晴れて居れば。
上手い事を言うものだ…
ヽ(`Д´#)ノ ムキー!!
「無くなっちゃう?、だったら尚の事マー坊が危ない事する必要無いじゃない!、大怪我してからじゃ遅いんだよ、そう為った時にどうするの?、前の仕事でも事故で危ない目に遭ったんでしょ、考え直そ?」
そう言われ気持ちが傾きかけた、此の先も揺らがない自信も無い、でも・・・。
「無くなって仕舞ってからじゃ遅いんだよ、その時はきっと一生後悔する事になる!」
「マー坊のわからず屋、どうしてあたしの気持ち判って呉れないの!、毎日無事に帰って来るのか怖いんだよ、なのにもっと危ない事をするんじゃ無い!」
「美澄…」
「よく聞いて!、あたしバイクに乗るのを止めてって言って無い、仕事にするのを止めて!」
「美澄には何時でも笑っていて欲しい、でも俺には出来そうもないし本当に笑って呉れるのかも判らない」
「突然何言ってんの?、マー坊があたしを怒らせなきゃ何時も笑ってるじゃ無い?」
「でも本当に笑って呉れた事が無いよ、大輪の向日葵見たいに笑ったんだ、ほんの一瞬、だけど其れは俺に向けられたものじゃ無かったよね…」
「ならあたしを安心させてよ!、こんなに心配ばっかり掛ける弟が全部悪い!、ねッお姉ちゃんの言う事聞いて良い子に成って?」
「俺…弟じゃ無いし、弟にもなれない、だから本当に笑ってられる所に行った方が良いよ!」
「何で、何でそんな酷い事言うのよ…、判ったもうあたしは要らないって事なのね…、あたしこんな我儘な弟なんか要らない!、今まで有難う!」
「ウン!、お姉ちゃん元気でね!」
最期は悔いが残らない様に弟で…。
「マー坊さよなら!」
そう言い残し立ち上がり玄関へ歩き出し、ドアを開け振り返り最期の言葉…
「マー坊!、早くバイク見つかると良いねッ!」
グズグズに涙で崩れた満面の笑み、俺に向けられた中で一番良い笑顔がドアの向こうに消え、追う事はしなかった。
「悪かったな、お前まで巻き添え喰わせたみたいで・・・」
コイツは引き取りの業者が来る迄は駐車場に置かれた侭なのだろう。
「若しかしてお前が仕組んだのか?、お前は美澄が一番辛い時にずっと傍に居たんだもんな、俺も判らんでもないさでも何時迄も幻影に縛られるより良いよな・・・」
何も考えず憧れだけで本当に成れるのかすら分からず上京し、寂しいとすら気付かずに居たのに今更其れを思い知る。
あの日晴れて居れば、もし違う返事を返して居れば其処に違った未来か有ったのか?、あの時に期限を切ってそれまでに見つからなければと言えば…。
もう遅いよな覆水盆に返らず、先人は上手い事を言う物だ。
美澄があの一瞬見せた俺が見たく無かった本当の笑顔、それが俺が返す答えを決めさせた。
だが最期に見たかった笑顔を見て俺は後悔したのかもしれない。
後悔先に立たず本当に先人は上手い事を言うよな。
「良いオーナーに出逢えると良いな!、それじゃアバヨもう一人のマー坊!」
もう振り返る必要も無くなった、真っ直ぐ家へ向かう、今夜もバイトだから…。
後日バイクを探しに北へ向かうと其処にマー坊は無く、そこに不動産屋の車が止まり、脇にソアラが止まっていたのは覚えている…、月末の或る日の事だ。
早くバイク見つかると良いねッ!