<クシュン!>
「見えちゃうでしょ!」
「マー坊…、危ない事しちゃ駄目だよ…、あたしやだよ二回も…」
言葉は続かず代りに温かい物が肩から背に流れ落ち、肩に落ちる場所は何度も温かくなり流れ落ちて行く間に少しずつ冷たくなって行く。
足りない頭の中で此の落ちて来る物の意味を探しても答えは見つからない、次に零れる言葉を待つしか無いのか…。
「如何したの?」
普通に言葉を返す。
「何でも無いよ、一寸だけ大人しくしてなさい…」
「俺は良いけど風邪引くよ?」
「こっち見ちゃ駄目だからね!」
「何で?」
「見えちゃうでしょ!」
「もう…、判ったよ!」
気付かせまいとしてるのが伝わる、言葉が震えて居るから…
だから其れに気付かぬ振りをした。
どれくらいそうして居ただろうか…。
<クシュン!>
「ほら言わんこっちゃない!」
「こっち見ちゃ駄目!」
振り向きかけた時に怒られる、動体視力の良さと言って仕舞えば簡単だがホンの一瞬見えて仕舞う、真っ赤に眼を腫らした其の顔に、多分美澄は見られたとは思って居ないだろう、其れ位の僅かの時間では在るが是が出来ないと多分生き残れない、嫌俺は生きて帰れないだろう…。
「判ったよ、風呂に浸かろう?」
「駄目!、もう少しこうしてて…」
「もう…、しょうがないな…」
「ゴメンね、あたしが良いって言う迄もう少しだけ待って…」
「でも風邪引くよ?」
「お姉ちゃんの言う事聞けないの!」
「じゃあシャワー出して温まろう?」
「うん…」
シャワーヘッドから出る冷水がお湯に変わり、湯の温度を適温より少し高めにしてシャワー掛けに戻す、俺の肩越しに美澄の躰に当たる角度にして半分程は身体に当たらず其の侭床に落ちて行く、直ぐに湯気を立てて浴室自体の温度も上がり始める、唯、会話をさせまいとする様にシャワーの音が浴室の中に響いてる。
「マー坊温かいね…」
「でもちゃんと浸かって温まろう?」
「うん!」
「長い時間は駄目だよ、ホントに二人とも風邪引いちまうから?」
「解ってる…、マー坊一寸だけ話聞いて呉れるかな?」
「良いよ何言われても驚かないよ、其れとも別れたいって言うのかな?」
「んな事言う訳無いでしょ!、お姉ちゃん怒るよ!」
「なら驚かないよ」
「ありがと、良い子ね」
「ハイハイ」
「ハイは一回でしょ!」
「判ってるよ、話有るんでしょ続けて?」
「ゴメンね♥」
耳元で息を吸う音がする、そして背に当たる二つの柔らかい物が当たる面積も増える、そう未だ肩越しに回された腕は其の儘だから。
そして柔らかい物の圧迫感が減って行く。
「未だ教えて無かったよね?、あたし弟が居るの…」
「そうなんだ…」
「違うか…、居たんだよ正樹っていう弟が…」
面と向かって言われて無い、聴かない事にしたんだ直接美澄の言葉として俺に伝えて呉れる迄は、其の機会が今やって来たんだな…。
「聞いてるから続けて…」
「そうなんだ…」




