15 怠惰の魔女の特質
戦いが終わった後、深慮の魔女が騎士カイロスとソーニャ王女に言った。
「お2人とも、残りの魔女達の呪いを解くことができるよう祈っています。後8人の魔女はみんな、私と同じように精神系の魔法を操る魔女ばかりで強いから、十分に注意してください」
「御忠告ありがとうございます」
「最後にソーニャ王女様。私、深慮の魔女の名前をお教えします」
「えっ! 良いのですか。魔女にとって自分の本当の名前は一番大切な秘密だと聞いています。本当の名前を知り、その名前を呼ぶ者に対して、その魔女の魔法が無効になるのですよね」
「はい。でも、問題ありません。もう、あなたと私が戦うことは完全に無いでしょう。良い友達になれそうです」
「私の方から申します。もう知っていらっしゃるかもしれませんが、私の異世界転生前の名前は北川風香といいます」
「私、深慮の魔女のほんとうの名前はレイラといいます」
「レイラ、これからもずっと、私の友達でいてください」
「風香、私の方こそ、よろしくお願いします。あなたとあなたの愛する人が、この世界で続ける戦いが勝利で終わりますように、心の底から願っています。何かお役に立てることがあったら、連絡して」
「ではまたお会いしましょう」
「はい。楽しみにしています。旦那様も」
騎士カイロスも照れくさそうのおじぎをした。
騎士カイロスとソーニャ王女の前に、架空空間の扉が現われた。
そこを開けると、王宮の上の空の区間に戻り、塔の上まで階段が続きていた。
2人はそこを降りて帰っていった。
王宮の塔の上に降りた後、彼が彼女に言った。
「レイラさんが言っていたとおり、これから精神系の魔女との戦いが多くなるのですね。すると、王女様が僕の精神の中に入って僕の心を守っていただく機会が‥‥ 」
「はいはい 任せてください。カイロスさんの心は私が完璧に守ります。ついでに、『カイロスさんがどんな女性に興味をもって心が動いたのか』も、しっかり確認できますね」
「え――――っ 」
それから数日後、王宮内で御前会議が開かれた。
ロメル国王が告げた。
「内務卿ゲーテよ。説明してくれ」
「はい。東部地域の多くの街で問題が発生しています。街の人々が働くのを止めて、遊びほうけるようになってしまうのです。機能が停止し死んだようになる街が増えています」
騎士カイロスが言った。
「もしかしたら、精神系の魔女の呪いかもしれませんね。国王様、私が参りましょう」
すぐに、ソーニャ王女が続いて言った。
「それならば、私も御一緒させてください」
「王女様、王女様が御同行いただくのはほんとうにうれしいのですが、警備の問題や‥‥ 」
「違いますよ。現地に行かれるのはカイロス様1人で。私は大魔法師マーリン様の魔術でカイロス様と精神を融合させていただきます。私の体は、この王宮の私の部屋のベッドで寝ています」
「そうですか。それならば問題ないですね」
数日後、騎士カイロスは東部地域の州都ロゼを訪れていた。
城門をくぐった後、メインストリートを歩いていて彼は驚いた。
州都のような大きな街のメインストリートなのに、人通りはかなり少なかった。
「少ないな。いつから、このようになったのだろうか? 」
ふと気が付くと、道のかたわらで野菜を売っている老婆がいた。
彼は思いきって聞くことにした。
「おばあさん。私は遠い地方からやってきた旅人です。失礼ですが、州都のメインストリートとしては人どおりが寂しいと思うのですが」
老婆は厳しい顔をして応えた。
「そう思われて当然です。ここ数年間、この街には奇病が増えてきています。特に若い人々が多くかかり、簡単にいうと『働かず楽をしたい。面白楽しく暮らしたい』という思いに支配されます」
その後、老婆はさらに悲しそうな顔で彼を見た。
「私の孫も優秀な職人でしたが、今は仕事をせず毎日遊びほうけています」
その話を聞いた時、騎士カイロスはあることを思いついた。
(これは、異世界転生前の世界だったら、たぶん罪になることだけど。この異世界では違うだろうから―― おばあさん、許してください)
「言い忘れました。私は国の役人で医者なのです。お孫さんの様子を見たいのです。拝見させていただいて良いでしょうか? 」
「えっ!! お医者様なのですか。立派な剣をお持ちなので、てっきり騎士様だと思いました」
「はい‥‥ 僕は戦う医者なのです」
(わけのわからないことを言ってしまった)
「はいはい 戦うお医者様ですか。病魔の原因には魔族などが原因となることもありますからね」
老婆は騎士カイロスを案内した。
メインストリートから離れて、細い道をどんどん繁華街の中に入っていった。
やがて、ある酒場の前で立ち止まった。
とても安そうな酒場で、その中から酒くさい臭いがプンプンした。
「お医者様。この中に私の息子がいます。私が前に仕立ててあげた職人の仕事着をきていますからすぐにわかると思います」
「お孫さんのお名前は? どのような職人なんですか? 」
「タクミという名前の家具職人です。気をつけてください。お医者様はかなりのお若い方だと思います。病気にかかってしまっては元も子もありませんから」
「御忠告ありがとうございます」
彼は自分と精神を融合しているソーニャ王女に伝えた。
(王女様。これから問題がある若者達に会います)
(大丈夫ですよ。あなたは聖女である私の力で全力で守ります。それに、聖剣クトネリシカは魔女の呪いに対する最強のお守りなのですよ)
(安心しました)
騎士カイロスは酒場の入口から中に入った。
予想どおり、大勢の若者達が飲んだくれていた。
彼らは実に愉快そうだった。
おばあさんの孫を探そうと、彼は酒場の中を見渡した。
すると、いかにも職人らしい丁寧に仕立てられた仕事着の若者がいた。
彼は思いきって声をかけた。
「あの―― 家具職人のタクミさんですか? 」
「そうだよ 」
「あっ、よかった。僕はタクミさんのおばあさんに紹介されてここに来ました」
「あなた、誰? 」
「国の役人で医師なのです。お聞きしたいことがあります」
「役人がなんですか。早く済ましてください。まだ飲み足りないから―― 」
その時、彼と精神を融合しているソーニャ王女が伝言しました。
(来ました。カイロスさんの心の中に侵入者です!! )
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