第6話 クククッ……お前との婚約は破棄な?
新年、明けましておめでとうございます
楽しいお正月をお迎えでしょうか
本年も良い年でありますようにお祈り申し上げます
「そしてお前……未だかつて、誰も見た事のない様な極大魔法を放ったとか……
一体何がどうなっているのだ?いつから魔法が使える様になった?」
「さあ?私にも分かりません。あれは本当に私の魔法だったのかしら?
私には魔法を放ったと言う自覚が無いのだけど……
只々、メアリーが危ない!そう思い、無我夢中で……」
「そう言えば私……未だお姉様にお礼を言ってなかったわ……
魔族の魔法から身を挺して守ってくれて、
更には剣が目の前に迫った時、その魔族を殲滅してくれた……
自分の命よりも、私を優先してくれた……私は……私は今まで……
有り難う、お姉様。そして……
今までの事……謝らなければ。申し訳ありませんでした」
「何を言ってるの?メアリー。妹の事を守るなんて、当たり前の事じゃない?
それに貴方が、良い娘だと言うのはずっと前から知っていたわよ?
アレックス王子との時だって、貴方本当は、怒ってくれていたんでしょ?」
ランスロット国王と、エルフィナの父、アーノルドは、従兄弟同士で、
アレックス王子とエルフィナは、再従兄弟になる。
男の子と女の子だったらと言う前提ではあったが、
2人が生まれる前から婚約が決まっていた。
「……なあ、エルフィナ。分かっているとは思うが……
クククッ……お前との婚約は破棄な?」
半笑いで、婚約破棄を告げるアレックス王子。
「承知致しました……」
〝何故ですか?〟とは聞かなかった。
金色の髪に、碧あおく透明な瞳。目鼻立ちも整った、誰もが憧れる王子。
それがエスティア王国第1王子アレックスだった。
一方、オークそっくりと揶揄されるエルフィナ。釣り合わないのだ。
当然とばかりに、婚約破棄を半笑いで宣言されたのは、
間も無く王立学園入学という頃だった。
「喜べ、メアリナ!俺はお前と婚約しようと思ってる」
「謹んで御辞退いたします」
「な、何だと?何故だ?これ以上の縁談は無いだろう?」
「私、隣国のコスタル帝国……かの大国の、
オスカー皇太子との、縁談のお話がございまして……」
(何よ……わざわざ王子の誕生パーティーの最中に……
多勢が集まる中で……エルフィナ姉様の事バカにして……何様?)
(ちょっと……メアリー?未だその話は……)
(良いの。お姉様は黙っていて?)
「何をコソコソ話してる?〝かの大国〟と言ったか?
我が国を小国とバカにしているのか?不敬であろう!」
「滅相もございません。小国等と……我が国は立派な中堅国ではございませんか?」
(ちょっと……メアリー……)
(黙ってて……)
「き……貴様……」
「不敬と仰いました?こんなパーティーの大勢の前で、女性に恥をかかせる……
それこそ失礼にも程がありませんか?殿下?」
「き……貴様……覚悟が出来た上で言っているのだろうな?」
「そうですね?コスタル帝国のオスカー皇太子に、この事をお話したら、
私、怒られてしまいますかね?」
「………………」
その縁談の話が本当ならば、この2人の立場は逆転している。
「あの時は本当にハラハラしちゃったのよ?
あの後その縁談が纏まってホッとしたもの……」
「あの時、不敬だと言われて私に何かあったら……」
「恐い事言わないで?」
「ううん?私に何か悪い事が起こったら、
その時がお姉様の魔力が覚醒した時じゃなかったのかしら?」
「まあ……それは……そうかもね?」
〝〝フフフフ……〟〟
「お前達、王子をバカにするのは、その辺でやめておいてくれ……胃が痛くなる……」
「やだお父様ったら、気の小さい……」
「ちょっと……大変!聞いていただけのお母様が放心状態よ?……
やだ〜ハハハハ……」
大物姉妹であった。
「エルフィナお嬢様。王城からお呼び出しだそうです」
家令長のセルジオが部屋に入るなりそう言った。
「お断りして。昨夜からの事で、今はもうクタクタ……
〝エルフィナは、体調を崩して寝込んでいる〟そう伝えて」
「お……お嬢様……」
セルジオの後ろには、バツの悪そうな顔をした、王家の使いの者が立っていた。
「お使いのお方?そういう事です。私は、寝込んでおりますので、
体調が戻り次第、明日にでも、お伺いしますとお伝え下さい。
ねえ?セルジオ。私達昨夜から何も食べていないの。
簡単な物でいいから、食事の用意お願いできるかしら?」
「お……お嬢様……」
「ああそうそう、お使いのお方。私達昨夜から一睡もしておりませんのよ?
先ほどの様な報告を陛下にしたら、役立たずとか何とか言われて、
貴方にご迷惑が掛かるかしら?」
「いえ、問題ございません。その様にお伝え致します。
エルフィナ様は、体調を崩して寝込んでらっしゃいますので、
無理にお連れする事は出来ませんので……」
「話が早くて助かります。王城で、貴方に何か不利益でもあれば、
うちにいらして下さいな。王家より良い待遇で雇いますよ?
……なんてね……第2王子のマックス君?貴方いつ帰国したの?」
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