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ゴーストイーター 葦野雁村の惨劇  作者: 榎広知幸
第一幕 はじまり
19/74

19・これから

 これから先の事を考えていた翔子は、いつまでもここにいても仕方ないと思い、スカートのポケットからスマホを取り出した。


 時間を確認すると、いつの間にか午前11時を過ぎている。

 これからすべき事を考えると、時間的に学校は今日は休む事になりそうだと翔子は思う。

 

 まずは死体の事を知らせなくてはいけないし、それにこの場に姿が見えない羽賀の事も伝える必要があった。

 三人を殺した存在が羽賀の身体に取り憑いたままの可能性を考えると、出来るだけ早くしたほうがいいと翔子は考える。

  

「はすな様、これからの事なんだけど、 先ず取りあえずは警察を呼ぼうと思うんだ」


 スマホを手にした翔子の言葉に、はすな様も頷いて答えた。


「うむ、そうじゃな」


 翔子は110をプッシュし、警察に電話をかけようとする。


 しかし回線が繋がらなかった。


 画面上に表示されたマークを見ると、どうやら電波状況が悪いようだ。


 スマホを手に、じっと画面を見つめている翔子が気になったのか、はすな様が尋ねてくる。


「……どうしたのじゃ?」

「ここ、スマホの圏外みたいだよ。面倒くさいけど、村まで下りて連絡するしかないみたいだね」 


 そう翔子が言うと、はすな様はスマホをじっと見ながら頷く。 


「そうか。ふむ、そのスマホとかいうやつの事は儂にはよくわからんのじゃが、ここは村からすこし離れておるからのお。……しかし、遠くの人間とそんな小さなもので会話できるとは、便利な時代になったものじゃの」


 そのはすな様の言葉に、翔子は少しだけ苦笑する。


「……はすな様、ほんとなんというか、お年寄りみたいだね。見た目はこんなに可愛いのに……」

「ふん。儂は長くこの世に留まっておるのじゃ。年寄りじみていても仕方あるまい。ささ、山を下りるのなら、さっさと行くぞ、しょーこよ」


 ぶっきらぼうにそう言うと、はすな様はその場から歩き出す。


 翔子もはすな様に続いて歩き出そうとして、ふと立ち止まった。


「……あ、ちょっと待って」


 そうはすな様に言うと、翔子は祠の方を振り返る。

 そして目を瞑ると、最後にもう一度だけ、三人の外国人の遺体に黙祷を捧げた。


 しばらくの黙祷の後、その場を後にした翔子ははすな様と共に、日が昇るにつれて徐々に蒸し暑くなる夏の山を足早に下りていく。

 村にこれ以上不穏な出来事が起きないようにと、そう願いながら……。


 この刻より後、葦野雁(あしのがり)村が不穏な空気に包まれる事を、そして元凶ともいえる霊的存在を使って、その協力者が村に終焉をもたらすべく策謀を巡らせようとしている事を、翔子やはすな様、そして村に平穏に暮らす大多数の人間はまだ知らなかった。

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