26 魔女でなくなった理由3
ソーニャ王女の気迫に押された暗黒の絶対神の声は小さくなり消えた。
「我に刃向かう異世界転生者、必ず後悔することになる」
暗黒の絶対神は去っていった。
ザラは自分が騎士カイロスに抱きかかえられていることに気づき、とても恐縮した。
「カイロス様。すいません、重いですよね」
「前にもザラさんに言いましたとおり、ザラさんはとても軽いから全く問題ありません」
「降ります。早く降りなければ、王女様にしかられていまう」
ザラとカイロスはちらっと王女の方を見た後で、
ザラが目を覚ました。
目を覚ました彼女は、自分が信じられないほどの幸せなシチュエーションであることに驚いた。
そして、騎士カイロスに抱きかかえられていることに気づき、とても恐縮した。
「カイロス様。すいません、重いですよね」
「前にもザラさんに言いましたとおり、ザラさんはとても軽いから全く問題ありません」
「降ります。早く降りなければ、王女様にしかられていまう」
ザラはちらっと王女の方を見た後で、急いでカイロスから離れた。
王女は優しそうににっこりしているだけだったが。
「ザラさん。あなたと暗闇の暗黒神との間で交わした契約はもう破棄され、無くなりました。あなたは魔女ではなくなり、今は完全な人間に戻っています」
「ありがとうございます」
そう言ったザラはとても不安そうだった。
「魔女になってからもう数年経っています。このロメル王国の隣国が故郷ですが、もう故郷に帰ることはできません。それで、どうしようかと‥‥ 」
「ザラさん。王宮では仕事が非常に多いのですが人が足りなくて大変困っています。もし、よろしければ王宮で働いていただきたいのですが、もちろん、部屋と食事付です」
「ほんとうによいのですか。私は魔女だった頃、このロメル王国に呪いをかけたんですよ」
「全然、全然、全く問題ありません。あなたの素性も完璧に隠します。ただ、他国の高位な貴族の御令嬢で花嫁修業に来ているのだと紹介しましょう」
「花嫁修業ですか」
「そうですよ。ザラさんだったらお嫁さんにしたいと思う男性は多いでしょうね」
「それならばうれしいです」
ザラはそう言いながら、ほんの少し騎士カイロスの顔を見た。
ただ彼女はしっかりと認識していた。
(たとえ自分が結婚しようとする相手が余命1年でも、結婚式を挙げた人。自分の愛する人のためなら、他の何を犠牲にしてもかまわないという決心をなさっているんですね)
彼女は心の中で決心した。
(もう将来を約束し一緒に過ごす相手がいる方ですが、その方のそばで時々お姿を見て声を聞ける。それだけできっと、これからの私の毎日は明るく輝くわ)
暗闇の絶対神は激怒していた。
「あの2人、許さないぞ、この世界への異世界転生を許してやったのに、完全にロメル王国の自分の運命を一体化させ、私が魔女達を通じてかけた運命に抗っている」
13の魔女がかけた13の呪いは、もう4つの呪いだけになっていた。
ただ、残りの4人の魔女は、4人だけで最初に魔女の国を建国した始まりの魔女だった。
「最後の4つの呪いは強力な魔力、大魔法師が育てた最高の魔法師が反転し、我の忠実なしもべ絶対的な力をもつ魔女達になったのだ。ロメル王国は破滅の王国になるのに違いない」
大魔法師マーリンは、大きな水晶玉で、ロメル王国の未来を読んでいた。
やがて水晶玉を見るのを止め、目が疲れたのか目頭を2つの指で押さえ始めた。
実は彼はもう1千歳だった。
はるか昔、王国を建国し初代王となったアーサーと数々の戦いを切り抜けた。
「アーサー王、あの頃は信じられないくらいの力で戦いましたな。ぎりぎりで敵を打ち負かし、最後には人々が最高に幸せに暮らせるようにこの国を建国しました」
大魔法師はそう言った後、少し悲しそうな顔になった。
「私は年老いました。もう、最後の最後に勝利をつかめるような力は出せないでしょう」
大魔法師は数百年前のある事を想い出していた。
「アーサー様。ほんとうに申し訳ないことです。私の指導が不足していたばっかりに、私の4人の弟子は今は強力な魔女になってしまいました。王国に最後の4つの強力な呪いをかけています」
ロメル王国が建国され1年が経過しようとしていた。
大魔法師は初代国王マーリンに呼ばれ、王宮の謁見の間にいた。
「我が忠実なる最も大切な助言者マーリンよ、今日はあなたにお聞きしたいことがありお呼びしました」
「国王陛下、どういうことでございましょうか。謹んでお応え致します」
「あなたは弟子をとらないのですか、あなたはそういう主義なのでしょうか」
「いえ違います」
「私は今、力が満ちあふれ、最高の魔法を使うことができます。しかし、やがて力は衰えこの身に覚えたさまざまな魔法も忘れてしまうことでしょう。ですから弟子をとり次世代に伝えたいと思っていました」
「それならば是非お願いしたい。我が国民の中から、この国を守ることがせきる次世代の魔法師になりうる若者を弟子にしてほしいのだ。当然、弟子の選定には全面的に協力する」
「ありがとうございます。それならば国王陛下から全国民に向けておふれをお出しください」
「うん、わかった。どのような内容にすればよいかな」
「私の弟子を選抜する大会を開きます。魔法師になる意欲があればよく、参加する条件は何も設けないつもりです」
「意欲だけあればよい‥‥と‥‥ 」
「はい、この国に住む全ての人々から希望者を募ります」
やがて、選抜試験の日がきた。
全国から数万人の希望者を集め、選抜がスタートされた。
非常に簡単な試験が行われた。
地面から2~3メートル上に水桶が置かれ、その底に穴が開けられていた。
穴から水は一滴落ちると、目印が付けられた下の受け皿に落ちるようになっていた。
試験では、精神の力で水滴が目印に落ちないようにすることだった。
なお、風の力の影響を受けないよう、回りを透明なガラスで囲まれていた。
試験がスタートすると、それぞれの受験者は力を込めて念じたがほとんど無駄だった。
ところが、落ちる水滴の方向を変更できた者がいた。
もちろん不正が行われないよう、大魔法師が精神を水滴に合わせ監視していた。
合格者は4人。
しかも全員が若い女性だった。
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