第19話 帝王家の本音
「オスカー!この馬鹿者が!そんななりで玉座の間に入るでない!く、くさっ……」
「父上!街の奴らを処刑して下さい!そうでないと、皇家の威信に関わります」
「馬鹿者!威信を無くしたのは、お前ではないか!
分かっておるのか?お前達は帝王の継承権を、既に失ったも同然なのだぞ?」
「な、何を仰ってるんですか?聞いて下さい!あのクソ平民……」
「何も聞かんでも分かっておる!
帝国中、ありとあらゆる所で、空中にお前達の映像が流れておったわ!」
「えっ?どういう事ですか?」
「糞尿まみれで、平民をコケにしている一部始終が、
そこら中の空間に、音声付きで映されておったのだ!
表と裏の顔位、使い分けられんでどうする!
国中で、お前達へのパッシングが始まるだろうよ?
こうなった以上、もはやお前達では、国を維持出来んだろう……
とにかくオスカーは、身体を綺麗にして、
部屋で謹慎しておれ!アスターお前もだ」
「お、お待ち下さい。聞いて下さい」
「全て見ておったと言っただろ!何を今更聞く必要がある?
お前達は、まんまとしてやられたんだ!まだ分からんのか?」
「してやられた?誰にです?」
「お前達が、亡き者にしようとしてた者に決まっているだろ!
あの神の愛子、エルフィナの小娘だろが!
神の愛子だか何だか知らんが……
あゝ忌々しい!あの醜い化け物娘が!」
「今、神の愛子を亡き者にしようとしたとか言わなかったか?」
「神の愛子を、〝醜い化け物娘〟とか罵倒してたよな?
こりゃあ神の怒りをかうぞ?
大丈夫なのか?帝王家……てか、この国?」
「いやそれより、〝クソ平民〟だとか、〝表と裏の顔を使い分けろ〟とか……
あれが帝王家の本音なのか?」
「陛下!おやめ下さい!今又、全国に、ここの映像が映し出されております!
それを見て、民が騒いでおります」
「お、終わったのではないのか?ここではもう映し出されておらんぞ?」
「ここ以外の場所では、今まさに、ここが映し出されております……」
「くっっ…………」
「お帰りなさい姉様……」
「アンカー……貴方もあの映像を見た?」
「はい……ここだけではなく、帝国中で流れた様ですね?
今は王城の、父上達が映し出されています」
「ごめんね……アンカー。貴方には嫌な思いをさせてしまったわね……」
「私は構いません姉上。しかしあれが全国に映し出されたのです。
多くの国民が、不快な思いをした事でしょう……
でも、残念ですが、あれが帝王家の真の姿なのです……
何と言って民に謝罪したら良いのか……
国民あってのコスタル帝国。帝王家は、国民の為にあるべきなのです。
国民を蔑んだりする事は、あってはなりません。
こうなってしまった以上、帝王家を信頼して貰うのは難しいでしょう……
国民に反旗を翻されても不思議ではありません。
国の混乱は、免れないでしょう。
私は今後どうやって、国や民を守っていったら良いのか?
私は無力です……でも民の為なら、なんでもします!
私は何をすれば良いのでしょう?教えてください姉上」
「あれがアンカー皇子なのか?今迄あまり表に立つ事はなかったから、
分からなかったけど、帝王家だと言う驕りもなく、謙虚で国民思い。
あの人こそ次期帝王に相応しいんじゃないか?」
映像は変わり、今はここ……アンカーの映像が、全国に映されていた。
口々に囁かれる帝王家への蔑みと、アンカーへの賞賛。
「「「「「「「「「「ア・ン・カ〜!ア・ン・カ〜!ア・ン・カ〜!ア・ン・カ〜!」」」」」」」」」」
次第に叫ばれる〝アンカー〝の大合唱。
「アンカー皇子!街で貴方を求める声が溢れ、この丘まで届いております」
「えっ?この歓声みたいな音が?
姉上、もしかして、今ここが全国で、映されているのですか?」
「そうみたい……ね」
「えっ?姉上がやっているんじゃないのですか?」
「違うわよ?こんな事、私に出来るわけないじゃない。私も驚いているの」
「こんな奇跡を見せられるのは、神様しかいないんじゃない?
私達の為にやってくれてるんじゃない?」
「私達を狙う勢力を、徹底的に潰すとは言ったものの、
私の数少ない魔法で、どうやろうかと思案していたけど、
戦わずして敵を失脚させる……効果絶大よね?
もし神様がしてくれているのなら感謝しなきゃね」
「さ、アンカー。国民の声に応えなきゃ!」
「……うぅぅ、全国民が見てると思うと……緊張してきた……」
「頑張れアンカー!謝罪するんでしょ?」
「は、はい!えっ……と……国民のみなさん。
皆様には不快な思いをさせてしまい、本当に申し訳ありません。
帝王家の1人として、心よりお詫びいたします。
しかし今、この国を混乱に陥れる事は、避けなければなりません。
こんな、何も力のない私を、信頼してくれと言っても、難しいかもしれません。
でも、私には神の愛子と言われるエルフィナ様や、
ランスロット国王の、マックス王子達が見守ってくれています。
国民の皆様も、どうかお力をお貸しください。
この帝国をより良い国にしていきましょう!」
「「「「「「「「「「おお〜〜おお〜〜〜〜〜〜!!!!」」」」」」」」」」
「よく出来ました。百点満点よ。
玉座に座るアンカーと、その横に立つメアリーが見えたのは……
こう言う流れだったのね……」
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