表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/81

050

50話達成です!

 ここ十二日はエクターと冒険、レイと冒険、そして休日を繰り返している。今日は休日なので僕は部屋でレイの相手をしていた。昨日の冒険で山賊狩りの話をしたら、珍しく二日連続で部屋に来た。


「俺は反対だ!」


 レイがテーブルをドンと叩く。


「でもなぁ、それで荒稼ぎする前提でここ半月動いたから、急な予定変更は難しい」


 僕がレイを宥める。幸い、宿屋の部屋には二人しかない。今日のソフィは図書館、イリナは私塾、そしてエクターはゴミ集めに行っている。僕は下水道掃除の方が良いと思うけど、アディとダニールのコネでゴミ集めの方が儲かるらしい。


「ならせめて俺を連れていけ!」


「領主様が許可しないだろう?」


 レイが人を斬れるか自信が無い。冒険者ギルドの仕事なら斬れる。領主の命令なら斬れる。でも僕とソフィがやるのは賞金首を得るための襲撃だ。この行動はレイの善性と相性が悪い。


「俺が説得すれば!!」


「下手に言えば軟禁だと思うよ?」


「ぐっ……」


 図星。レイは必死に否定しているけど、やはり領主の縁者だ。そんな未成年の縁者に山賊狩りを認める事は無い。小作農と農民の娘が勝手に死ぬのなら気にしない。


「レイは何が気になっているの?」


「一緒に過ごす時間が減るだろう!」


 三日に一回会える所が三十日に一回になるのが寂しいのか?


「レイは寂し狩り屋だな! たった一月くらいじゃないか! それに村へ帰ったら半年は一緒だし」


「……」


 レイは沈痛な趣で黙る


「おいおい、本当にどうしたんだ!?」


「帰れない」


「え?」


 どうして?


「領主様は成人式までここに残れって」


「約束と違うじゃないか!」


「ごめん……」


「あ! レイが悪いわけじゃない。僕が怒っているのは領主様だよ!!」


「それでも、ごめん。俺が説得しないといけなかったのに」


 レイは本気で頑張ったはずだ。それでも失敗するほどの理由があった。


「なんか理由があるんだろう?」


「村長の四男が盗賊ギルドと通じて領主様を強請ろうとした」


「……」


 余りにもバカ過ぎて声が出ない。四男が誘拐に関係していた可能性は高いと思ったけど、領主へのダイレクトアタックまでかましたのか。待て、流石にそこまでバカじゃないはずだ。レイを強請ろうとして領主がインターセプトした方が現実的だ。となるとこれは絶対にレイをモールスヴィルへ帰せない。


「本当は内緒だがアイクだから特別だ!」


「分かっている。二人だけの秘密だ」


「うん!」


「でもさ、これで半年我慢すれば大手を振って村を出られるから悪くないな!」


「アイクが望むのならずっとここに居ても」


「う~ん、僕だけなら同意するけどソフィが居るから」


 成人したソフィが自分の意志で村を出るのなら誰も止められない。でも未成年のソフィが村から逃亡したらソフィの家族がやり玉に上がる。僕は家族がいない小作農だから逃亡しても誰も気にしないけど、ソフィはそうじゃない。そしてソフィ一人ではあの村で暮らせない。


「ソフィ……」


 レイは苦虫を嚙み潰したような表情になる。


「そんな顔をするなよ! 大丈夫だって、レイの分もしっかりカバーするから!」


「ん? そ、そうだな!」


「だから残る懸念は村長一家くらい。四男は逃げ帰ったのかな?」


 アディとダニールに聞いてみるか?


「ん~『もう二度と会う事は無い』って言っていた。俺が残るか残らないか揉める前だし……」


 領主か盗賊ギルドが始末したか? 領主恐喝犯なら裁判を経ずに処断されて当然だ。


「村長について何か聞いている?」


「そっちは何も」


「村長を動かさないのなら四男は行方不明がベストかな?」


 僕とソフィは誘拐されていない。四男は領主を恐喝していない。だから復讐を企むのはお門違いだ。でもあの村長だから腹いせに何か仕掛けてきそうだ。身分的に何かやりやすいのは僕だ。レイが居たら二人でどんな困難でも突破出来るけど、半年は別行動だ。ソフィの家族を人質に取ってソフィの動きを封じてくるか? それをやって村長が無事で済むとは思えないけど、常識的な手に見える可能性は高い。


「やはり俺が帰らないと!」


 僕が長考状態に入ったのでレイが心配になる。


「実はレイには頼みがある」


「頼み?」


「スルーブルグに残るレイにしか出来ないんだ!」


 しっかり残る様に力強く言う。これなら領主の暗黙の後押しを得られると言う打算込みだ。


「無理やり残そうとしていないか!?」


 くっ、鋭い!


「そんな事は無い! 僕とソフィの命はレイ次第なんだ!」


 両肩を握って力強く揺する。


「アイクの命が俺の……」


 そこで何故顔を赤らめる? 僕の知らないサドっぽい一面がレイにあったりするのか?


「モールスヴィルの政治状況は分かっているよね?」


「たぶん?」


 ……。


「簡略化すると村長派と領主派で争っている。クレセクが足を引っ張って村長派が強い」


「クレセクってあんま役に立っていないな」


 そうだけど、それを言っちゃ駄目だからね?


「大事なのは! 村長派の独裁では無いって事だ。ここで僕とソフィが『役に立つ』と村全体が感じたら村長は好き勝手出来ない」


 今回の出稼ぎも村長以外の村内で決定権を持つ人間の意向が強い。出稼ぎの結果が良ければ良いほど僕とソフィの立場は向上する。


「山賊討伐もそのため?」


「そうだ。そしてその延線上でエクターさんを雇ったけど、レイに任せた方が安心できる」


 正確には仕送り資金のために一番稼げるのが賞金首を換金する事だ。もっと稼げる仕事があればそっちを選んでいる。


「当然だ。で何をやれば良い?」


「支援物資を定期的に送ってくれるのが一番助かる」


「ああ、あの肉祭りは凄かったな!」


「そんな感じ。僕とソフィが居るから援助があると思わせられたら無下には扱われない」


 僕とソフィは収穫が終われば出ていく。そんな人間に突っかかるほど村の人間は暇じゃない。結局は金で安全を買っている事になるけど、短期間ならこれが一番安い。


「それと僕とソフィの今年分の税金は領主様に直接払う形に出来ないだろうか?」


「俺が頼めば一発に決まっているだろう!」


「なら頼む」


 レイの小作農としての税金は領主が払っている。なら僕とソフィもその恩恵を受けよう。村長は僕達を誘拐して奴隷として売ろうとした。なら彼が使える次の手は税が未納だと主張して僕達を奴隷に落とす事だ。税は村単位で掛けられるから、逃避した農民や農奴に関する税処理を悪用すれば村長の独断で誰でも税が未納に仕立て上げられる。税が未納となったら村会議を経て色々決まるんだけど、小作農の立場は弱いから村長の言い分が十中八九採用される。ソフィも彼女の家族が守ってくれるか分からない。そもそも税が払えず奴隷落ちなんて断る気だ。そうなったら大半の人間の真似をして逃げるけどソフィの足では逃げられるか分からない。


「他になんかあるんだろう? アイクは一番面倒な事は最後に回す癖がある!」


「そんな事は無いって! これは高度な政治的配慮が必要な案件で……」


「ぷっ、小作農が?」


「ああ! それを言うのなら本当に頼むぞ! 泣いても知らないから!!」


「どんと来い! 俺を信じろ!」


 眩し過ぎる!


「農奴と奴隷と家畜が増えたら良いな」


 無責任の極みを食らえ!


「……」


 白い目で睨まないでくれ。


「まずは家畜。これは純粋に労働力のアップに必要だ」


「そこは分かる」


「でそれは農奴にも当てはまるけど、農奴は土地に付いているから売買が難しい」


「村が何個か潰れて余っているとは聞いた」


「そうか。なら奴隷は無しで良さそうだ」


 なんらかの技能や加護ブレイブを持っている奴隷が偶然捨て値で売られていない限り無理に買う必要はない。


「男冒険者は女奴隷を侍らすのがステータスとか言ってなかった?」


「言ってないよ! そんな事を言ったらソフィに燃やされる!!」


 冒険者の夢を語った時に言った気がしないでも無い。


「それもそうだな! でも意外と多いらしいぜ」


 レイが近づいて耳元で呟く。


「本当!?」


 いつしか小声で話す。


「ふっ! バカは見つかったんみたいだ!!」


「ああ! 卑怯だよ!」


「まあでも理解した。村の人口を増やしたいんだな! 領主様と相談して色々やってみるよ」


「助かる」


「でも女奴隷は駄目だから、絶対!」


 何故かぶっとい釘を刺された。次の休みにエクターと一緒に可愛い子がいないか探しに行こうと思っていたのに!


「分かったよ!」


「信じているから!」


 はぁ、そんなキラキラした笑顔で頼まれたら次の休みの予定はキャンセルだよ。

応援よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ