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04 氷の魔女の真実

 酷寒で吹雪の世界


 騎士カイロスの上に集められた冷気の固まりは、氷の魔女の命令に従い急降下した。


 その瞬間、カイロスは聖剣クトネリシカを降り、冷気の固まりを振り払ったが、やがて、落ちてきた大量の雪に覆われ見えなくなった。


「たわいもないな。何が世界最強の騎士だ」


 氷の魔女は吐き捨てるように言った。


 その時


 カイロスを完全に覆っていた大量の雪が黄金のせん光にきらめいた。


 次の瞬間、大量の雪は全て消滅し、その場で聖剣を構えているカイロスが現われた。


「なんだ。聖剣を持っていることを考慮すべきだったか。しかし、聖剣を振うのは生身の人間、我が酷寒冷気の攻撃を何回もくらえば、体も動かなくなるに違いないだろう」


 そう言うと、氷魔女は冷気の攻撃を何回も連射した。


 そのたびに、カイロスは自分を凍らせようとする冷気の固まりを聖剣で吹き飛ばした。


 何十回、何百回、それは続き、やがて、騎士カイロスに変化が現われた。


 聖剣を振るスピードがだんだん遅くなってきたのだ。


 もう今は、極めて遅く、ようやく冷気を振り払っているような状態だった。


 氷の魔女が勝ち誇ったように言った。


「騎士カイロスよ。勝負はついたな。我が冷気はだんだんお前の血流を凍らせ、やがてお前は動くことができなくあり、剣を振ることもできなくなる。そして完全に凍れ」


 氷の魔女は勝負を決着させようと、全力で魔力を込め巨大な冷気を払った。




 その時

 ロメル王国の王宮、ソーニャ王女の寝室だった。


 専属メイドのカノンが一生懸命、部屋の掃除をしていた。


 王女はあいかわらず目を閉じて死んだように横たわっていた。


(さとる)さん、悟さん‥‥ カイロス、カイロス‥‥ 」


「えっ! えっ! 」


 カノンは大変驚いた。


 王女は相変わらず目を閉じて意識がないようだった。


 しかし、無意識に何かを感じて口を動かし、しゃべっていた。


 王女の言葉は緑色の光になり、部屋を出て空を飛んでいった。


 それを見ていたカノンはさらにまた驚いた。




 氷の魔女と騎士カノンとの戦い。


 魔女が最大の魔力を込めた冷気を放ち、それはカノンに届こうとしていた。


 瞬間、彼は思った。


(なんとか‥‥ な‥‥ )


 既に彼の両手両腕はひどい凍傷で、もう少しも聖剣を振うことができないくらいだった。


 その時だった。


 間一髪のタイミングで緑色の光りが彼の両手両腕に届いた。


 それはヒールの光り


 一瞬に騎士カイロスの両手両腕を治癒させた。


 感覚的にそれを感じた騎士は思う存分、聖剣を振った。


 冷気は完全に聖剣に切断された。


 騎士カイロスは最初、何が起きたのかわからなかったが、すぐに直感で感じた。


「風香さん、ソーニャ王女ありがとうございます」


 氷の魔女は自分の魔力を全て使い果たした様子で、ふらふらだった。


 そのため、逃げるように大木の幹の中にある自分の家の中に入って行った。




 カイロスは氷の魔女を追いかけた。


 そして最後には、魔女の家の扉を開けて中に入っていった。


 様子は普通の家とほとんど変らなかった。


 ただ、消耗しきった氷の魔女がソファーに横たわっていた。


 その回りには、とても小さな雪の妖精や氷の妖精が心配そうに魔女を見ていた。


「騎士カノンよ。この子達を殺すのか。前のように私の心を傷つけたいのだろう」


「何を言っているのだ。前に、私はこの小さくて可愛らしい妖精達を目の前で殺したのか」


「そうだ。殺せない魔女の代わりにな。戦争でロメル帝国を苦しめた私への罰と言っていたな。あれから、新しくこの子達がようやく育ったのだ。かわいらしい私の子供達だ」


「お前の子供達を、お前に目の前で、私が殺したのか? 」


「そうさ。とても残虐で愉快な顔をしていたな。だから、私は復讐するため、お前の婚約者であるソーニャ王女の心を永久に凍らせる呪いをかけたのだ」


「そうでしたか‥‥ 」


 そう言うと、騎士キャノンは聖剣クトネリシカをそばに置き、床に座りおわびした。


 頭を床にこすりつけていた。


「申し訳ありませんでした。お気持ちは十分にわかります。ただ私は心の底から愛するソーニャ王女様が元に戻り、明るく生き生きと話すようになれることを望んでいます。解呪をお願い致します」


 氷の魔女の目が驚きのあまり大きく開いた。


 そして彼女は魔眼を開き、騎士カイロスを見つめた。


「私は魔力をもつ魔女です。ですから、あなたのことがよくわかりました。異世界から来られた別の方、ソーニャ王女もそうなんですね。私の呪いは今、解きます」


「ほんとうにありがとうございます。小さくて可愛らしい妖精さん達と一緒に、いつまでも幸せにお暮らしください」


「騎士カイロス様。ほんとうは、神宮悟(じんぐうさとる)様とおっしゃるのでしょうか。今、あなたが心から愛する人の命を脅かしているものを私が凍らせました。これ以上、拡大させません」


「心から感謝致します。そうするとソーニャ王女、北川風香(きたがわふうか)さんの命は救われたということなのでしょうか? 」


 氷の魔女は悲しそうに首を振った。


「あなたがいらっしゃった世界からすると、今のこの世界は異世界です。異世界で行った結果は、完全にあなたがいた世界に影響するわけではありません」


「どのくらいの効力をいただいたのでしょうか? 」


「たぶん、ほぼ同時に放たれた呪いが13あるのですから、13分の1以上の効力はあるのでしょう」


「わかりました。でも、たとえ13分の1でも私の愛する人の命が守られるですから、では失礼します」


 騎士カイロスは、氷の魔女の家を出ようとした。


 氷の魔女が言った。


「神は乗り越えられない試練は与えません。がんばってください」


 励まされた彼は、会釈して外に出て行った。




 その頃、王宮では大騒ぎが起きていた。


 ソーニャ王女が目を開けたのだ。


「悟さん」


 専属メイドのカノンがそばにいて、大至急みんなを呼びに行った。


 王女がポツンとつぶやいたが、それを聞いた誰もが意味を理解できなかった。


「長い間、魔法で心を凍結させられていた反動だろう」


 ロメル国王はそう言った。


 大魔法師マーリンが言った。


「騎士カノンが氷の魔女に勝利したようです。今、この部屋に転移してお帰りになります」




 やがて、みんなが見ている中、騎士カノンが転移して実体化した。


 カノンは実体化すると、すぐにソーニャ王女のベッドのそばに近づき、その手を握り締めた。


「風香さん。目覚めたのですね」


「はい。悟さん、あなたの騎士としての戦いは夢の中でしっかり見てました」


「呪いで心を凍結させられていたのに? 」


「たぶん。私は、この世界では異世界人ですから。呪いの効力も完璧ではないのかもしれませんね」


 

 


 

 





お読みいただき心より感謝申しわげます。

皆様の休日を少しでも充実できれば、とても、うれしいです。


もしお気に召しましたら、ブックマーク、重ねて御評価いただけると作者の大変な励みになります。

よろしくお願い致します。





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