20・GhostEater AnotherSide GM
ノートPCでダークウェブにアクセスしたGMは、銃器や爆発物、毒物、飛ばしのSIMカード等、今後必要になる物品を閲覧しながら、村を舞台にした殺戮劇の幕を開くことができる喜びに心を震わせていた。
GMにとって、ある意味チートとも言うべき強力な駒を手に入れることが出来たのは、まったく僥倖といえる。
その駒とGMが巡り合ったのは、ほんの偶然だった。
心にぽっかりと空いた深い穴。
それをごまかすために、気晴らしに何気なく登った山で、出会ったのだ。
祠より目覚めし、怨霊。
村への憎しみを充満させ、積年の恨みを溜め込みながら眠り続けていた、生きた人間の皮を被った死者に。
GMは見つけた時にはすでに死亡していた三人の外国人たちの首と足を、山の泉の近くに料理と共に放置されていた調理器具の包丁を一度引き返して手に入れ、再度怨霊が佇むその場に戻った後に切断した。
そして、解体の際に自らの指紋が付着したかもしれない三人の衣服を剥いだ後、痕跡を残さないよう慎重に死体を飾り付け祠に供え、怨霊に恭順の意思を示したのだ。
そうする事で、GMは祠に眠っていた怨霊と、奇跡的にというべきか、それとも必然的にというべきか、意思疎通を図ることに成功したのだった。
意思疎通が図れたのは、GMもまた、特殊な能力を持った人間である事も影響しているのかも知れない。
GMが持つ特殊な能力。
それは、幽霊をその目で見る力。
幽霊の声を聞く力。
そして、その幽霊を食べ、食べた幽霊の持つそれまでの生前の記憶と死後の記憶を自分の物として共有する力である。
GMは自らのその能力を、幽霊喰い――ゴーストイーターと呼んでいた。
羽賀良純という男を依り代とした怨霊との対話。
その中で、GMは怨霊の性質やその恨みの深さと憎しみを知った。
怨霊の持つ葦野雁村への強い悪意と敵意――それを知った時GMもまた、自らの目的を果たす駒として、怨霊を利用することを思いついたのだ。
他者に憑依し操ることのできる、死ぬこともない最強の手駒。
もしこの怨霊が死ぬことがあるとすれば、それは自分が喰らった時くらいだろうとGMはほくそ笑む。
怨霊を手駒に使うことができれば、葦野雁村と、そしてそこに暮らす者たちに終わりをもたらすことができるのだ。
(……殺して、殺して、殺し尽くす!)
ダークウェブで必要な物品を注文しながら、これから村で起こそうとしている血にまみれた光景を想像し、GMは高揚する。
GMは今度はSNSを使って、高収入高待遇の闇バイトの募集をかけた。
本格的に大量殺戮を実行に移すのはまだすこし先になるが、大規模な計画となるためGMにはそれなりに人員を確保しておく必要があったのだ。
近場で人材が確保できればそれに越したことはないが、それが無理なら、雇った闇のアルバイターは時期が来れば観光客を装わせ村に潜入させればいいと、GMは考えていた。
闇バイトのニュースが世間を騒がせる昨今、大金をちらつかせれば、金のない愚か者たちは簡単に儲け話に食いついてくると、GMは確信していた。
ソファーに座ったままじっと動かない、羽賀良純という名の男の皮を被った長き眠りより目覚めた亡者を横目で見ると、GMは酷薄な表情を浮かべ哄笑する。
殺人ゲームを進行するGameMasterであり、怨霊を手駒とするGhostMasterであり、霊をこれまで食い散らかしてきたGhostMurdererでもあるGMの手による、葦野雁村を舞台とした恐るべき殺戮劇がもうすぐ幕を開けるのだ。




