「良いんじゃ無いかやって見ろ!」
何で福岡に向かうんだ?
其の日は何も聞かされず只ついて来いと言われて車に乗り込んだ、向かうのは福岡だとだけしか教えられず、俺が上京する報告を親父の実家か親父と仲の良い叔父の家にでも行くのだろう、そんな位に考えて居たんだ。
日帰り往復600㌔を越える強行軍、主体は一般道、高速乗れるのは100キロを超える位だ、未だ九州内にも高速道は一部区間しかない頃の話だ、家を出て高速に上る場所迄でさえ一般道を200㌔近く走る、今から思えば俺が上京する事を伝えるだけの為に其処迄するか?、確かに顔を見せるって意味は有るだろうが其処迄の事をするのか?。
最初からおかしな話だ、親父の実家とは絶縁状態、仲の良い叔父なら兎も角…、一生逢え無く為る訳でも無いのにさ、然も俺が地元を離れる数日前に…、此の後数日後に俺を空港迄送って行くのに往復400㌔以上走るんだぞ、公共交通機関はバスだけしか無い様なド田舎、早朝出発の空港迄の公共機関での足は勿論存在しない。
「此れから帰る俺達の家は此処よりもっと綺麗な所だよ、バイクで10分位走った所に其の場所から見入って動けなくなる位綺麗な処が有るんだ…、見せて上げたいけど俺の相棒は人手に渡って仕舞ったから見せて上げられ無いんだ…、誰かに連れて行って貰ってくれよゴメンな姉さん…」
外が良く見える様に綺麗な景色が見える方向に掲げた手を向け続ける。
この日向ったのは俺の姉の眠る寺院、俺はこの日迄姉が居る事すら知らなかった、半年位前に学校に来た就職案内にやっと東京周辺の募集を見付け親父に上京したい旨を伝えた、でも其の仕事先は本当に成りたい仕事に就く迄の腰掛にしかしない事も正直に、反対されるのは覚悟の上で…。
「良いんじゃ無いかやって見ろ!」
伝えた瞬間に即答で帰って来た答え、本当に拍子抜けした伝えるのを躊躇したのが馬鹿みたいに思える位あっさりと…。
でも其の時は了承された真意は解らず、取り出された数枚の写真に写る若かりし頃の親父、其処に映るHONDAのバイクと親父、此の時知った親父が元々バイク乗りで独身時代からバイク漬けの毎日、仕事先まで通うのもそして家電メーカーのサービスマンで仕事先に廻るのも、部品を詰めたジュラルミンケースを相棒に括り付け、朝起きてから帰り着く迄毎日がバイク漬け…。
それでバイクに乗る普通じゃ無い仕事、常識を持った意識が高いと言われる人達には間違い無く理解されない危険極まり無い仕事、俺と同じバイク乗りだから反対されなかったと思って居た。
此の強行軍で其の寺院に着いた時に聴かされる姉の事、此の世に産声すら上げる事もお袋の顔さえ見る事無く旅立った姉が居た事、帰りの車内で色々な事が有り幼い俺を連れ今の地に移り住んだ事、元気に育ってくれるだけで良い何でもやりたい事が有ったら反対せずやらせてやろうと決めた事も教えて貰った。
今此の地に居られる事も俺に姉が居たから出来た事なんだ…。
如何為るんでしょうか此の先?




