攻防戦開始
見た目で既に負けてる…。
ドアを開けての攻防戦開始、ハッキリ言って外観も乗って来てる車でリッチさも雲梯の差、見た目で既に負けてるこの野郎と如何戦うんだ…、<知恵と勇気!>何処からか無責任な声が聞こえる。
「アレッ聞いてませんか?、お姉ちゃんに姉弟居ないですよ、希望の仕事に就きたくて上京したんでお姉ちゃんの家に寄ったんですが、如何も間の悪い所に居た見たいですね?」
「そ…う…なんだ…」
「そうみたいですね!」
「悪かったな良く解らずに怒鳴って。」
「いえいえ此方こそです、まるで間男見付けたみたいでしたけど!」
「ハハハハハ…」
奴は力無く笑って居るが一寸位は嫌味言っても構わんだろう、今の会話には辻褄の合わない事が有るのに野郎が気付いてない、今迄連絡すら着かなかったのに今俺が居る事も、何で挨拶に立ち寄る様な関係なのかも、でも混乱してるのは俺も同じか。
美澄の中では終わって仕舞った事で新しい道を見付けても悪い事は無い、進む道は自分が決めた一本路!、然も速攻即決って女性だから普段なら迷う事も無いんだろうけど、俺と一緒に歩いて行く選択が間違いで勘違いだと気付いた今なら如何するんだろう?、まだ戻れない程の時間も経って無い、此の男もずっと帰って来るの待ってたと言ってる、然も美澄の望んだ答えを持って現れた、最悪な事態に為って仕舞った…。
今の状況では俺って邪魔だよな?、でも一緒に居て楽しかったし、此の先も此の侭続くのなら渡したくないのが本心、若しかして俺は女運が悪いのか?。
「それでお兄さん如何します?、お姉ちゃんはお兄さんと別れたって言ってましたけど…」
「そんな事有る訳無いだろ!」
「そうですよね…、其れだったら此処に来ないだろうし?」
「当たり前だ!」
野郎は胸を張って言い切った、で顔を天井に向け見下す様に視線だけを俺に向けている、野郎は未だ気付いて無いが俺は気付いた、美澄が泣き止んで居る事に。
驚いた顔して俺とのやり取りを聴いてる、今迄見せた事の無いオロオロした顔で俺を見ている事も、気丈に俺に接してる何時もの美澄じゃ無くなってる、此の女性が不安に怯えてこんな顔をするんだ、さて俺は如何すりゃ良いんだ?。
「俺は是から美澄と話をしてちゃんと誤解を解く心算だ!」
「そうですか…」
「だから解るだろ!」
「邪魔に為らない様に退散しろって事ですか?」
「そうだ!」
俺の事を丸っきりの部外者と思ってる、俺に聴かれて面白い話じゃ無いだろうし俺が此処に居る事が邪魔でしかない、怒りと恥ずかしさで俺が言った事の不自然さにも美澄との関係にも気が廻って無い、状況は今俺に好都合に巡ってるがどのタイミングで如何切り出したら良いんだ?。
助け舟を出す様に絶好のタイミングでクラクションが鳴る、そう野郎は駐車場のど真ん中に車を停めている、他の住人の車が出せないから鳴らされて当然…。
「お兄さん車何処に停めました?」
「車?」
「他の住人が出せない処に停めてません?」
「アッ!、車何時もの所に停めて来るから少し待っててくれ美澄!」
そう言い残して玄関から出て行った、そう絶好のタイミングだ此れで美澄と話が出来る。
「美澄?」
「マー坊…、あたし如何すれば良いの?」
其の言葉がリフレインする…。
<あたし如何すれば良いの?>其の言葉がリフレインする。