31 第3の魔女ランダ2
第3の魔女ランダの呪いが発動した。
それはロメル王国全域のあちこちで始まり、やがて大問題になろうとしていた。
そのため、王宮において対策会議が開かれていた。
ソーニャ王女が口火を切った。
少し怒っていた。
「許せない呪いです。恋人どおしの愛が深まり、最高の愛がつまった物に片方が触れると、その人の心が反転して相手に対する愛情が暗闇に閉ざされ、絶望に変るなんて。ひどい!! 」
「国中にもう、どのくらい広まっているでしょうか? 」
騎士カイロスの問いに内務卿ゲーテが応えた。
「はい。もう数百例が報告されています。普通では全くあり得ないことですので、人々の間では密かに魔女の呪いではないかと噂が広がっています」
話し合いが進んでいたが、いつも積極的に提言する大魔法師マーリンが押し黙っていた。
それを見て国王が言った。
「マーリンよ。黙り続けて、今日はめずらしいな。どこか体の調子が悪いのか」
「いえ、国王陛下。御心配をおかけして申し訳ありません。第3の魔女ランダの呪いにつきましては、この私に大きな責任があるのではと、心の中で葛藤しております」
その言葉を聞いてソーニャ王女と騎士カイロスは、マーリンのことを心配した。
ソーニャ王女が遠慮しながら話した。
「大魔法師マーリン様。かって弟子だった頃のランダと、どのようなやりとりがあったのかはわかりませんが、たとえば、女性の方から愛を何回も告白されたとすると、難しいお立場だったと思います」
助言者として呼ばれていた深慮の魔女レイラの意見は違っていた。
「女性の方から結婚してとプロポーズを何回もしてくるのは、ほとんど無いと思います。彼女はほんとうに大魔法師様のことを好きになったのです。だから断るにしても、丁寧にお応えされた方が!! 」
「私はほんの若い頃から、魔法の勉強ばかりしてきました。魔法のことが心底好きで、他のことはあまり興味がもてませんでした。魔法師としての彼女はよく見ていましたが、普通の女性としては―― 」
騎士カイロスが大魔法師マーリンを助けた。
「それが普通だと思います。思いますが、魔法師様、もう一度、弟子だった頃の彼女の姿を想い出して見て、どのように感じるのか確認されたらどうでしょうか」
「わかりました。今、記憶をよみがえらせます。みなさん、少しお待ちください」
その後、大魔法師マーリンは魔法の杖の先を自分の目頭にあてて詠唱した。
「数百年前。過去、私が見た、ランダの姿をよみがえらせよ」
次の週間、大魔法師は青色に包まれ、それは数秒で消えた。
ソーニャ王女が大魔法師に聞いた。
「大魔法師マーリン様、今、どう思われますか? 」
「はい。ランダの姿と私におずおずと結婚を申し出る姿を見て、とても可愛らしいと思いました。なんで気持ちに応えてあげなかったのだろう―― 」
「呪いはその原因となったことを根拠に構築された魔法です。大魔法師様。今からでも少しも遅くありません。呪いの原因はなかったのだとランダに告げたらどうでしょうか」
「はい。私個人としても、またロメル王国の人々のためにも、やらなければならないことですね」
国王が言った。
「大魔法師マーリンよ。もしかしたら貴殿のごく個人的なことかもしれない。しかし、この呪いを解呪しなけらばこの国は、決して愛が成就しない明るい未来が訪れない滅亡の王国となってしまう」
「御意。初代国王アーサー様は、私にこの国や国民の幸せを涙ながらに託されました。この呪いを解呪するために全力を尽くそうと思います」
「深く感謝する。全て、大魔法師マーリンに任せる」
大魔法師は、ロメル国全域のみならず、はるか遠くまで見渡せる高山の洞窟に住んでいた。
彼は、高山の頂上に登り、ここから第3の魔女ランダを呼ぶことにした。
大魔法師は自分の気持ちを通信魔法で広い範囲に流した。
「ランダ。今、会えないか? いや、是非会いたい」
すると、すぐに反応があった。
「お師匠様。そのような場所にお住みでしたか。今、参ります」
すぐに、高山から見えるかなたの先から、こちらの方に光速移動してくるものが見えた。
最後にそれは、高山の頂上で立っていた大魔法師マーリンの上空に止まった。
第3の魔女ランダだった。
「転移魔法を使わす、わざわざ空を飛んで来たのか? 」
「はい。一瞬でもいいからロメル王国の上空を飛んで、私がかけた呪いの発動状況を調査したかったのです。満足ができる状況でした。お師匠様、今日は何か」
大魔法師の今の気持ちは、ランダに対する申し訳なさで一杯だったが、彼は勇気を振り絞った。
「私は心の底からお前におわびしたい」
「えっ」
「それで嘘だと思われると困るから、今から話す言葉に私の命の誓約をつける。『我、大魔法師マーリン、自分の命の誓約をもって話す。嘘をつけば、私の命は失われる』」
大魔法師マーリンは、目を閉じて詠唱した。
その間、第3の魔女ランダは大変驚いた顔でそれを見ていた。
(お師匠が自分の命の誓約をした。大魔法師の誓約ならば、必ず事実となる。お師匠様が嘘をつけば御自分の命も絶対失われる)
「ランダ。私がお前の師匠として魔法を教えていたのは、今から数百年前だった。なんとか魔法で老化を遅らせているが、お前から見るとだいぶ年老いただろう―― 」
「いえいえ、お師匠様。年老いたというよりも、数百年を経て深みを増したお顔は、ますます魅力的になられましたね」
「ありがとう。そのようなことを言ってくれるのはお前だけだ」
「いえ、事実です。数百年目のお師匠様も大好きでしたが‥‥ その気持ちは大きな怒りとともに私の心の中にあります。ずっと、ずっと、数百年も」
「そう言われるとほんとうに心が痛む。私は、根っからの魔法好き、探求好きなんだ。生まれてからずっとずっと魔法が最優先。他のことは丸っきり考えられなかった」
「お師匠、なにをいわれるんですか」
大魔法師マーリンが大魔法を構築する詠唱のように、真剣にランダに告げていた。
「数百年前、お前が私のそばにいた時、お前から最高の気持ちをもらっていた。『こんな私と結婚したい』と、ごめんなさい。この意味もわからなかった。最高の贈り物だ」
大魔法師マーリンはふところから、赤いハートのブローチを出した。
「これは、お前の気持ち、お前の心だった。遅くなければ今、正式にいただきたい―― 」
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