プロローグ 夢は現実に
お疲れ様です、ぜあです。
この度1000000億年ぶりに新作を投稿していこうかなと思っています。
何個か作品は思いついてたんですが、いかんせん続きが浮かばなくなって失踪なんてことがザラでした。
ですが今回は同時並行でTwitterにてキャラ交流の企画もやろうと考えているので、困ることはそうそうないかと思います。
長くなりましたが、今回は初めて異世界系の作品にしてみようと思います。
上にも書きましたが、おれの癖が見え隠れする場面もあると思います。(笑)
暖かく見守ってやってくださいな。
やあ、みんな!こんにちは!こんな表紙やタイトルの小説のストーリーって、みんなはどんなのを思い浮かべる?
「ユートピア」に似てる言葉があるしキラキラした世界が舞台なんじゃないかって思う人も多いんじゃないかな?僕も読み手だったらそう考えると思う。
キラキラした楽園で、いろんなキャラクターたちがゆったり過ごしてる…
そしてその主人公は-------
今、道端に転がっている。
どうやってこの場所に来たのかまったく思い当たらない。目が覚めたらこの世界にいたのだ。眠る前の記憶はまったくと言っていいほどない。
「失礼なことしちゃったなぁ…」
道端で倒れていた僕を起こしてくれた人がいた。だが、僕はその姿を見るなり逃げ出してしまったのだ。尖った口、するどい牙と爪、抱き心地良さ…全身を覆う毛。あれはゴリゴリのオオカミそのものだった。それが二足歩行で、しかも人の言葉を話すだけでも信じられないことなのに、おまけに人間と同じような服を着ているのだから、驚かない訳がない。それでも、”ありがとう”すら言わずに走って逃げてしまったのはすごく反省している。また出会えるかな…
さらに驚いたのは、街中を走っている時のこと。周りの住民も、犬猫狐狸から龍人魚人、さまざまな種族のいわゆる「獣人」が至る所に立っていた。もちろんそれだけでも驚くべきことなんだけど、走ってる途中に気づいたんだ。
——やけに視点が低い。足もこんなに速かったっけ。
いつも走るよりもとても視点が低い。まるで前屈みになってるかのように。
…うん?前屈み?
ふと、足を止めてみた。急に止まったせいで体が前に転がったが、地面に触れた頭に痛みはなかった。転んだ時にチラと見えたのは、灰色の毛に覆われた丸い手と、白いお腹だった。こういうお腹に顔を埋めたら気持ちいいんだろうな…今の僕はとにかく現実逃避に必死だった。そうだ、これは夢だ。さっき転んだ時に痛みがなかったのも、元からこの体だったかのように自由自在に体を操れているのも、全部夢だからだ。そう考えると、辻褄が合うような気がした。
「なー、お前大丈夫か?」
ふいに声をかけられた。はっと我に帰ると、目の前には銀の毛を纏った足があった。尖った爪が伸びていて、僕の足よりがっしりしていた。
「あぁ、ごめんなさいこんなところに座り込んじゃって。だいじょう...」
そう言いかけて顔を上げた。自分より少しだけ背は低いだろうか。同い年ぐらいの顔をしている狼獣人を僕の目が観察していた。
「ん、なんだ?オレの顔、なんかついてる?」
不思議そうに顔を擦る彼の顔が、まるで福笑いのように伸び縮みする。その光景は、僕の浅いツボを刺激するのには十分すぎた。思わず吹き出してしまう僕に彼はムッとした顔で、
「なんだよー、どこについてるか教えろよー」
と言いながらなおも顔をかき混ぜる。立ち上がりながらそれを見てしまった僕は、途端に力が抜けてまたへたりこんでしまった。
「い…いや…どこにも…なに…も…ついて…ないよ」
声を大にして笑いたいのを必死に我慢しながらも、彼の顔になにも異常がないことを伝える。やがて彼は手を止め、
「あ、そう?」
と返した。まるでムンクの「叫び」みたいな顔で。
それを引き金に僕のツボは完全に決壊した。すごくお腹が痛い。
「元気出たみたいだな、よかった!」
笑い疲れた僕の顔を覗き込んだ狼獣人は嬉しそうに言った後、僕に手を差し伸べながら名乗った。
「オレはガロン。お前は?」
「名前は…ないんだ」
うそだ。本当は、ちゃんとある。銀猫佑磨という名前が。だけど、せっかくこんな夢みたいな世界に来たのだし、なおかつ今の僕はあちらの僕じゃないのだ。ならば、新しい名前をもらうのもまたアリだと思ったのだ。
「ん、お前も名前ないのか?だったらいいところ知ってるぜ」
…ん?も?
「お前”も”ってどういうこと?僕以外にもこういう人がいるの?」
「おう。なんか『元の世界に帰りたい』って言う奴もいれば、『帰りたくないぜー』なんて言いながら手当たり次第に抱きついてぶっ飛ばされてた奴もいたな。そのほとんどがお前みたいに”名前がない”って言ってた」
後者の気持ちすっげーわかる。友達になれそう。
「ふーん…そう言えば、ここってなんて場所なの?」
「ここは”エウロぺ地区”。そして、この国の名前は——」
獣人の国 “ビストヴィア”。