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17 怠惰の魔女の特質3

 騎士カイロスは、家具職人タクミにこっぴどく殴られた。


 その時、ワイワイとした話し声に包まれていた酒場は一瞬、静寂になった。


 しかし、すぐに元に戻った。


 カイロスは殴られて横たわり、酔いも回ったのかそこで意識を失っていた。


 一方、家具職人タクミはそこで立ち上がり、酒場を出て行った。


 彼の目には、家具職人としての強い誇りが戻っていた。




 エネルギー体として浮かんでいたソーニャ王女と怠惰の魔女は酒場の空間で一部始終を見た。


「どうですか、明らかに家具職人から呪いの効果が消えましたよ」


「う――ん 確かに呪いの効果が無くなっています。それにしても、あなたの騎士は大胆な事をするのですね。ほんの少し家具職人の心に残っていた誇りに訴えるために」


「彼の一番良いところは、人の気持ちが良くわかることなのです。ですから、彼は誰に対しても優しく、気持ちを大切にできるのです」


「あの騎士とあなたは、実は異世界転生前に結婚しているのですね? 」


「そうですが。この世界の魔女達はなぜ、そのことを知っているのですか? 」


「私達魔女は、暗闇(くらやみ)の絶対神と契約を結び、それぞれの力を得ています。その絶対神からあなた方の情報は全ていただいています」


「私達の異世界転生が神の御業みわざなのですから、同じく神である暗闇くらやみの絶対神も知っているということなのでしょうか? 」


「わかりません。わかりませんが、確かにあなた達のことをよく知っています。」


「怠惰の魔女、呪いを解呪していただけませんか」


「約束ですから。『我の呪い、今人間達の心を縛っているものを解放する。呪いを解かん』」


「ありがとうございます」


暗闇くらやみの絶対神があなた達を応援して、プレゼントされます。もう、あなた個人、それにロメル王国にかかっている13の呪いの内、6つが解呪されました」


「はい。」


「呪いを6つ解呪した効果として、元の世界での運命は変りませんが、この異世界での運命は変っています。あなた達は選択できます」


「どういう選択ですか? 」


「この異世界に留まるのであれば、余命1年以内ではありません。あなたとあなたが愛する騎士は、他の多くの夫婦の時間と変らない3~4十年を一緒に過ごすことができるでしょう」




「えっ! えっ! ほんとうですか? 」


「ほんとうですよ。信じていただくため、私、怠惰の魔女の名前を申し上げます。我々魔女は、自分の名前に誓ったことをに嘘をつけません。私の名前はリリです」


 その後、怠惰の魔女リリは誓った。


「ロメル王国のソーニャ王女、騎士カイロスの運命は変っている。6つの呪いを解いた効果で、2人がこの異世界に留まる限り、幸せになるため十分に長い時間が訪れる。怠惰の魔女リリは誓う」


 誓いを聞いた後、ソーニャ王女が言った。


「ほんとうのようですね。騎士カイロスとよく相談しなくては」




 騎士カイロスが目を覚ますと、彼の(ひたい)に布が当てられていた。


 宿屋の中の1室のようだった。


「あっ、ソーニャ王女。ここは? 」


「東部州都ロゼの中にある宿屋の1室ですよ」


 彼のひたいがずきずきと痛んだ。


「痛い! 痛い! 」


「痛いでしょうね。大きなこぶができています。ただ、あなたの目論見どおり、あの家具職人さんは容赦なく全力で殴ったみたいですから。実は私も、見ていましたけれど」


「はははは どうでしたか。その様子を見て怠惰の魔女は? 」


「はい。彼女がかけた呪いを解呪してくれました。それと、とても大切なことを教えてくれました」


「どんなことですか」


「彼女の呪いの解呪で、もう13の内、6つの呪いが解かれた結果、元の世界での運命は変りませんが、この異世界での2人の運命は変っているそうです」


「どのように変ったのですか? 」


「この異世界の中でなら、他の多くの夫婦の時間と変らない3~4十年を一緒に過ごすことができるそうです」


「よかった!!!! 」


 騎士カイロスはソーニャ王女を抱きしめた。


 異世界転生前、神宮悟(じんぐうさとる)北川風香きたがわふうかとして結婚式を挙げた。


 余命1年余りの彼女は式場から病院に直行して手術する予定だった。


 手術がうまくいき、術後も良好になる可能性は20%。


 そのような状態から異世界転生して、2人に与えられるこの異世界の中での運命は変った。


「どのように考えたらよいでしょうか? 」


 彼女の問い掛けに彼は応えた。


「これで、このままで良いような気持ちが大きいです。しかし。ここで止めてはダメなような気もします。どうでしょうか、深慮の魔女レイラなら正しく詳しい分析を教えてくれるはずです」


「そうですね、レイラに聞いてみましょう」




 すぐに、ソーニャ王女は心の中で深慮の魔女レイラを呼んだ。


 レイラからの反応は早く、すぐに2人がいる部屋の中に転移してきた。


 相談を受けてレイラが話し始めた。


「確かに怠惰の魔女が話したことには間違いないわ。たぶん、暗闇(くらやみ)の絶対神が怠惰の魔女に言わせたのね。ただし、これにはきっと大きな条件があると思うわ」


「それは? 」


「ソーニャ王女、あなたがロメル王国の聖女としての役割を放棄して、全く普通の女性になるということよ。そうすると、王女の魔力は完全に無くなる。それに」


「まだ条件があるのですか」


「聖女の守護者としての騎士カイロスの力も失う。聖剣クトネリシカも同じように力を失います」


「残った7つの呪いはどうなるのですか」


「残りの7つの呪いはロメル王国とその国民を苦しめ続けます」




「‥‥‥‥ 」

「‥‥‥‥ 」


 2人は険しい顔になり考え続けた。


 騎士カイロスが話し始めた。


「ソーニャ王女、風香さん。もう十分です。この異世界で風香さんと一緒に、長い時を過ごし一緒に年老いていけるのなら、これ以上の幸せはありません。」


「‥‥‥‥ 」


 ソーニャ王女はとても苦しそうな顔をして黙っていた。


 やがて、彼女が話し始めた。


 彼女は彼の目を見て言った。


「騎士カイロス、悟さんがとてもがんばって、13の呪いのうち6の呪いを解呪してくれたから、この異世界の神、暗闇(くらやみ)の絶対神がプレゼントをくれ、応援してくれたと思います」


 彼女は1度、そこで言葉を止め、最大の勇気を振り絞って言った。


「私は信じられないほど幸せになれるでしょう。ただ、大きな犠牲を見ないふりをしなければなりません。私だけ幸せになるのは耐えられません。ですから、呪いの解呪を続けたいのです」


 











 





 




 





お読みいただき心より感謝申しわげます。

皆様の休日を少しでも充実できれば、とても、うれしいです。


もしお気に召しましたら、ブックマーク、重ねて御評価いただけると作者の大変な励みになります。

よろしくお願い致します。





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