33 第2の魔女アリス
すぐに、ランダは白魔女として、結びの魔法を使うことを決心した。
「離れてしまった2人の未来、それは本来、1つなり永遠に離れないもの。神の摂理に反する状態を元に戻し、1つとなり永遠に幸せに暮らせん。神の恵み、発動せよ! 」
ランダは上空に向けて魔法の杖を振ると、そこにたくさんの星の粒ができ、恋人達の運命を元に戻すためロメル王国中に降り注いだ
星の1つが2つに分れ、先に第3の魔女に引き裂かれてしまったアイリスとウォーレンに落ちた。
星が落ちたことに2人は気づいていなかった。
呪いが発動し、自分が造ったウッドハウスの前で、ウォーレンはアイリスと振られた。
ウォーレンはアイリスにプロポーズしようとしてた時だった。
彼にとって耐え難い瞬間だったが、約1か月、なんとか過ごしてきた。
しかし毎日、夕方、彼はアイリスのために造ったこの家を見つめながら立ちすくんでいた。
(回りの人から、このウッドハウスを売ってしまえと言われるけれど、とても無理―― )
その時だった。
よく知った声が、彼に話しかけてきた。
「すごい家ですね。造った方の優しい気持ちが現れているよう、造ったのはあなたですか? 」
ウォーレンは驚いて後ろを振り向いた。
すると、そこにはアイリスが優しくニコニコして顔で彼を見ていた。
彼女と別れた理由が魔女の呪いだったことは、既に村の長老から聞かされていた。
「僕が造りました。ありがとうございます。でも空き家なんです。ここに住もうとする人がまだいないんです」
「残念ですね。それでは中を見せていただくことはできますか? 」
「もちろんです。僕はあなたのような方に見ていただきたかったのです」
ウォーレンはアイリスを案内するために、ウッドハウスの扉を開けた。
そうして2人は中に入ったが、やがて中からは楽しそうな2人の笑い声が聞こえてきた。
数週間が過ぎた。
大魔法師マーリンとランダは高山の洞窟で一緒に暮らしていた。
一緒に暮らしていたが、まだ寝る部屋は別にしていた。
正式に結婚式を挙げるまでけじめをつけようとお互いに同意していた。
2人は朝、高山の中を一緒に散歩するのを共通の日課としていた。
「師匠様‥‥ 」
「ランダ、その言い方は変えてもいいよ。たとえばマーリンだけでも、かまわないから」
「そうですね。結婚式を挙げてからにします。それまでに決心しますね」
「結婚式か。その前にやるべき事がある。ソーニャ王女様と騎士カイロス様を助けて、残り2つの呪いを解くことだ。残りの魔女はアリスとジャンヌか‥‥ 」
「特に心配なのが、超まじめなアリスねえさまが、どんな呪いを掛けているかです」
「そうだな。そもそも、なぜアリスが暗闇の絶対神と血よりも濃い契約を結んだのかは疑問だ。彼女の魔法構築力は緻密で複雑だからなあ、解呪は大変難しいだろう」
「アリスねえさまは、年下の私とマリを大変かわいがってくれました。私も戦わなければならないのでしょうか」
「そうだな。たぶんそうしなければいけないと思う。ランダ、私はこのロメル王国建国の時から国王をお支えし、人々の幸せを守ってきた者。私のために戦ってくれるか」
「うれしいです。生涯愛する人のために、その人とともに戦うことは、どんなに素敵なことでしょう。今からわくわくします」
その時だった。
第2の魔女アリスが近くにいきなり転移して言った。
「あらあら、ランダ、おめでとう。数百年の恋が成就したのね。大魔法師マーリン様、非常にお久し振りです。今日は御挨拶にきました」
「ランダよ。挨拶の前に、私からの立ってのお願いだ。ロメル王国にお前がかけた呪いを解いてくれないか。お前も知ってのとおり、私はこの王国を守ることを建国の王、アーサー様とお約束した」
「当然、それは存じてます。しかし、私の方の事情もあります。私は暗闇の絶対神と血よりも濃い契約を締結しました。それは、完璧な魔法を構築し、あなたが守るロメル王国を崩壊させるためです」
「なんでそこまで、ロメル王国をうらんでいるのだ? 」
「バカ王をうらんでいるからです」
「バカ王?? 」
「ロメル王国の聖なる建国神話に中で伝説となっているあの方。王の中の王として、人々に心の底から敬われている聖なるアーサー国王です」
「えっ、えっ ほんとうに申し訳ない。数百年前、お前とアーサー様との間に何があったのかは全く知らない。許してくれるわけにはいけないだろうか? 」
「ご聡明な大魔法師マーリン様であれば、もうお気づきなのでしょう。心の中に今、描いていらっしゃるに違いありません」
「‥‥‥‥ 」
「もう消えます。マリとランダの呪いが解かれて、暗闇の絶対神があわてふためいているのです。様々な報告を入れなければなりませんから」
そう言うと、第2の魔女アリスは消えた。
それと同時に、大魔法師マーリンは自分の記憶を整理し始めた。
(数百年前、アリスとアーサー王様との間に、一体何があったのだろう? アーサー王と会っていた時にに消えてしまったと聞いた。たぶん、時空のはざまに自分を隠したのに違いない)
アリスはマーリンの4人の弟子の中で魔力量が最も少なかった。
しかし反対に魔法の構築精度は、最も優れていた。
もともと頭がよく勉強家の彼女は、さまざまな問題を解決する能力に優れていた。
このうわさを国王アーサーが聞きつけて、ある日、王宮で謁見することになった。
謁見の間には師匠のマーリンも同席した。
「そなたがアリスか、私のところまでうわさが届いているぞ。そなたの魔力は実に実用的だそうだな」
「国王陛下。おほめいただきありがとうございます」
「そなたに聞きたいと思っていたことがある。我が国土で最も土地がやせ、農産物が何も育たなかった畑に魔法をかけて、大変な収穫量があがる畑に変えてしまったそうだな。どんな魔法なのだ? 」
「お恥ずかしいような簡単な魔法でございます。土の中に含まれる成分を返還させただけでございます。
話しが変りますが。陛下はお食事で、いろいろな味があるものを食べられていますね」
「できるだけ質素な食事に心がけているが、料理長が私の健康のことを考えて食事を毎日作ってくれている。実は、時々、どうしても好きになれない味がするものは食べずに残してしまうがな」
「陛下は正直なお心の持ち主ですね。農産物も同じなのです。農産物は畑の土から食事を、栄養をとるのですが、農産物がどうしても好きになれない味がする土もあるのです」
「そうか。わかりやすい説明だな」
「私はある農産物がそうしても好きになれない味がする土を、好きで好きでたまらない味がする土に変えただけなのです」
「よくわかった。アリスをマーリンと同じように宮廷魔術師としたいが、アリス問題無いか。マーリンはどう思う」
「私にそれほど高い評価をいただき、私のほまれでございます。宮廷魔法師につきましても、お師匠様がい許しくださるのなら」
「国王陛下。私には異存ございません。アリスはロメル王国のために素晴らしい仕事をやり遂げるはずです」
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