表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【ウエディング異世界転生】~2人は幸せを目指し異世界で魔女の呪いと戦う  作者: ゆきちゃん
第1章 最悪な時の彼女には最高の時をもたらす彼がいた
2/39

02 ライスシャワーと神の|御業《みわざ》

 北川風香(きたがわふか)神宮悟(じんぐうさとる)


 とても明るく性格の良い2人には多くの友人達がいた。


 今、悟はある親友と会っていた。


 親友の名は鈴木ふみお、悟とは真逆の理系人間だった。


 性格もおおらかな悟とは事なり、繊細で重要なことによく気が付いた。


「そうなんだ。彼女が悪性腫瘍で、余命1年1以内とはな」


「昨日、彼女にすぐに手術を受けるよう勧めたんだ。すると、彼女が即断して、その場で医師にすぐ電話して手術を申し込んだ。『両親に言わなくてもいいの』って言ったら『あなたの言葉が優先』って」


「そんなに心が通じ合ってるんだ。うらやましいな」


「今日はふみおに、たってのお願いがあるんだ」


「なんだい。どんなお願いでも聞くよ。悟が今背負う苦しみは、相当なものだからな」


「頼む。確か、ふみおの実家は教会だったね、結婚式を行う。12月31日に結婚式をやりたいんだ」


「は――――はははは。確かに僕の実家は教会で父親が牧師、もちろん、結婚式もとり行う。でも、もう1週間も無い。31日の結婚式ってかなり多く、1年以上前でも予約は完了さ」


「そこをお願い」


「理由を述べよ」


「彼女の手術の日が1日1日になったんだ。それ以降だと半年以上先になってしまうということで、お医者さんが特別に設定してくれた。それを聞いた時、風香さんと僕は涙を流したよ」


「神の御業(みわざ)だ。『乗り越えられない苦難は与えない』んだな」


「どういう意味」


「既に、悟と彼女が絶望の淵からジャンプするための道ができつつある。ここにもそうだ」


 ふみおは、自分の手で自分の胸を触った。


「‥‥ ということは」


「もちろん、僕に任せておけ。少しも心配するな。父親を説得する。僕の実家の教会は12月31日、悟と風香さんの結婚式を執り行う。思う存分、使ってくれ」


「‥‥‥‥ 」


「おい。泣くな、しっかりしろ。絶対に、風香さんの方が辛いはずだ」


「‥‥ うん。わかった。ありがとう」

 



 一方、北川風香は友人の足立美保とスイーツを食べていた。


 イチゴのショートケーキを食べていた風香が言った。


「あっ! 大丈夫かな。こんな甘いものを食べると、私の十二指腸のガンが成長してしまったりして」


 足立美保は幼稚園の時からの風香の幼なじみ。


 2人はお互いに、何もかも知っている仲だった。


「風香。大丈夫。あなた、いつも冗談を言った後は明るく愉快に笑い飛ばすじゃない。その癖は、小さな子供の頃から全然変らなかったはず。でも、今、あなた、笑わなかったわ」


「ごめんね。心配かけて」


「ひとつアドバイス。あなたの今の最大の悩みは、余命1年以内と宣告されたことではないでしょう。きっと、そんなあなたと、悟さんが結婚することだわ――違う? 」


「はは――ははは、美保にはかなわないわ。そのとおりよ」


 その言葉を聞いた後、足立美保は彼女をしっかりと見つめて話し始めた。


「悟るさんはあきらめていないわ。絶対にあなたを救うはずよ」





 ある大教会の聖職者が、息子に質問されていた。


 息子は、神宮悟じんぐうさとるの親友、鈴木ふみおだった。


 聖職者はキリスト教最高の奥義の祈りを捧げていた。


「お父さん、祭壇の小箱はなんですか? 」


「12月31日、お前の親友が余命1年もない彼女とその彼が結婚式を挙げ、その終了時に2人に向かって投げるライスシャワーだ。幸運な未来を迎えるため、お前の大切な親友のための大サービスさ」


「ライスシャワーに祈祷しているのですか」


「日本ではあまり知られていないが、ヨーロッパではよくある。キリスト教。、我が宗派の最大奥義」


「そんな祈祷あるんだ」


「そうさ。私はかなり階級の高い聖職者だからね。神は我々に試練を与えられるのだけれど、それは必ず克服できる。結婚式を挙げる2人も必ず試練を克服し幸せになれるだろう」


「でも、花嫁は余命1年もないガンですが」


「大丈夫。もう奇跡は少しずつ起きている。最初に花婿の心だ。花嫁が余命1年もないことを知った瞬間、すぐにプロポーズしたそうだね。この間のクリスマスイブにな」




 北川風香(きたがわふか)神宮悟(じんぐうさとる)の結婚式は、順調に進んだ。


 そして、終了が近づいた。


 結婚式の司会をしていた聖職者が言った。


「皆さんの温かな御参列の元、式は最後まで進行しました。2人の新婚旅行はおあずけです。なぜなら、

今から2人は車で病院に向かい、花嫁が、ガンを根治するため手術を受けるからです‥‥


‥‥こんな不幸なカップルは他にいないかもしれません。でも、この教会の扉から2人が外に出て、みなさんのライスシャワーを浴びた後、2人は必ず世界一の幸せをつかむのに違いありません」


 拍手の嵐が起きた。


 拍手をしている人々のほとんどは、2人の幸せな未来を心から祈り涙を流していた。




 参列者達が外に出た。


 そして、教会の後ろの出口から始まる折口の両側に立った。


 彼らには米粒が配られた。


 やがて、教会の後ろのドアが開いた。


 北川風香(きたがわふか)神宮悟(じんぐうさとる)の姿が見え、2人は建物から出た。


 すると、多くの参列者が投げたライスシャワーが2人を優しく包んだ。


 霊力が高い聖職者の祈祷、そして多くの参列者達の祈り。




 神が知られることとなった。




 時間の進行が遅くなった。


 風香が悟に言った。


「悟さん。何か変」


「そうですね。ライスが落ちるのが遅い。あっ!!!! 」


 ライスシャワーは米粒ではなく、多くの小さな天使達が翼を動かし飛んでいた。


「参列者の皆さんは全員静止している。変だな」


 その時、教会の上空が明るく輝き、声がした。


「神に祈りはとどいた。天使に包まれた2人よ、チャンスを与える。運命に(あらが)い幸せをつかみたいのなら、そこからジャンプし飛び込むがよい」


 声は2人の心の中に届いた。


 2人はすぐに顔を見合わせ、同じ決心をした。




 2人の目の前に、多くの小さな天使達が飛びながら丸い輪を作った。


 それは、真っ暗で先が全くわからないトンネルの入口になった。


「風香さん、ジャンプしましょう。あのトンネルの仲に飛び込むのです」


「はい。飛び込んだら、どうなるのかわからないけれど、さっきの声はきっと神様でしょう」


「何が待っているのかドキドキしますが、風香さんとは絶対離れません」


 2人は いつの間にか、しっかりとお互いの手を握り締めていた。


 風香の手が少しふるえていることに気が付いた悟は優しく言った。


「大丈夫。なんとかなります。2人が一緒にいれば、どんな困難だって乗り越えることができます」


 天使が開けたトンネルの入口に2人はジャンプして飛び込んだ。


 


 

お読みいただき心より感謝申しわげます。

皆様の休日を少しでも充実できれば、とても、うれしいです。


もしお気に召しましたら、ブックマーク、重ねて御評価いただけると作者の大変な励みになります。

よろしくお願い致します。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ