第三話 どの世界でも
「そういやユーマ、どの地域のどこに住むとかは決まってんの?」
「うーん…他の地域まだ見てないからわかんないけど、街並み的には今のとこエウロぺかなぁ」
UHNCで書類の発行を待っている間に、ウォルターさんから地理について教えてもらった。この国”ヴィストヴィア”には大きく分けて4つの地域があるらしい。
現代ヨーロッパのようなのどかな街並みの”エウロぺ地区”、江戸時代のような雅な建物が並ぶ”ニクノワ地区”、夏場でも涼しいと評判で、冬場は大量に雪が降る”ベリーシア地区”、ビルやマンションが立ち並び、各地域へのハブになっている”ファリア地区”。僕らが今いるのはエウロぺ地区だ。
「んーエウロぺかぁ…いい街だけど遠くなっちゃうなぁ…」
「そう言うガロンはどこに住んでるのさ?」
「オレはファリアの方だな。学校の寮に住んでる」
「学校か…やっぱどこの世界にもあるんだな」
「ん?あたりめーじゃん?...あ、そうだ!まだ決まってないならユーマも学校こいよ!」
「え、ええ?なんでまた急に…どうせ入ってもいじめとかされるのがオチだし…」
「いじめなんてそうそう聞かねーよ。それにうちの寮はほぼ全員異世界から来たやつだから、きっとお前もすぐ馴染めるよ」
言い終わるか終わらないかのうちに、ガロンは道を歩いていた男性にぶつかる。
「おぶっ!ああ、すいません…って学長!?」
「おお、ガロン君ではないか…おや?そちらの少年は?ここらでは見ない顔だが…」
学長と呼ばれた銀の毛の老獣人がこちらを見て尋ねる。
「どうやら異世界人みたいで、さっき名前の発行が終わったみたいなんですよ〜。んで、今は色々案内してたとこです。あ、そうだちょうどよかった!彼もうちの寮に編入させてもいいですか〜?」
「えっちょ、勝手に…」
「おぉ、ええぞ。アンワールズのみんなも仲間が増えて喜ぶじゃろう」
「…だってさ!ユーマ!」
笑顔でくるりとこちらに向き直るガロン。こいつ…僕が断れない状況を作りやがった!
「え、えぇと…ユーマ=シルヴァです。よろしくお願いいたします」
「そんなに改まらなくてもよい、肩の力を抜きなさい。見知らぬ土地で右も左もわからんだろうが、落ち着くことが肝心じゃ。…おっと、わしの紹介がまだじゃったな。わしは”ノヴァ=ガーオン”じゃ。これからよろしく頼むぞ、ほほほ。」
半ば諦め気味で自己紹介する僕の肩をやさしく叩いた後に、学長ノヴァは
「そうと決まれば寮まで案内せんとな。どれ、ついてきなさい。」
と、にっこり笑って歩いて行った。