22・つきあい
――暇なら、あたしに付き合ってよ。
夜須美にそう言われた翔子は言葉を返す。
「ん……。別に時間はあるといえばあるけど、何するの? もしかして、また夜須美さんちでゲーム? なんとかトークRPGとかいうやつ」
「テーブルトークRPGね」
そう言って、夜須美は翔子の言葉を訂正する。
はあ、とため息をつくと翔子は言った。
「……あれ難しくてわたしよく分かんないよ。テレビゲームと違って直にお喋りしながら話を進めていくRPGってのはちょっと面白いなって思うけど、ルールちゃんと覚えなきゃだし、SAN値だとかよくわからないパラメーターが多いし、夜須美さんはこっちが絶対クリアできないシナリオ作ってくるし……」
「そんな事言わないでよー。ゲーム仲間には霞乃さんはGMするのうまいねって言われてるんだよ〜」
あははと、そう言って笑う夜須美に、翔子は首を横に振りながら言う。
「だからGMとか言われてもわかんないから……」
「ゲームマスターの略だよ。ゲームマスター」
夜須美は翔子に言い聞かせるように言葉を返した。
テーブルトークRPG。
それは麻雀と並ぶ夜須美の愛好する趣味である。
その中でも、アメリカの古典怪奇小説を原典にした神話を題材としたゲームが夜須美のお気に入りだった。
翔子はこれまでに何度か夜須美にそのゲームのセッションに誘われて、一緒にプレイしている。
ただ、ゲーム内容については翔子には理解出来ないことも多く、嫌いという訳ではないものの、夜須美に無理やり付き合わされているという面が多々あった。
翔子は夜須美が自分をゲームに付き合わせるつもりなら断ろうと、きっぱりと言った。
「……ともかくゲームやろうって言うなら付き合えないよ。今日から期末テストだから、勉強しないといけないし」
翔子の言葉に夜須美は首を横に振ると言った。
「いや、今日はゲームをしようって訳じゃないよ」
「じゃあ何かな?」
「実はこれから人に会う予定なんだけど、翔子もよければ一緒にどう? あたしひとりじゃちょっと気まずくってさ」
夜須美は頭を掻きながらそう言うと、翔子は冷めた口調で言葉を返す。
「……ひとりでは気まずい人に会うのに、わたしを付き合わせる気かな?」
「……そう言わないでよ。会うの久々だし、一人じゃ不安なんだよ」
そう話す夜須美は、翔子から見て本当に不安そうに見えた。
翔子は夜須美が誰と会おうとしているのか、少し気になって聞いてみることにする。
「……夜須美さんがこれから会う人って、わたしの知ってる人かな?」
「うーん、知ってるといえば、知ってるかな? まあ、会えばわかるよ。……どうする? あたしとしては、できれば翔子にも来てほしいんだけど……」
知っていると言えば、知っている。
その言葉に、翔子は夜須美が会おうとしている人物についてすこし興味がわいてきた。
翔子も知っている人物とは一体誰なんだろう?
夜須美に付き合って誰かに会うのも、勉強中に事件の事を考えて憂鬱になるよりはいいかも知れない。
そう考えた翔子は、口元に微笑を浮かべると言ったのだった。
「……うん。あまり遅くならないなら、別にいいよ」




