っているという広い和室へと移動する。
そこには40代くらいの眼鏡をかけた女性と50代くらいの髪に白髪が混じった筋肉質な男性がすでに座っていた。
由那の母親である清衣と夜須美の父親である茂だった。
「……あれ、母さんとお祖母ちゃんは? いつもはいるのに」
夜須美が聞くと、茂はお酒を口にしながら答える。
「まだ帰って来とらんよ。ま、俺たちだけで食べようや」
どうやら梓と朝美は昼に出かけたきり、まだ帰ってきていないらしい。
由那の父親である英治は今日は仕事で帰りが遅いらしく、ここにはいないという。
翔子は茂と清衣に挨拶すると、座卓の近くに置かれた座布団に夜須美に続いて座る。
由那も翔子の隣に座ろうと腰を下ろしかけたが、その時、清衣が由那に声をかけた。
「由那、蓮花連れてきて。一緒に食べようって」
「はい。でも、お姉ちゃん、また一人で食べるっていうかもです」
「でも、一応声だけはかけてみて」
「分かりました」
腰を下ろしかけていた由那は頷くと、蓮花を呼びに和室から出ていく。
「呼んでもこないでしょ。蓮花、付き合い悪いもん。夕飯もいつも別だし。……まったく、部屋に閉じこもっていったい何やってんだか。まあ、あたしもあんまり人の事は言えないけどさ」
夜須美がやれやれといった感じで言った。
(蓮花さんか……。わたしも数回しか彼女とあったこと無いけど、確かにわたしよりも人付き合いは悪そうな感じだったな……。見た目はあんなに……)
翔子が蓮花について考えている間にも、霞乃家に雇われているお手伝いさんによって座卓の上に料理が並べられていった。
翔子は座卓に並べられる料理を眺めながら、多くの人と料理を食べる機会なんてこれからもあまりないだろうから、味わって食べようと思いつつ、食事の時を待つ。




