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20 幸運は勇者に味方する

 聖剣クトネリシカの力はまばゆい閃光(せんこう)となり、(なげ)きの魔女を包んだ。 


 閃光はしばらく輝いたかと思うと、一瞬で消えた。


 そしてその後に、(なげ)きの魔女は跡形もなく消えていた。


 やがて


 すぐに、騎士カイロスの頭はずきずきと急激な激痛に襲われた。


 激痛は彼の心までこなごなにしてしまいそうだった。


 彼は頭を抑えながら、しばらくフラフラと歩いた。


 やがて、意識を失ったようだった。


 そしてその後、花壇の横で聖水が噴き出している泉に倒れてしまった。


「悟さん!! 」


 ソーニャ王女は思わず異世界転生前の名前で彼を呼んで駆け寄った。


 そして、全力で治癒魔法をかけようとした。


 すると、驚くべきことが起きた。




 騎士カイロスが池の中から立ち上がった。


「あれ―― 痛くない! 意識もはっきりしている! 不思議だなあ!! 」


 聖水に濡れてビショビショになった彼に、王女は抱きついた。


「今、全力で治癒魔法をかけます。早く。早くベンチに横たわって!! 」


「王女様。治癒魔法は必要ではないかもしれません。全然、もう直っています」


「ほんとうですか。確認させてください。『我、この勇敢な騎士の心を探査する』」


 心の様子を中心に、王女は騎士の状態を探査魔法で調べた。


 すると、とてもうれしそうな声で言った。


「よかった!! 何も異常がありません!! 聖剣にあれだけ強い力を出させたのに? 」


 その時、彼女は気が付いた。


 無数の妖精がすぐそばに飛び回っていた。


「もしかしたら、あなた達が」


「そうだよ。僕達が聖水の池の中に隠れている時、騎士が倒れてきた。それで、僕達はすぐに治癒のエネルギーを彼に送ったんだ。きっと、聖水の中では治癒の力は何倍にもなったんだろうね」


「ありがとう。妖精さん達」


 彼女は彼に、妖精達の助けがあったことを告げた。


「いやいや、僕達の力というよりも、幸運の力だよ。たまたま、多くの仲間達が池の中にいたから。ことわざどおり、『幸運は勇者に味方する』だね」


「そうね。なげきの魔女の呪いにより、多くの人々が(なげ)き悲しむことを防ぐため。彼は勇気を出して、魔女の消滅を念じ聖剣を振った――自分の心を犠牲にするかもしれないのに」


「ただ、心のままに戦っただけです。勇気を出したなんて全く感じませんでした」


「悟さんには見えないと思いますが、今、私達の回りには無数の妖精達が飛び回っています」


「お礼を言わなくっちゃ。妖精さん達、聞こえますか。ほんとうにありがとうございました」


 彼には聞こえなかったが、飛んでいた無数の妖精の1人がすぐに言った。


「これからもがんばって、ソーニャ王女を幸せにしてね!! 」


「なんとなく今、妖精が言った言葉が聞こえたような気がしました。『王女様を幸せにしてね』って」


「合ってますよ。でも、あなたは、いつもそう考えてくれているから、わかるのは当たり前か」




暗闇(くらやみ)の絶対神の幻影を真ん中にして、神のごとき強い魔女達が円卓を囲んでいた。


 7つの席の内、1つの席が空いていた。


「神のごとき強い魔女達よ。あの異世界転生者の2人は、私の提案を完全に拒否し、私に本格的に反逆するみたいだ」


「絶対神様、深き御心であの2人にお与えなさろうとしたギフトを拒否したのですか。そして、神がこれから進まれようとする道に立ちふさがるのですか。誠におろかな!! 」


「ところがな、おろかだけではないのだ。おまえ達と同様、大変強い(なげ)きの魔女の根源を、聖剣クトネリシカの力を使い完全に消してしまった。あの騎士は自分の心に対するリスクを無視した」


「無視したのですか。おろかな」


「しかし、聖女たる王女が騎士の心に負うに違いない強烈な負荷と傷を癒すため、聖水の池を作っていた。その中には、自然の強い治癒の力をもつ妖精をたくさん集めていた」


「あの2人は、異世界転生前に結婚式を挙げるほど、結びつきが強いのでしょう。しかしこれで、騎士は聖剣の力を無制限に出すことができるようになった。根源を消滅できる強い力だ」


 暗闇(くらやみ)の絶対神の表情はわからなかったが、険しい声になった。


「おまえ達のような神に近い魔女ならば、ほんの1つの粒子さえ残れば、また存在を復活できる。しかしあの聖剣の力が、フルに解放されると、ほんの1つの粒子すら残らない」


「これから、どのように戦いましょうか? 」


「あの2人と直接戦うのは避けるのだ。私は、私と血よりも濃い契約を結んだおまえ達がもう、人数を減らし、私が憎むロメル王国に対する呪いを解くのを、見たくは無いのだ」


「それでは、私なんて適任でございましょう」


 そう言って、円卓の机から立ち上がった魔女がいた。


「おう、動乱の魔女か。確かに適任だ。王女と騎士を最大限に追い詰めて、私に刃向かうことは無意味だと知らせるよい」




 ロメル王国の王宮、謁見の間で魔女達との今後の戦いについて、協議がされていた。


 国王が言った。


「もう、騎士カイロスは無制限に聖剣クトネリシカを使うことができる。残りの6人の魔女も、呪いの解呪を拒否してきたら、消滅させていまえばよいのだな」


 大魔法師マーリンが意見を述べた。


「国王陛下。そこまで楽観的でよいかはわかりせん。しかし、今日は、騎士カイロスが聖剣に魔女の消滅を伝える時のために良いものを作って参りました」


 そう言うと、透明の水が入った瓶をみんなに見せた。


「これは、ソーニャ王女様が天空から集めて作られた聖水に妖精達の治癒の力を込めたものです。聖剣を使う前に飲めば、カイロス様の心は守られます」


「もう楽勝ではないか」


「いやいや、これから戦う魔女達は超強力な魔力をもち、暗闇(くらやみ)の絶対神と強い契約を結び、特別な魔法が使える者達ばかりです。油断してはなりません。


「カイロスに聞きたい。そちは(なげ)きの魔女に向かって消滅の剣を振ろうとした時、どのように決心したのか」


(なげ)きの魔女の呪いで、たくさんの人々に災いがもたらされ、悲しみが満ちあふれることを思ったら、勇気がでました。理由は何もありませんでした。あの時はああする以外になかったです」


「我が国民のために、最高の力を示してくれて心の底から感謝申し上げる。それからな‥‥ 」


「なんでございましょうか? 」


「これは既成の事実かも知れないが、騎士カイロス、我が娘ソーニャを妻に迎えてくれないだろか」


 騎士カイロスは即答した。


「もう結婚しています」


 え――――っ

 謁見の間にいた多くの人々が驚きの声を上げた。


 ソーニャ王女が彼に近づき、こっそり言った。

「それは異世界転生前ですよ」


「あっ、あっ 申し訳ありません。この頃いつも、そのように妄想していたもので!! 」


 謁見の間は、幸せな大爆笑に包まれた。








 



お読みいただき心より感謝申しわげます。

皆様の休日を少しでも充実できれば、とても、うれしいです。


もしお気に召しましたら、ブックマーク、重ねて御評価いただけると作者の大変な励みになります。

よろしくお願い致します。





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