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第8話 私何もしていませんよ?

「ちょ!お、お前は……まさか……エルフィナなのか?」

「誰に見えまして?アレックス第一王子」

「父上もよくご覧ください。何度も会っていますでしょう?誰に見えます?」

「た、確かにその顔は……エルフィナ嬢……どういう事だ?

 これ程までに美しい(むすめ)だったのか?何故、醜いと思い込んでおったのだ?」

「お言葉を、宜しいでしょうか?」

「うむ。許す」

「呪いでオークの様に醜く見えていた様です。

 本質を見抜けるアルガルド学園長が、そう仰っておられると……

 以前そう申し上げた事が有りましたが……お忘れですか?」

「確かにその話は聞いたが……本当だったのか……」

「まあ、そう言う私自身も半信半疑だったのですが……

 で、お呼びとの事ですが、本日は何用でございますか?」

「いや……他でも無い、一昨夜の事を聞きたくてな?

 エルフィナ嬢よ、お前、どんな魔法を使ったのだ?」

「それは……私にもよく分かりません。妹メアリナに危険が迫り、無我夢中で……

 本当に私が魔法を放ったかどうかすら分かりません」

「そうなのか……その様な魔法が存在するとは……

 誰1人聞いた事がないそうじゃ」

「そうですか。もう一度やってみよと言われても出来るかどうか……

 大切な人に危険が及べば、また出来る……そんな気はいたしますが……」

「そうであるか……」

 こんな国、その気になればいつでも消し去れますよ?そう言う意味だ。

 自分を軽んじる者、特にアレックス第一王子辺りが呪いが解けた今、

 何と言ってくるか……それを考慮しての脅し文句だった。

 本当に出来るかどうかすら分からない……

 マックスと、事前に示し合わせたハッタリだ。


「おい、お前!それだけ綺麗な……いや、それ程の魔法を使えるのならば、

 もう一度俺の婚約者にして……」

「謹んで、辞退致します」

「な、なぜだ?お前は産まれる前から俺の婚約者で、

 ずっと俺の嫁になりたかったんじゃないのか?」

「ご冗談を?醜いだの無能だの、あれだけ(さげす)まれてきたのに、

 貴方の妃に等、なりたいと思う訳がありませんでしょう?」

「いや……それは……お前に掛けられた呪いで……」

「ええ、その呪いのお陰で、その人の本性が分かりましたので、

 そこは呪いに感謝した方が良いのかもしれませんね?

 失礼ながら、貴方には、人を思いやるとか、人に優しくするとか、

 そういうものが欠如しておりますよ?

 それって、国を率いる王に、必要な資質なのではないですか?」

「何だと!言わせておけば……ウグウグウグッ……ウグウグウグッ……」

「どうしたアレックス?」

「ウグウグウグッ……ウグウグウグッ……」

「エルフィナ嬢……お前何か?」

「いえ、陛下。私は何も……」

(エルフィー、何したんだ?)

(どうしよう……私にもよく分からない……これ以上聞きたく無い……

 そう思ったけれど……まさかそれで?)

「だ、誰か……何とかしてやってくれ……」

「父上。もしかすると、エルフィナ嬢は心で強く思うと、

 それを現実にする事が出来るのかもしれません……

 兄上が、あまりにもエルフィナ嬢を不快にさせたので、

 もうこれ以上聞きたく無い……そう思った事で言葉が出せなくなったのでは?」

「それが、エルフィナ嬢の魔法の正体と?」

「申し訳ありません……私にも本当のところは分かりません……」

「エルフィナ嬢、何とかしてやってくれんか?」

「そう仰いましても……どうしたら良いのか?

 えっと……殿下?もうお話ししても宜しいですよ?」

「ウグウグウグッ……ウグウグウグッ……」

「あっ……ダメですか?」

「エルフィーが心の底からそう思わないと……ダメなんじゃ無いか?」

「心の底から?う〜ん……どうしよ……難しいかも……」

「これ以上、何も言われる事はない……そう安心出来なきゃ無理か……

 ん?兄上、瞬きは出来てるな……瞼まぶたは動くんだ?

 全身動けなくなってる訳じゃないんだな?

 だったら答えろよ……イエスなら瞬き3回。

 ノーなら1秒目を瞑る。良いか?」

「ウグウグウグッ……ウグウグウグッ……」

「そうじゃなくて……良いか?分かったのか?」

 〝パチパチパチ〝

「おお、出来るじゃないか……そんじゃあ質問するぞ?

 もう2度とエルフィーに関わらないと誓うか?イエス?ノー?」

 〝パチパチパチ〝

 エルフィナがホッツとした様に溜息をついた。

「安心したか?エルフィー……

 兄上……もしかしてもう動けるんじゃ?」

「ハアハアハア……助かった……き、貴様〜!ウグウグウグッ……」

「……私何もしていませんよ?」

「では何故?」

「もしかしてさっきの術?が、完全に消えたわけではないのでは?

 兄上が、もうエルフィーに関わるのはやめよう……

 そう本心から思った時に動ける様になるんじゃないか?」

「そうなのか?」

「分かりません……本当に自分でも自分の力がよく分かっていないのです……

 でも、私もそんな気がします……」

「プププッ……だろ?いきなり貴様とか言うからだろ?バカ兄貴……

 もう関わりません……そう言えよ?あ?口が動かないから言えないか?

 じゃあ心で思え……本心から……」


「ハアハアハア……う、動ける……」

「兄上、今後は良からぬことを考えない事だな。

 それにしても面白いなエルフィー。これって呪いみたいじゃん?」

「あ、確かに……そうだ……陛下……陛下にお願いが……」

「……な、何でしょうか?」

「くすっ……陛下……陛下に呪いみたいなもの掛けませんよ?

 そんな事、本当に出来るかどうかも分かりませんし」

「そ、そうか……助かる。で、何だろ?」

「アルガルド先生にもお願いしてあるのですが……

 一昨夜の奇跡は、私の祈りが神に届き、

 神が助けてくれたと……そう言う事にしておいて下さい。

 夜空から、光の柱が降りてきた事は、遠くからも目撃されていた様ですし……」

「何故その様な事に?」

「今は未だ、何が起きたのか、何が出来るのか私にもよく分かっておりません。

 公にするには、時期尚早じきしょうそうかと……

 そいう事にしておいた方が、何かと都合も宜しいかと思います」

「都合とは?」

「この件が他国に知れ渡ったら、奴らエルフィナ嬢の事を、

 放っては置かないのではありませんか?父上?」

「なるほど……そう言う事か……分かった」

「ご理解頂き、ありがとうございます」

数ある作品の中から見つけ出し、お読みいただき、ありがとうございます。

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