第10話 もう……noって言えないじゃない……
「ついに前世の力が目覚め始めたか……これから人間として人の中で、
あの娘がどんな事をするのか……どんな人生を送るのか楽しみじゃ」
「そうですね。私も楽しみです。……それはそうと創造神様。
こうなった今、他の世界の神々は、放っておいて大丈夫なのでしょうか?」
「エルフィナから漏れ出ている神聖魔力で、わしが地上を覆った結界はもう直ぐ壊れる……
あ奴らに、エルフィナの能力が蘇った事を知られるのも、時間の問題じゃろうな」
「では又、何か仕掛けてきますね?」
「どうかの?今のエルフィナを見たら、恐れ慄いて、近づかないかもしれんぞ?
あの魔力量……前世の女神だった頃を遥かに超えておる。
あの頃でさえ規格外と言われていたにも拘わらずじゃ……」
「エルフィナからの復讐を恐れて、毎日生きた心地がしない……ですか?」
「じゃな……」
「エルフィナお姉様!」
「メアリー?どうしたの大きな声を出して……何かあった?」
「コスタル帝国から招待状が届いたのよ」
「まあ、それは良かったじゃない?オスカー皇子にお会いするの半年ぶり位?」
「私にじゃなくて、エルフィナお姉様によ」
「え?嘘?私が呼ばれているの?なんで?」
「まだあれから2ヶ月も経っていないのに、噂は既に国境を越えたった事でしょ?」
「困ったわ…… お断りできないかしら?……でも……それは無理よね?
オスカー皇太子の婚約者というメアリーの立場が……
行くしかないわね……又、好奇の目に晒されるのか……」
「何言っているのよ?羨望の眼差しを向けられるに決まってるじゃない……」
「……それはそれで……嫌かも?」
「無理ね。あそこの第2皇子とか、お姉様と年齢も釣り合うから……でしょ?」
「ないわ〜あの皇子、前に会った時、近づいてきて耳元で、
〝おい、化け物。もう2度と我が帝国に来るんじゃないぞ?〟って言ったのよ?
〝メアリーの結婚式だけは、お許しください〟って言ったら、
ため息つかれて〝はぁ〜お前、妹に、恥をかかせるつもりかよ……〟
だって…… まあ、その時は一理あるなって思ったけどね?」
「やだ〜一理あるとか、そんな事思わないでよ?クスッ……
でも、あの男が、どんなふうに手のひら返しするのか見ものね」
「それはちょっと見てみたいわね。フフフッ……」
「あっ、でもあのアスター……って言ったかしら?あの第二皇子、婚約者いたんだったわ……」
「そうだ!自分で自分に認識阻害かけちゃおうかな?出来るかしら?」
「オークに見える様に? お姉様が、誰よりも綺麗だったって情報が、
既に行ってるはずだから、それやっちゃうとばかにしてるだとか、
不敬だとか言われない?それに私、綺麗なお姉様を自慢したいわ」
「やだメアリー。私なんかより貴方の方が綺麗……ううん?とっても可愛いわよ」
メアリナの頭をクシャクシャ撫で回すエルフィナ。
「ちょっ……髪が乱れるじゃない……もう……
それよりお姉様、お姉様の特殊な魔法は……
出来たとしても、あまり使わない方が良いかも……
それこそ、返してくれなくなるかもよ?」
「エルフィー。コスタル帝国から招待されてるんだって?
俺も付いてくぞ?」
「マックス、コスタルから帰って来たばかりじゃない?また行くの?」
「お前達2人だけにはしておけない……
あそこの帝王家……特に皇子達はちょっと曲者だぞ?」
「そうかしら?アスター第二皇子はともかく、
オスカー皇太子は、好青年に見えたわよ?問題無いんじゃない?」
「あの2人は俺が留学した時の先輩だったんだけど、
余り女癖が良いとは言えなかったぞ。
大国意識も強く、俺らの国をずいぶん下に見てる感じだった。
自国の利益の為なら何言い出すか分からないぞ?」
「だとしたら、そんな人と婚約しているメアリーもちょっと心配ね。
でも貴方がついてくる意味もあんまりないんじゃない?」
「俺はエルフィーの婚約者として付いて行く。
エルフィーが婚約してるって事を知らしめていた方が良いだろ?
婚約の事は、父上にも、もう了解を貰っている」
「婚約の話は又、ちゃんとしましょうって言ったじゃない」
「俺と婚約するのは嫌なのか?」
「嫌じゃないって言ったでしょ?
でもそんなに簡単に決める事ではないでしょう?
結婚後の貴方の立場をどうするとか、
色々決めなきゃいけない事が、沢山あるんじゃない?」
「それは分かるが、お前にとっても、立場をはっきりさせとかないと、
色々面倒な事になるぞ?分かるだろ?」
「う〜ん……それでも無理難題をゴリ押ししてきそうだけど……
それにしても、あの1つの出来事が、
こんなに大きく波紋を広げるとは思ってなかったわ」
「ゴリ押しなんてさせてたまるか。俺はお前を失いたくないんだよ?」
「前はそんな事言ってなかったじゃない?」
「お前は生まれる前から、兄上の婚約者だっただろ?
兄上の婚約者だからと、無意識に、心にブレーキをかけてたのかもな?」
「王妃様は私のこといつも可愛いって言ったくれてたわよね?
私の両親でさえ醜く見えていたのに、
どうして私の事、綺麗だって言っててんだろ?」
「あの人、昔から病気がちだったろ?静かに寝ている事が多かったからか、
他人にはない、感性みたいなものが有るんだよきっと……」
「あっ、それ、この前お会いした時に私も思った……
でも貴方はどうして醜く見えてなかったんだろ?」
「俺は、お前が綺麗だとか醜いだとか、そう言う事を気にしていなかったからな。
だから本質が見えていたんじゃないかな?
それにしても、お前にあんな酷い呪いを掛けたのは誰なんだろうな?」
「アルガルド先生が、呪いを解こうと随分調べて下さったのだけど……
全く分からなかったんだって。
この世の者が掛けたとは思えないって仰ってたわ」
「赤ん坊の頃からだろ?不思議だな……」
「ねえ、マックス。私の呪いが解けて……
綺麗だから一緒になりたいとかじゃないってことよね?」
「ああ、もちろん。俺には姿が変わった様には見えないぞ?
……だからもう一度言う。お前を失いたくない。俺の嫁さんになってくれ」
「もう……noって言えないじゃない……」
「そ……それじゃあ?」
「陛下のお許しが出ているの?」
「ああ」
「だったら私も、両親に、ちゃんと話さなきゃ……
でも……心は決まったわ。そのお話し、喜んでお受け致します……マックス王子」
「よっしゃ〜!」
「ちょっ……痛い痛い……」
力任せに抱きしめられるエルフィナ。
「あっ、ごめん……」
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