18 2人の選択
異世界転生前に初めて出会って、2人の意見が異なるのはこれが最初だった。
騎士カイロスが言った。
「確かにソーニャ王女様の考え方は正しいかもしれません。騎士カイロスとしたは賛成です。しかし、神宮悟としては反対です」
「悟さん。実は私も全く同じで、ソーニャ王女として意見を言いましたが、北川風香としては反対の意見です。残った9人もの多くの魔女の呪いを解くことは、大変です」
ここで、深慮の魔女レイラがおずおずと口を出した。
「あのう、差し出がましいことを言ってごめんなさい。暗闇の絶対神のプレゼントは、今の時点限定だと思います。今拒否したその後で、同じことは絶対に望めません」
騎士カイロスが言った。
「それでは、なおさら真剣に考えなければいけません。結論はとてもとても難しいですが」
ソーニャ王女が言った。
「私は異世界転生後のこの世界が大好きです。もしかしたら結婚式場から病院の手術室に向い、すぐに命を落し、悟さんと永遠にお別れしたかもしれません」
「そうですね。異世界転生してから、もう半年くらい、風香さんと充実した時を過ごすことができました―― だから、風香さんが元気よく生きて、話している世界があたりまえになってしまいました」
「私も同じです。今の私は、異世界転生前と比べ少し顔や形は違いますが、生き続けて悟さんと話すことに最高の喜びを感じています」
深慮の魔女レイラが2人に提案した。
「ソーニャ、そしてカイロスさん。少し期間を開けてお2人とも自分の中の気持ちを整理してから、また今後の未来を話し合われたらどうでしょうか」
「そうですね」
「はい。良い考えだと思います」
「どのくらい先になされますか? 」
「1週間先では」
「そうですね。それで良いと思います」
ソーニャ王女は王宮の中に設けられた塔の上に自分の部屋をもっていた。
部屋の中からは、そのまま外に出られるとても広いベランダがあった。
そのベランダの中には噴水からいつも水が噴き出す小さな池と花壇があった。
実はその水は、王女が聖女としての魔力を使い、大空の空間から水の粒子を集めたものだった。
花壇の花々も、王女が心を込めて毎日世話をすることで生き生きとしていた。
このすばらしいシチュエーションは、知らず知らずのうちに、妖精をたくさん集めていた。
あの時から、もう6日目、彼女は花壇の前にあるベンチに腰かけて、花々をぼんやり見つめていた。
「ソーニャ、だいじょうぶ? 」
「そんな顔をしていると心配! 」
「何か不安があったら、私達に相談してください」
「私、ほんとうは命の終わりが決まっていたの」
「えっえっ!! ものすごく元気に見えるのに」
「実はね、私は異世界転生者なの。転生前の世界では、余命1年以内だったの。だけど愛する人にそのことを告白したらすぐに、『結婚してください』って言ってくれました。ばかな人ね‥‥ 」
そう言ったソーニャ王女の顔は、少し涙ぐんでいるようだった。
「あの―― ソーニャ、それはもしかしたら騎士カイロス。あの勇者も異世界転生者でしょう? 」
「そうよ よくわかったわね」
「いつもあの人が来ると、このベンチに並んで座って楽しそうに笑っていたでしょう。その時の2人の顔を見れば簡単に推測できるよ」
「私の愛する人はすごいのよ。神の御業でこの異世界に一緒に来てから、私とこの国に魔女達がかけた13の呪いに立ち向かい、もう6つの呪いを解いてしまったわ」
「すごい人なんだね。でもね、そんなすごい人に愛されるソーニャもすごいんだよ」
「ありがとう。聞いて、私が今、ものすごく悩んでいるの。ある神が提案してきたの、私が王女・聖女でなくなり愛する人が騎士・勇者で無くなれば、この異世界で2人の時間を与え幸せを与えるって」
「えっ それは良いことじゃない。ソーニャ、自分の幸せ。それに愛する人の幸せを第1に考えるんだよ」
「でもでも、私達2人は幸せをつかめるんだけど、このロメル王国にかけられた残り7つの呪いは残ってしまうの。多くの人々が苦しむことになるわ」
「う――ん 難しい問題!! だけど問題ないよ」
「えっ どうして」
「ソーニャが愛する人でしょう。必ずソーニャが希望する未来と同じ未来を希望するに違いない」
「そうだそうだ」
「そうよ」
「そのとおり」
気が付くと、花壇の前のベンチの回りにはたくさんの妖精達が集まっていた。
妖精達はソーニャ王女のことが大好きで、彼女の幸せを心の底から祈っていた。
騎士カイロスは王都の中、王宮のすぐ前に自分の家があった。
そこは、あたかも王宮を守るような位置だった。
この頃、彼の毎日に日課は夜明けとともに起き、自分の家を出てランニングすることだった。
彼は異世界転生前、体を動かすことはあまりしなかった。
しかし、この異世界に世界最強の騎士として転生したからには、体を鍛えなければと考えた。
今日も、夜明けとともに彼は自分の家を出た。
あの時から、もう6日目だった。
走り出す前に、彼の口からひとり言が出た。
「何にも決められない!! だって、このことを考えると胸が痛くなるから」
楽天家の彼だが、異世界転生前から過度なストレスがかかると出る反応だった。
「どうしよう。取りあえず、何も考えずに走ろう」
彼はそう言うと、ただひたすらに、いつものコースを走り始めた。
「わからない、わからない‥‥‥‥ 」
走りながら、彼の心の中はいつも無心になるけど今日は、その5文字が繰り返された。
王都の中の見慣れた道沿いの光景が続いた。
やがて、いつもと違った光景が現われた。
道沿いに机を並べて、占い師がいたのだ。
その占い師は黒いベールをかぶり顔は見えなかった。
通り過ぎようとしtところ。
「ちょっと、そこの騎士さん」
占い師が彼に声をかけてきた。
騎士カイロスは無視して通り過ぎようとした。
ところが、
「騎士さん止まってくれ、話しがあるんだ」
不思議なことに、その声は聞き慣れた彼の心を穏やかにする声だった。
「誰? 」
カイロスは立ち止まり、占い師の机の前に座った。
「やっと、止まってくれたか」
そして、その占い師はベールを上げ顔が見えた。
「えっえっ ふみお!! なんでこんな所に?? 」
「ミステリーだろう。結婚式の後、夜になると毎晩この異世界の夢を見たんだ。それはだんだん、悟と風香さんが運命に抗う物語だとわかり、毎晩真剣に見ていたよ」
「にわかに信じられないけど、そもそも、僕達がこの異世界に転生したことも信じられないことだからな」
「今、大変な選択を迫られているだろう。だから悟を助けたい、ほんの一言でもいいから話しをしたいと思ったんだ。だから父親から特別な神具・ロザリオを貸してもらったんだ」
ふみおは肩からかけたロザリオを見せた。
「ふみおのお父さんって、キリスト教最高の奥義を行うことができる高位の聖職者だったね」
「うん。では一言。もう、その問題については、悟の応と風香さんの応えは同じのはずさだ。心配無!! じゃあ元気で。以前の世界で待ってるぞ、2人で元気な姿を見せるんだ」
お読みいただき心より感謝申しわげます。
皆様の休日を少しでも充実できれば、とても、うれしいです。
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