表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/81

035

「準備は良い?」


 僕達が狙っている拠点にそろそろ山賊の補給部隊が到着する。各個撃破することを検討したけど、拠点に異常があれば怪しまれる。補給部隊を攻撃したら最悪挟み撃ちになる。なら一方向に集中できる形の方がやりやすい。ソフィの強さは火力と面制圧力にある。僕とゴブリンが前線を維持出来れば必ず勝てる。


「そっちこそ。カードが無いのに~?」


 ソフィが痛い所を付く。残っているコモンのクリーチャーはインプが二枚だ。はっきり言って心もとない。しかしカードキューブを使い切るほどの魔石は溜まっていない。それでも召喚に使う魔石を残して十五枚は引ける。モンスター狩りの途中で何体かのゴブリンを失って再召喚する羽目になったのが地味に効いている。帯に短し襷に長しとはこの事か。


「この戦いが終わってモンスターをもうちょっと狩ったら補充する」


 カードキューブを見せたく無い思いでカードを増やすのを後回しにする。現有戦力でも勝てるはずなんだ。大丈夫だ。


「アイクが言うのならそれで良いわ」


 ソフィは特に反論せずに歩を進める。信じてくれたのか、踏み込んで欲しくない秘密に配慮してくれたのか。


 僕達は山賊の拠点を一望出来て奇襲を掛けやすいと思う場所で待つ。山賊が仕掛けた鳴り子の位置はダイアウルフを使って確かめたので余裕で回避できる。山賊はここまで誰も来ないと油断しているので三回鳴った後は確認すらしなくなった。それを繰り返した事で構成員は五人。一度に出てくるのは四人だと分かった。この拠点だけなら簡単に落とせるのに、少し高度な事を企んだら難易度が爆上がりする。それは僕の前世が好きなカードゲームも同じか。強いクリーチャーを並べて相手のライフをゼロにするプレイはそれだけで強い。でもそんな相手をマジックとトラックで倒すのも面白い。上手く嵌れば強いはずだが、僕の前世は余りそっち方面に長けていなかった。僕も人に自慢できるほど策謀は得意じゃない。この状況でイレギュラーが一つでもあれば破綻するのが分かっているからずっと手に汗を握っている。


 ダイアクロウが上空を通る。今回は鳴かない。想定の人数以内で補給部隊が来た。数が多いのなら逃げる準備が無駄になったのは良かったと思う。しばらくして現れた補給部隊は荷物持ちを含めて八人だ。念のためにダイアウルフを補給部隊の後ろに配置したので、後から来る山賊がいても気付ける。この時点で推定13vs7。相手にアンコモン加護ブレイブ持ちがいるとは思えないから、順当に勝てる戦力差だ。僕はハンドシグナルでソフィに襲撃続行を伝える。ソフィは笑顔で答える。


「旦那! ご苦労様っす!」


 拠点の山賊の声が聞こえる。どうやらリーダーみたいな男に挨拶している。旦那と呼ばれた男は周りの山賊に比べて頭一つ分は背が高い。体格からして農村の出じゃない。騎士の次男以降辺りか? 家を継げずにその腕っぷしを利用して冒険者になり、それでも食えずに山賊に成り下がったか。何かのトラブルに巻き込まれた可能性もある。ああ言う人間は後ろ盾となる組織や家が無いからスケープゴートにしやすい。大人しく死を受け入れなかったまでは共感できても、山賊に身を落とした時点で彼は敵だ。装備の質はブラノックと同等くらいだけど整備がちょっと行き届いていない。剣を抜いていないから確実には分からないけど、壊れたら戦利品から良さげな物を見繕って使いつぶすタイプみたいだ。


「ああ。最近は村が納めるが少なくて大変だが、補給物資は酒多めで持ってきてやったぞ」


 リーダーが気前よく言う。強奪した物資を税と呼ぶか。開き直るならまだしも、自身の悪行を正当化する男は気に入らない。後戻り出来ないのに彼自身が山賊になり切れていない。


「あざっす! おら、運び込め」


 リーダーと歓談している山賊が命じて、周りに居る四人の山賊が物資を運び込み出す。どうやら調べた通りあの拠点は五人で詰めている。補給部隊の山賊は拠点へ入らず休憩している。全体の雰囲気は和気藹々で油断しきっている。


「それで状況は?」


「平和っす。兎が偶に鳴り子に掛かるくらいっす」


「そうか」


 リーダーはそれで納得する。山賊の報告が悪いのかリーダーが怠慢なのか判断が付かない。


「行くよ~!」


 ソフィが補給物資を狙ってファイアアローを放つ。僕が仕掛け時を迷っているのを察して勝手に戦端を開いたか! 優柔不断で決断が遅いのは認めるけど、もうちょっと時間を……。


 ソフィのファイアアローが補給物資を貫く。「酒が多め」なのは本当みたいだ。良く燃えている。急いで消火してもほぼ全損になりそうだ。そうだとしても諦めきれないのが人間だ。


「ゴブリンは前! ソフィを守れ!」


 僕は3体のゴブリンを前に出す。山賊が消化と迎撃に迷っている隙を付いて僕は戦線を整えようとする。しかし、敵はそう甘く無かった!


「物資は捨てろ! 全員で迎撃!!」


 リーダーの怒声が響く。戦闘の判断は適格だ。山賊に身を落とすには惜し過ぎる実力者だ。そして彼が決して分かり合えない敵だと思い気を引き締める。ここに来て手札の少なさが心配になってくるも、頭を振って弱気を追い出す。


「ワイヤートラップをセットして発動!」


 補給部隊の方が練度が高いのか、拠点部隊より先に動き出した。まずは数を減らす!


「うわ! 誰だこんな所に罠を仕掛けたのは!?」


「俺たちじゃねぇ!」


「落ち着け! 敵が仕掛けたんだ!」


 リーダーが一喝して場の混乱を収めようとする。しかしそれは逆効果だ。拠点部隊の怠慢に補給部隊が不満を持つ。そして連携が出来ない山賊など烏合の衆だ。見せつけるようにゴブリンが倒れた補給部隊の男を殺す。


「ファイアアロー!」


 ソフィの第二射が補給部隊の違う男の脇腹に大穴を開ける。僕の狙いに気付いてくれたか! 補給部隊を優先的に狙い、二つの部隊に疑心暗鬼を抱かせる。後で冷静になれば、なんてことはないと気付く。でも十分前後で決着が付く殺し合いでは数十秒の逡巡すら命取りだ。


「目の前の敵に集中しろ!」


 リーダーが装備が一番弱いヨックを一撃で斬り倒す。ソフィの運搬係だから装備は錆びた剣一本なので加護ブレイブ持ちに襲われたら一瞬だ。対人戦では加護ブレイブ持ちの早期発見レーダーとして身を挺して貰っている。


「ニックとゴックはその男に攻撃!」


 如何に強くてもこの二体の攻撃を食らえば落ちる。特にニックは鉄の剣を装備してATKが150に上がっているので一撃で倒せない近隣のモンスターがいないほどだ。一人だった事を後悔しろ!


「ふっ!」


 勝利を確信した僕をあざ笑うかのようにリーダーは攻撃を体に受けながら距離を取る。


「なにぃぃぃ!?」


 リーダーは必殺の攻撃で多少手傷を負うだけで二体のゴブリンと戦いを始める。あの男のライフが250以上ある可能性はゼロだ。となるとアンコモン加護ブレイブ持ち!? そんなのが山賊をやるな!!


 驚いて動きが遅くなったのを見た山賊が迫る。


「落とし穴をセットして発動!」


 焦って無駄に罠カードを使ってしまった! リーダーに使った方がもう一撃入れる余裕が出来たのに!!


「なんでこんな所に穴がぁぁぁ!?」


 足が嵌り動きが取れない山賊にソフィのファイアアローが当たる。この時点で10vs6。ダイアクロウが逃げようとした荷物持ちを空からの奇襲で殺したので9vs6。戦況はこちらが優勢だ。リーダーさえ何とか出来れば勝ち目はある。ならここで使う最適なカードはなんだ!?


応援よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ