第7話 エスティア王国第2王子マックス
エスティア王国第2王子。
白銀の髪に、碧く透明な瞳。鍛えられた肉体で長身。人懐っこい笑顔の超美形。
国王によく似ている王太子とは反対に、瞳以外は、どちらかというと王妃に似ている。
コスタル帝国の学校へ、1年間の留学をしているはずだった。
「チェッ……バレバレか?完璧な変装だと思ったんだがな……
俺か?俺は留学を早めに切り上げて、昨日帰ってきてたんだよ」
帽子と黒髪のカツラを外しそう言った。
「だって貴方だけじゃない?年が近い子供の中で、
小さい頃から、私と普通に接してくれたのは……
良くしてくれた幼馴染位すぐ分かるわよ?
なんでまた変装なんてして来たのよ?」
「エルフィー……だってさ……帰国するなり、
城中、魔族の襲来とお前の話題でもちきりで……
無事だとは聞いてたけど気になって、早く顔を見たかったんだよ。
王城抜ける許可を父上達に伺ってたら、
ごちゃごちゃ言われて面倒くさそうだろ?
変装して抜け出した方が早いと思ってさ」
「王城抜ける為だけなら、うちに着いたら、直ぐに王子だって言えば良いのに……
1年経っても何も変わらないわね?相変わらずいたずらっ子なんだから」
「ハハハ……エルフィーを直ぐに登城させろとか言ってんだぜ?
馬鹿だろうちの親父?疲れているだろうとか思わないのかな?
でもエルフィー……お前随分変わったって聞いてたけど……別に変わってないよな?
呪いだっけ?他の奴らは俺とは違う姿に見えてたって事か?」
「そうみたいよ?掛けられていた呪いが解けたのかもって、
アルガルド先生が仰っていたわ」
「ふ〜ん……俺には元々呪いが効いて無かったって事か?
お前の家族でさえ掛かってたのに何でだろな?
それはそうと……エルフィー、頼みが有る」
「なあに?結婚の申し込みならお断りよ?フフッ……」
「オイッ!ひどいな……あのさ、帰るなりあの事件だろ?
俺も昨夜から何も食ってないの!俺にもなんか食わしてくれ」
「ああ、王城も大騒ぎ?大変だったのね?勿論良いわよ?セルジオ、3人分で!
ああでも、料理長の料理は、当分いらないって伝えてくれる?」
「お嬢様……そう仰ると思っておりました……」
「フフッ……少し苛めてあげないとね?」
「そうよね?うちの使用人の中で、居ない者扱いしていたランキングNo1だもんね。
あっ、それにお弁当の恨みでしょ?お陰で私はお姉様の美味しいお弁当頂けた……
あれ?って事は、お姉様、昨日のお昼も食べてないじゃない?そりゃお腹空くわよ」
「すっかり忘れてた……思い出したら余計お腹すいてきた……
セルジオ、6人分にして」
「うめ〜 このパスタ最高じゃん?」
「でしょでしょ?うちのカルボナーラ、濃厚で凄く美味しいでしょ?
パスタ係のお兄さん凄く優秀なのよ。
意地悪な人に代えて、料理長に任命しちゃおうかしら?」
〝パクパク〟とパスタを頬張りながらそう言うエルフィナ。
「お前……その食べっぷり、疲れてるって割には凄いな?」
「今は、疲れの眠気より。食い気が勝ってるのよ?ほんとよ?ね、メアリー?」
「冗談だよ。災難だったものな?」
「貴方だけよ?王家や親族の、再従兄弟の中で、
幼い頃から私とこんな風に話してくれていたのは。
だから私、嬉しくて昔から貴方と話す時は、いつもこんな話し方になっちゃうのよね。
オーク顔の私だったのに、何故こんな風に接してくれてたの?」
「さっきも言ったけど、オーク顔だと思った事はなかったけどな?
それに、そもそもお前を女の子とは、思ってなかったからな?」
「ほ〜?そういう事言うんだ…… 貴方そろそろ帰った方が宜しくってよ?」
「いや、お前を男だって思ってた訳じゃないぞ?
男とか女とか気にしてなかったって言うか……
だから……悪い意味でじゃなくてさ。
同性の友達作るのに、顔がどうかなんて気にしないだろ?
あっ、だからか?俺に呪いの効果が無かったのは?
そもそも、俺も母上も、前々からお前を、醜いとか思ってなかったしな。
皆んなが、何故そんなに醜いって言うのか不思議だったよ。
特に、母上なんて、最初から、お前の事、
綺麗な娘だってずっと言ってたもんな?」
「冗談よ。今はどうなのよ?ちゃんと女の子に見えて?」
「まだ言うか?凄く綺麗だよ……恥ずかしいこと言わすなよ?
そうだ……いっその事、俺の嫁になるか?」
「いやよ。さっきも言ったでしょ?あんな第一王子のそばで暮らすなんてお断りよ」
「あはは、そうか?あのバカ兄貴のせいで、俺が振られちまったぜ」
「そうだ……だったら貴方、うちに婿入りしない?それだったら考えても良いわよ?」
「お、それ良いね!てか、それも良いけど、なんなら王家乗っ取っちまうか?
バカ兄貴に任すより、ずっと良い国になるぜ?」
「なあ、お前達……その辺でやめておいてくれ……更に胃が痛くなる…」
「冗談よ?お父様、気、小っさ!」
「陛下。マックス王子が、エルフィナ様をお連れです」
「うむ。入ってくれ」
「父上。ただいま戻りました」
「王子自らご苦労であった。そう言えば、お前はアレと仲が良かったな?」
「アレとは何でしょう?エルフィナ嬢の事ですか?
最初に申し上げておきますが、
王立学園アルガルド学園長と、現場を調査した魔法院フェルナンド院長曰く。
排除したいものだけ消滅させ、逆に傷付いた者を再生させる……
しかも一つの魔法で同時に。
その範囲は3kmにも及んでいたそうです。
それだけの、未知の極大魔法を放ちながら、
エルフィナ嬢の魔力量は、全く減っていない様に見えたと言っておりました。
これがどう言うことか、お分かりになりますよね?
エルフィナ嬢を軽く扱わない方が宜しいのではありませんか?
下手な事をすると、国が滅びかねませんよ?」
「いや……言葉のあやと言うか……別に軽くみてるわけでは無いぞ?
で?エルフィナ嬢はどこだ?来ておるんだろ?
ん?そこの娘、入室を許可した覚えはないぞ。
誰じゃ?おま……それにしても綺麗な娘だな……」
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