第9話 もしや女神様?
「で?お願いとは、それだけであるか?」
「はい……あっそうだ。
帰りに王妃陛下の部屋に寄らせて頂いても宜しいでしょうか?」
「ああ、もちろん構わんよ……あいつもエルフィナ嬢に会いたがっていたんだ。
しかし、病気が進行してな……ベッドから起き上がれんのだよ。
行ってやってくれるか?」
「ええ、その事はマックス王子から聞いていましたので……
王妃陛下は、私の数少ない理解者でしたので……
陛下、それでは私はこれで失礼致します」
「ああ、そうそう……馬……兄上。一つ言っとくけど、
エルフィナはもう、俺のものだからな?」
「な、なんだと?お前達いつの間に!
エルフィナ、お前、浮気してたのか?」
「はあ?それ本気で言ってるのか?
兄上が一方的に婚約破棄して1年半も経つんだぞ?
婚約者でも何でもないのに浮気?あんまり笑わせるなよ?
な?エルフィー?」
「ねえ?マックス?いつ私が貴方のものに?」
「昨日、婿にこいっていったじゃん?」
「も〜……たわいのない痴言でしょ?
まあ……マックスの事、小さい頃から結構好きだったから……それはそれで……」
「よっしゃ〜婚約ゲットだぜ〜!」
「ちょっと……それは未だ確定じゃないって言ってるのに……
ちゃんと両親とか皆んなと相談しなきゃならない事なんだから……
それは又、落ち着いたら話しましょ?」
「うん、そうだな。よっしゃ〜嫁さんゲットだぜ〜!」
「何も分かってないわ……おバカ1人ゲットだぜ〜!」
〝コンコン!〟
「母さん入るよ?」
「あら、マックスじゃない?貴方一昨日帰国したんですって?
何故すぐに顔を見せないのよ?あれっ?まあ!エルフィナちゃん?
来てくれたの?久しぶりね?」
「あっ!私がエルフィナだって直ぐ分かってくれた!」
「何言ってるの?その可愛らしい顔……
貴方は昔から私の可愛い娘……分かるに決まってるじゃない」
「母さん、エルフィナはもう兄上の婚約者じゃ……」
「知ってるわよ。あのバカ息子の事は……
それでもエルフィナちゃんは、私の可愛い娘」
「だが母さん!喜べ!エルフィナは俺の嫁になる」
「ちょ、王妃陛下にまで……決定じゃないんだからね」
「まあ、そうなのエルフィナちゃん!なんて嬉しい……」
嬉しさからなのか、むっくりベットに起き上がるマリーアン。
光を失っていた瞳が、輝きを取り戻していた。
「起き上がって大丈夫なのか?母さん?てか、良く自分で起き上がれたな?」
「平気みたい……ここ暫く助けを借りなければ、起き上がれなかったのにね?
でも私、残念だけど多分エルフィナちゃんの花嫁姿を見る事は出来ないわ……」
侍医の話では、もって一月……そう余命を告げられていた王妃マリーアン。
エルフィナも、その事は、マックスから聞いて知っていた。だからこそ会いたかった。
「あ、あの…… 王妃陛下……私……ただお会いしたかっただけじゃなく……
えっと……その……王妃陛下に試したい事が……」
「やだわ、女妃陛下だなんて、もうお母様って呼んで!
で、何?試したい事って?私に出来る事なら何でも言ってね」
「あの……マックスが言うには……私、心で強く思った事が現実になるかも?
……なのです……だから……」
前世の女神だった頃から、エルフィナの魔法は異質だった。
魔法理論も何も無い。ああしたい、こうしたい。あんな事良いな、出来たら良いな……
それが、思っただけで、実現する。
それがエルフィナのポケット……じゃなかった……魔法だった。
「失礼しますね?」
女妃マリーアンを、優しく抱きしめるエルフィナ。
「え〜と……大好きな……お母様?(ちょっと気恥ずかしいわ……)
の病気……良くなれ……お願いどうか……元気になって下さい……」
2人がほんのり淡い光に包まれる。
「お、おい……どうなってる?光ってるぞ?エルフィー……そして母さんも……」
「な、何?この光?エルフィナちゃん……そしてこの光……とっても暖かい……」
「大丈夫なのか?2人共?」
「大丈夫よ?マックス。むしろ、とっても気持ち良いわ……
ちょ……ちょっと……こ、これは……な……なんて事なの?エルフィナちゃん!」
「どうしたんだ?母さん?」
「あれ程の痛みが……息苦しさが……消えていくわ……」
「マ、マジか?」
「ま、まさか……もしや……私の病……治っている?
でも……こんな事出来るのは、神様しかいないんじゃない?
エルフィナちゃん?貴方は一体何者なの?……もしや神……女神様?」
「やだ、そんな訳ないじゃないですか?お母様。私は貴方の娘なんでしょ?」
(本当に出来た……これが私の魔法?そんな訳ない。
心で思うだけで発動する魔法なんて聞いたことも無い……
でも今は、そんな事はどうでも良いわね……
王妃様の病が綺麗さっぱり治った……
それだけで本当に……良かった……)
「これで、私の花嫁姿を見て頂けますね?」
「おっ。もうその気じゃん?エルフィー」
「グッッ……貴方の花嫁とは言ってない……」
少し不満げに、でも顔は、ほんのり赤く染まっていた。
エルフィナ本人は、未だ疑心暗鬼であるが、これは間違いなくエルフィナの魔法だ。
前世で、他の世界の神々に、疑懼の念を抱かせる程、異質な魔法……
思うだけで魔法が発動し、思った様な結果をもたらす。
そしてその範囲は極大。魔力量は膨大。
前世女神だったエルフィナの物語はまだ始まったばかりだ。
数ある作品の中から見つけ出し、お読みいただき、ありがとうございます。