気にしないで大人しく寝てなさい♥
俺は其れを見逃さなかった…
急ブレーキの音が止むと町の喧騒だけに成り静かになった、何か有ったんだろか。
事故なのか?、そう思った時にクラクションが鳴る、後続に発進を促されたのか排気音が野太く唸りタイヤが鳴くけたたましい音を立て走り去って行く、何が有ったか気に為り起き上がろうとして肩を押えられる。
「行っッちゃったみたいだよ、気にしないで大人しく寝てなさい♥」
「判ったよ…」
美澄に促されて大人しく頭を乗せ直し眼を閉じた、窓の外からかカーテンを揺らして良い風が抜けて行く、偶に前の道路を通過して行く車の音と町の喧騒とカーテンが揺れ衣擦れする音だけ。
良く知る香りがする部屋の中、安心できる此の香りが今は当たり前に為り眠気が誘って来るまで左程時間は必要としない、今日海に行けなかったのは残念だけどこうしてノンビリ時間を過ごすのも悪くない。
久しぶりに二人でゆっくり過ごす時間、出会った頃は美澄が就業前だからバイトの無い日は一日のんびりと何もする事が無い時間が当たり前だった、ただ助走時間が全く無くていきなり略同棲状態からスタートしたので俺は緊張しっぱなし、今迄女性と真面に付き合った事が無いんだから仕方ないだろう、対する美澄は此の間の話の通り最初から俺を弟扱いだから緊張など無かっただろう。
数分も経っただろうかウトウトし始めた時にまた同じ排気音が近付いて来る、然もかなりのスピードが出てるみたいだ、さっきと同じ排気音と言う事は同じ車なのか?、だとすると一体何をやってんだあのソアラは、そんな乱暴な運転する様な者が買う車じゃ無いだろうに…。
そんな事が頭を掠めるが大人しく寝てろと言われたし…、まあ他人様の事を俺が気にしてもしょうがないしと思っていた、だが直ぐ傍でまたスキール音が鳴る、何が起こってるんだ?
「さっきと言い一体何なんだろうね?、何か有ったのかな見て観ようか?」
「だね一寸見て見…」
その言葉を遮る様に野太い排気音とけたたましいタイヤの鳴く音が、そして直ぐ窓の下でスキール音を発してエンジン音も停まった、道を横切り駐車場に入って来たぞ?
「えっ?、何なの?」
「ここなのか?、一寸見て観るよ。」
何が起こったのか確認しようと身体を起こし、其のタイミングで車のドアが閉まる音、窓から駐車場を見下ろすと3ナンバーのソアラで間違い無い、今の俺の耳でもコレ位は解るみたいだな…。
「一体なんだろうね?」
「さあ訳が分かんない、何で駐車場に入るのにあんな乱暴な運転してんだろ?」
俺に続いて美澄が窓に近付こうとしたタイミングで、ドンドンとドアを乱暴に叩く音、二人して玄関を振り返る。
「オイ美澄何時帰って来たんだ!、帰ったなら連絡位寄越せ!」
ドアの向こうで声を荒げてドアを又叩き出す。
「何で連絡寄越さないんだ!、帰って来て無いかずっと休みの度に此の前を見に来てたんだぞ!」
一瞬、ホンの一瞬だけ顔色が変わった、だが俺は其れを見逃さなかった…。
そう是は俺が此の先を生き残って行く為に必要なスキル、生き残る為に…。
俺が此の先を生き残って行く為に必要なスキル