037 *
ゴブリンメイジが食料を備蓄している倉庫を焼くことを優先していなければレタードは討ち取られていたかもしれない。しかし山賊を肉盾に使ってゴブリンウォリアー、そしてゴブリンメイジを討ち取る事に成功した。これが普通の村だったらレタードは英雄として賞賛の嵐だった。領主もレタードの手を取り騎士に叙任していたほどの快挙だ。しかし山賊王が治める村では白い目と怒号しかなかった。被害状況を軽く確認したレタードは山賊団の主だった者を招集した。
「で?」
レタードが集まっている山賊を見回して睨む。
「冬の備蓄が全部燃えちまった」
山賊の一人が呟く。
「どうすんだよ?」
また一人が問う。
「攻める」
レタードが簡潔に言う。冬の備蓄がない。今ある食料で一週間持つか分からない。なら戦える余力がある間に動く。
「へへ。略奪は得意だぜ」
顔に大きな傷跡がある山賊が笑う。笑わなければやっていられない。
「東の村を全部潰す!」
「「いや、それは!?」」
「クワックヴィルは終わりだ! 終わったんだよ!!」
「「……」」
「冬の間に東から根こそぎ奪う。雪解けと同時に西へ向かう!」
「そっちはスルーブルグじゃあ?」
スルーブルグを攻めるのかと怖じ気付く山賊。
「阿呆! スルーブルグは無視だ! スルーブルグの北を抜けて隣領へ走る!! あそこは山賊被害がまだ少ない。俺たちに敵う奴はいない!!」
レタードが自信満々に宣言する。その姿を見て他の山賊もやる気を取り戻す。
「「山賊王! 山賊王!!」」
「そうだ! 俺が山賊王だ!」
山賊たちのやる気は限界に達した。そしてレタードの真の狙いが雪解けと同時に領主と雌雄を決する一戦にあると誰も気付いていない。
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