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第一話 異世界人のしっぽ

ガロンと名乗った銀狼の少年は、僕を連れてある建物まで歩いて行った。

道中、前を歩くガロンの尻尾が右に左にゆっくり揺れていた。僕は思わずそれに抱きついた。

「ひゃうっ!?」

高い声が聞こえ、ガロンの体が跳ねた。

「なななにすんだよっ!」

振り向くと同時に尻尾から僕を振り払い、大事そうに抱くガロン。その顔は赤く、少し怒ったような、戸惑ったような表情をしていた。

「あ、ごめん…本能でつい…」

「獣人の尻尾なんてすげーデリケートなんだからなっ!...ん?あぁ…」

怒鳴ったと思ったら何かを察したような声を出した。と次の瞬間、ガロンはとんでもないことを僕に言ってくる。

「お前、”ケモナー”なのか…」

なぜバレた!?いや今の行動でバレるだろうけど!そもそもこの世界に”ケモナー”って言葉があること自体にも驚きだよ。

「なんだよその顔。お前のカバン、しっぽのキーホルダーついてるじゃん。それ”ケモナー”の証だろ?」

そうなの!?バッと鞄に目をやると、確かにキーホルダーがついている。薄いベージュと黒の毛並みの、もふもふした小さなしっぽのキーホルダー。どうやらこれが”ケモナー”の証らしい。聞くところによると、この世界での”ケモナー”は全員が異世界人なのだとか。だから、このキーホルダーは異世界人である証明にもなると言う訳らしい。

「そのキーホルダー、どっかしまっとけ。これから必要だしな。」

「これから行くのって、どこなの?」

「”異世界人ネーミングセンター”、通称UHNC。新しい名前を授かれるところだ。まだ身分証明書もないだろ?だからそこで名前と身分証明とかを発行してもらえる。その時の証明として、それが要るんだよ。」

「へ〜。でもすぐ必要なモノなら、すんなり通れるように見えるところにつけといた方がいいんじゃないの?」

「いいや。絶対に隠して、肌身離さず持っておいた方がいい。この”エウロぺ地区”もそうなんだけど、この国のやつらの中には自分の名前に不満がある奴がいる。そう言うやつがそのキーホルダーを狙って異世界人を襲うなんて話も少なくないんだ。」

「ひどい…キーホルダー目当てで暴力なんて…」

「ん?殴ったりとかはしねーよ?実際そんな話聞かねーし」

「でも、キーホルダー奪うってなると動けなくしなきゃ無理じゃ…」

「んー、動けなくはなってたな…」

暴力じゃないのに襲うって…つまりそういうこと…!?

「何考えてるかなんとなくわかったけど多分そうじゃないからな」

ハイ。そうですよね。

「実際に見てた事例だとそうだな、思いっきり抱きしめて顔を胸の辺りに押し付けて窒息させてたな。なんかすげー幸せそうな顔で倒れてたけど」

あくまで他意はない。たださっき述べたことを実行しようとしただけなのだけど、僕の手はありえない速さで見えやすいところにキーホルダーを付け直した。

「しまっとけって。それなくなったら戸籍とかも作れないし学校とかも行けないから一生ホームレスニートだぞ」

それはさすがに困るのでまたキーホルダーを収める。

「ん、着いたぞ」


ガロンの視線の先をなぞると、そこには近未来的な建物があった。

入り口の上には金属プレートで”Unworld Humans Naming Center”と書かれている。入り口の前に立つと、僕を青白い光が包む。

「お入りください」

一通りスキャンが終わったのか、扉が開いた。

「ん、通れるみたいだな。んじゃ終わってから会おう」

「終わってからって…どうやって知らせたらいいの?」

「ん?ああ、オレ大体何分ぐらいで終わるか知ってるからそんぐらいに戻ってくるよ」

「そうは言っても僕ここのこと全く知らないし…一緒にいてよ」

「あいにくだけど、こーせーな書類?ってのを作る時には第三者は立ち会えないんだってさ」

僕は不安をあらわにしたが、ガロンは肩をすくめて首を横に振った。

「だーいじょうぶだよ、中の人優しいし。んじゃまた後でな」

そう告げて、彼は行ってしまった。

ここからは、本当に一人だ。

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