もう難しく考える必要は無いのか?
玄関に座り込み声を上げずに泣き崩れた…
「だから海外に行く話白紙に為ったって断ったんだよ!、もし行く時はお前も一緒だって!」
「えっ…」
ドアノブに掛っていた美澄の手が力無く落ち、崩れ落ちる様に玄関に座り込み声を上げずに泣き始める、アノ時だって泣きたい筈なのに気丈に涙を見せまいと展望台へ俺の手を引き歩いて居たのに…、年下の俺の前じゃ必死にお姉ちゃんで居ようとしてたと言う事か、もう難しく考える必要は無いのか。
「良いから美澄チェーン外して呉れよ、ここを開けて呉れちゃんと説明するから。」
でも立ち上がれそうにも、泣き止む気配も無い、5分も経っただろうか状況は一向に変わらない、宥める声がドアの隙間から続いてる、此の儘じゃ埒も開かないから意を決して立ち上がりドアに向かう。
「チェーン外しますから手を放して貰えますか?」
「オマエ誰だ?」
驚いた顔をしたその男の問いに答えずドアを閉め、驚いて力が抜けたのか簡単に閉じる事が出来た、俺だって悩んだ此の侭閉めた侭で諦めて帰ってくれるんじゃないかと、そんな微かな期待もするさ此の儘何も無かった事に為らないかと、明日からも今迄の日常が続くんじゃないかと、美澄の膝枕の上で見ている悪い夢なんじゃ無いかと淡い期待を抱かない訳が有るか?、そうだろって誰に聞いてるんだ俺は…。
意を決してチェーンを外し再びドアノブを廻して押し開いて行く、イイ男じゃ無いかよ顔の造作が整って詳しく無くても判る仕立ての良いスーツ姿の野郎が立って居た、驚いている其の顔は間抜けだがな。
「誰だお前は?」
第一声が此れかよ?、営業で人に会えねえだろ其れじゃ何て事が頭を掠める、バイトとは言え嫌な客もクレーム言って来る奴が居ても先ずは体裁整えて愛想よく応対だろ、其れが社会人じゃねえのかよ?
ならそう言った手前ちゃんと対応しないとな、声を荒げて対応したんじゃ後で美澄も困るだろうし、会話も成り立たないし、此処はグッと堪えて出かかる言葉を呑込む、<お前こそ何様だ>って言葉を。
「あゝお兄さんがお姉ちゃんの彼氏、違いましたね婚約者さんですか?、お話は聞いて居ります。」
「若しかして君は弟さんなのかい?、乱暴な言葉使って悪かった…」
おっと一気に掌返しか?、身内かもって体裁取り繕ったって遅いよ<覆水盆に返らず>って言うだろ、出た言葉は取り消せないって、まあよっぽど良い所に務めてんだろうな身形も良いし商売上もこんな態度で居るんかな?、まぁ状況判らん儘だと此奴にとっては俺は間男って事に為るんだろうし怒り捲くっても当然か…、其れじゃ男引き込んだって事で美澄の立場も悪く為って話し合いも出来なく為るし…。
「アレッ聞いてませんか?、お姉ちゃんに姉弟居ないですよ、希望の仕事に就きたくて上京して来たんでお姉ちゃんの所に挨拶に寄ったんですが如何も間の悪い所に来ちゃった見たいですね?」
「そ…うなんだ…」
「そうみたいですね!」
( ^ω^ )ニコニコ
ヤダヤダこんな風に体裁と安全策摂る様に為って仕舞ってる自分も嫌だな…。
自分自身が嫌になる