第4話 嵌められた女神
「なんて酷い状況なのかしら……」
星々が塵と破片とかして、乱雑に漂っている。
鼻をつく焦げた匂いだけが残っている。
「で、でも……この魔力の痕跡は……この波長……
も、もしかして私の神聖魔力?な……何で? あ!?……まさか……」
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「すみませんね。エルフローラ様。我らの神聖魔力では、到底足りず……」
毎月毎月、これで5回目。
魔石で作られている、小さな小屋程もあろうかという、
巨大な魔力の櫃に、神聖魔力を注ぎ込んでいた。
第12宇宙の中心付近で、超新星爆発が起き、膨張しているとの事だが、
広い宇宙の事、一見しただけでは、その様子を確認する事は出来なかった。
しかし、第12宇宙の神々に、そう頼まれれば、いつもの様に、その魔力を分け与えていた。
「もう後、5回程補充頂ければ、充分な神聖魔力が溜まりますので……
第12宇宙の中心にこれを配置し、櫃を作動させ、
魔力の渦を作れば、又、求心力が、戻るはずです……
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(まさか……あの溜めていた魔力が使われた?何故?
でも私の魔力だけでは爆発は起きないはず……一体何がおこっているの?)
全く状況を掴めないエルフローラ。
(考えている余裕はないわ……今直ぐやらければ、手遅れになる……)
手を合掌させ祈るエルフローラ。その胸が光出す。徐々に広がる眩い光。
やがてそれが渦を成す。回転し出す星の破片。しだいに集まり元の姿に戻っていく。
灰すら残っていなかった生き物も、時を戻す様に再生していった。
エルフローラの祈りは丸一日続き、第12宇宙は、殆ど元の姿を取り戻した。
エルフローラは、力尽き意識を失う。
「今だ!捕えよ!このチャンスを待っていたんだ!」
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「エルフローラが、大惨事を引き起こした?何故その様な話になるのだ!
あの娘こは、ここ数日この聖域から一歩も出てはおらんぞ?
その様な事を、あの心優しいエルフローラがする訳なかろう?
今朝は、多くの生命の消滅を感じ、寝込んでおったのだぞ?」
「魔力の痕跡ですよ。破壊された現場の、あの魔力の波長は、
間違いなくエルフローラの神聖魔力」
「な……なんじゃと?
バカを言うな、エルフローラの神聖魔力の痕跡だと?
ええい!もうよい。わし自ら確認する。わしもエルフローラの後を追う」
「お待ちなさい。エルフローラは、どういうつもりか分かりませんが、
本当に、第12宇宙を再生を試みている様です。
今は邪魔をせず、見守りましょう。
再生が完了した時、参れば宜しいではありませんか」
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「今だ!捕えよ!このチャンスを待っていたんだ!」
「ちょっと待て!チャンスだと?お前達何を企んでおるのじゃ?」
「そうですな…… エルフローラが、この大惨事に関わった事は、
貴方方にもお分かり頂けますでしょう?」
「確かに……この魔力の痕跡、この波長は間違いなくエルフローラのものじゃ。
だからと言ってエルフローラが、この大惨事に関わったとは言い切れまい。
だいたい、エルフローラにとって、
特別関わりのない、第12宇宙を破壊する事に何の意味がある?
そう言えば、ここの所、第12宇宙のお主らに神聖魔力を分け与えておったな?
溜めておると聞いていたが、それはどうした?
それを誰かが使って大惨事を引き起こしたのではないのか?」
「ふふふ……もういいでしょう……
茶番は終わりです。この娘を素直に引き渡すか……
我々全宇宙の神々と敵対するか、今直ぐ決めて下さい」
「……そう言う事か……お前達はエルフローラの桁外れな力を恐れるばかりに、
大きな間違えを犯してしまったんじゃの?
エルフローラが、第12宇宙を再生しなければ、大きな犠牲が出たのだぞ?
見守らねばならん自らの宇宙で、よくもそんな事が出来たものだ……
間違っても神のする事ではない」
「エルフローラが、見かねてこうする事は、織り込み済みですよ?」
「……で、この娘をどうするつもりなのじゃ?」
「あれ程の神聖魔力に守られているエルフローラを、処するのは難しいでしょうな?
でも、神聖魔力を使い果たした今ならどうでしょう?おい!お前達!」
「ま、待て!」
〝ガンガンガン‼︎ドシュドシュドシュ‼︎ドッカンドッカンドッカン‼︎〟
容赦のない一斉攻撃が、気を失い無抵抗のエルフローラに降りかかる。
「……なんと言う事を……ザルサール、お前達に、神を名乗る資格は無い……」
立ち込めた煙が晴れてくると、光に包まれたエルフローラが見えてくる。
「な、なんだと‼︎ここまでしても無傷だというのか?……」
「よく見るのだ……透けておろう?あれはもうエルフローラの身体ではない……
あの娘の心……その魂の姿じゃ。残った僅かな神聖魔力が魂だけは守ったのじゃな。
あれは、わしが連れて帰る……」
「勝手な事を抜かすな……あれは我らが封印す…………な、なんだ?……」
第1宇宙の創造神の周りに、黒紫色の殺気が纏わりついていた。
「勘違いするでない。これはお願いでは無い。わしをこれ以上怒らせるな……」
さすがは原初の創造神……この創造神も又、規格外であるようだ。
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