24 魔女でなくなった理由
魅惑の魔女ザラは自分の容姿に会わせて、最高に似合っている服装を着ていた。
それに彼女からは、感覚を完全に捕らえてしまう素晴らしい香水の臭いがした。
ところが、抱きつかれた騎士カイロスは言った。
「あの―― あなたの魅力は最高ですから、服装も香水もそれを引き立てることはできませんね」
(そこ、ですか―― )
ザラは考えたことと、別のことを口に出した
「ありがとうございます。でも、私はもともとそんなに魅力がありませんから、せめて服装や香水でごまかさないといけません」
そう言いながら、魅惑の魔女は彼の横にいるソーニャ王女の様子を伺った。
すると、王女は意外なことを話し始めた。
「カイロス様。この御令嬢がおっしゃることは正しいですよ。自分の魅力を最大限にしたいという女性の気持ちは当然のことです。だから、効果は別にして、いろいろ努力するのです」
「あなたは‥‥ もしかしたら、ロメル王国の王女様でございますか。そのようなことを言っていただいて心より感謝申し上げます」
「御令嬢。あなたとは以前、どこかでお会いしたことがあるような気がするのですか? 」
「はい。隣国で開かれた舞踏会で」
ここまで言って、ザラは「しまった」と思った。
隣国の伯爵家の令嬢が、新しい国王の前で婚約者から婚約破棄された。
その後、魔女装束を着て魔法の杖を持って現われたということが、知れ渡っていたからだった。
「思い出せませんが、ほんとうに舞踏会で‥‥ 」
「すいません。私の妄想でした。王女様のお姿は、王宮のバルコニーから観衆に手を振られていたお姿を見たことがあり、お姿を覚えていました」
ここで、ザラは抱きついていた騎士カイロスから離れた。
「ほんとうに失礼なことをしてしまいお詫びします。前に王都を歩いていて、強烈な腹痛が起きてうずくまっていた時、騎士様にはほんとうに声をかけていただき、親切にしていただきました」
「そんなことがあったのですか、騎士カイロスは困っている人をほっとけるような人ではありません。それに、御令嬢のような方に、それほどのお礼をいただくことをしたとは、光栄です」
「歩くことができない私を騎士様はおぶっていただきました。その時、私は今までに味わったことのない安心感に包まれました。騎士様の魅力ですね、ほんとうに好きになってしましました」
魅惑の魔女ザラはわざとらしく、しおらしい表情を見せた。
魔女は自信満々に思っていた。
(どう、これが第1段階よ。王女様、どう思っているのかしら)
予想に反し、ソーニャ王女はニッコリと笑って言った。
「あなたのようなすばらしい御令嬢に好きになっていただけるとは、ほんとうに誇りに思います。私はうれしいです」
(えっ、えっ!! 何ともないの。モヤモヤしないの。ではもう少し、強いことを―― )
「王女様。そのように言っていただけるということは、たとえば、騎士カイロスを私のものにしても良いという御了解でしょうか? 」
その時、誘惑の魔女はソーニャ王女の顔がほんの一瞬、鋭くなり、自分を見たような気がした。
王女は言った。
「その御質問にはお応えせきません。なぜなら、事実だけ言うと、もう騎士カイロスは私のものなのです。ごめんなさい、前世では既に結婚式を挙げて夫婦になりましたから」
魔女は心の中で思った。
(異世界転生前に結婚式を挙げたことを言っているのね。それでは騎士の方を)
「騎士カイロス様。今、王女様がおっしゃったことは真実なのでしょうか。前世で結婚式を挙げたなんて、あまりにも荒唐無稽ですよね」
「ほんとうのことですよ。なにしろ前世で僕は王女様にプロポーズしてokしていただきましたから。『うれしかった――』、僕に訪れた最高の瞬間でした」
(もう無理)
魅惑の魔女ザラは、騎士と王女の結びつきがとても強く、引き離すことはできないことを確信した。だ
魔女は決心して、2人に告げた。
「お2人の仲を裂くのは不可能ですね。それでは、もう、この方法しかありません」
そう言うと、突然、魅惑の魔女は上空に舞い上がった。
「えっ」
「えっ」
騎士カイロスとソーニャ王女はとても驚いた。
王都のメインストリートを歩いていた多くの住民も、驚いて空を見た。
魔女が言った。
「驚かせてごめんなさい。実は私は、誘惑の魔女ザラと申します。あなた達2人は、私達魔女の呪いを解いて回っている敵です。だから、2人の仲を裂いて攻めようと思いましたがだめでした」
「想い出しました。ザラさん、あなたは、このロメル王国の隣国の侯爵御令嬢でしたね。そして、国王の即位争いに巻き込まれてしまい、婚約者の伯爵に婚約破棄されてしまった」
王女が言った言葉に、騎士が質問した。
「国王の即位争いに巻き込まれると、何で婚約破棄されなくちゃならないのですか? 」
「彼女の父親が推した王子は即位争いに破れ、一方、それに敵対した王子を婚約者の伯爵が推し争いに勝利しました。新国王が自分の王女と結婚するよう言われ、婚約者の伯爵は受けました」
「そうですか。それはひどい!! 」
騎士カイロスはそのことを聞いて心の底から怒っているようだった。
「騎士さん。ありがとう。でもね、私は今は暗闇の絶対神に仕える神魔女です。呪いをかけた13の魔女の1人。私の呪いを発動させざるを得ないわ。私の呪いは、人が好きな気持ちを縛る呪いよ」
「人が好きな気持ちを縛る? 」
「そう。恋人、夫婦の間で強くなる気持ちをねじ曲げるわ。簡単に言うと、全く反対の気持ちに~相手を嫌う気持ちに変えてしまうわ。騎士と王女。あなた達はどうなるでしょうか? 」
魅惑の魔女ザラは詠唱を始めた。
「我がこの国の国民にかけた呪い、その効力を示せ。好きな気持ちは全部みんな、この魅惑の魔女に集まれ、それ以外は憎悪、嫌いになれ!! 」
「王女様、恐るべき呪いが発動しようとしています。この呪いが発動すれば、みんなを結ぶ大切なきずなが壊れ、この国は地獄になってしまいます」
騎士カイロスは悲しそうな顔をして、瓶の蓋を開き、妖精の治癒力を蓄えた聖水を飲んだ。
「悟さん。魔女を聖剣クトネリシカで消滅させるのですか? 」
彼はさらに辛そうな顔をして言った。
「ほんとうはやりたくないのです。でも、この方法しか道がありません―― 」
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