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033 15歳、少年少女の逆襲

 一月になった。僕とソフィは15歳になった。そして五日目に逃げるようにモールスヴィルを出た。僕がモールスヴィルに滞在していた三週間は雑用に次ぐ雑用を押し付けられた。一言で言えば村長の嫌がらせだ。だけど他の農民も僕があくせく働く姿を笑って見ていた。体の良いガス抜きに使われたと言う事だ。ソフィ辺りはかなり怒っていたが、しばらくの辛抱だと言って我慢させた。レイが帰ってくる場所を守ると約束したんだ。ソフィの癇癪で滅んだらレイになんと言えば良いか分からない。


 もちろん、ただ言われるままに労働していたわけじゃない。行商人のおじさんとの経験で、捕まった際に使える暗器を多く持つ必要性を再確認した。まずは僕とソフィがしているお揃いのペンダント。これにはカードから顕現したコモンの魔石が付いている。村の鍛冶師にお金を払ってペンダントにして貰った。鍛冶師も見た事が無い石だと言っていたので煙たがられたけど、スルーブルグの露店で買ったと押し通した。コモンの魔石が二つあればゴブリンを召喚出来る。モンスターとしては最弱と言われても、僕の指揮下にあるクリーチャーなら人間相手に活躍できる。


 魔石が有ってもカードが無ければ意味が無い。なのでカードは靴の中に数枚仕込んである。そこまで確認する人間は少ないはずだ。召喚したゴブリンが臭かったらどうしようと言う心配はあるけど、命には代えられない。将来的には魔石とカードを輸送する専門のクリーチャーを召喚したいけど、あいにくそんな便利なカードは手元にない。代用でダイアクロウの足に括り付けるならいけるけど、ダイアクロウの動きが悪くなるし、人間に飼われていると思われる。ダイアクロウは「野生の脅威」だからこそ恐れられている。


 他には靴のつま先に鉄板を入れた。腕のお手製リストバンドには特注のカギ爪が入るカラクリがある。この二つを使えばそれほど高くない壁を余裕で登れる。夜中に村の木製の壁で試したらブラノックに怒られた。でも効果は確かだ。更にソフィの杖の長さを調整して、部分的に鉄で覆った。これで僕とレイが作った杖はお役御免だ。ソフィは名残惜しそうだったけど、これから山賊狩りだと耳元で呟いたらあっさり古い方を捨ててくれた。


 そして何と言っても依頼した物の中で最重要なのが僕が担げるソフィ用の背負い子だ。村を出る時は座らなくても良いのに僕に担がせるほど気に入っている。今は召喚したサックに変わって貰っている。僕の体格の関係で早く作らないとゴブリンが担ぐには大きくなり過ぎる可能性があったのでタイミングはギリギリだ。本当は全部鍛冶師の腕が良いスルーブルグで依頼しようと思っていたけど、モールスヴィルからの道中が危険になりそうなのと、スルーブルグへ到着する前に山賊に一当てする関係でモールスヴィルで作る羽目になった。ある程度はスルーブルグで作り直すか修繕するのは覚悟の上だ。


「カァ!」


「敵か」


「あら、前回と同じ場所なんて芸が無い」


 先行しているダイアクロウが敵が近いと知らせてくれる。ダイアクロウには人かモンスターが居たら戻ってくるように伝えてある。ゴブリンがソフィーを背負っている姿は一般人には少し刺激が強すぎる。サックはボロイフード付きのコートを頭から被って貰っているので遠くからみたら人間と区別がつかない。万が一遭遇戦になっても攫われている最中と誤解された方が言い訳しやすいほどだ。なので人が近くに居そうならソフィには歩いて貰う事になっている。


「ちょっと歩いて行こう。その前に、顕現せよダイアウルフ!」


 僕の前に召喚陣が現れ、僕を丸呑みできそうな凶暴なクリーチャーが召喚される。ゴブリンライダーが残っていれば彼をダイアウルフに乗せていた。


「ダイアウルフは回り込んで背後から襲い掛かれ!」


「ガウ!」


「食い放題よ、ウーちゃん!」


「いやだから、勝手に変な名前を……」


「ガウ!」


 なんか気に入ったらしい。クリーチャーのネーミングセンスは一生分からないかもしれない。


「行くぞニック、ゴック!」


 この二体も同じボロイフード付きのコートを頭から被っている。山賊は五人の未成年を襲撃するのだと勘違いするはずだ。さて、上手く行くだろうか?


 少しだけ歩くと威嚇用の矢が前の道路に刺さる。


「くくく! 死にたく無かったら身ぐるみ……うぎゃあああ!!」


 自信満々に森から出てきた山賊をソフィが燃やす。


「段取りは!」


「皆殺し!」


「違うって! ニック、ゴック、突撃!!」


 サックはソフィの護衛として残すのを忘れない。


「クソガキどもが! 売るのは無しだ! ぶっ殺せ!!」


 森から山賊の怒声が聞こえる。殺気の数から残っている数は七人か。行けそうだ。


「うげぇ! こいつゴブリンだ! ゴブ……」


 山賊の一人がモンスターに頭を勝ち割られる。


「逃げ……」


「逃がさないよ?」


 僕の印字が逃げようとした山賊の左肩に当たり、彼はバランスを崩して倒れる。そこをゴックが錆びた剣で止めを刺す。


「何なんだ! てめえらはいった……」


 山賊が生やし終わる前に後ろから回ったダイアウルフが首から上を丸呑みする。


「ガウ?」


 不味いと文句を言っている様だ。


 そうやって被害を出さずに全滅させれらた。この程度で手古摺ったらレイに顔向けできない。


加護ブレイブ持ちはいなかったのか?」


「居たら山賊なんてやるわけないでしょう!」


「油断は出来ない。冒険者ギルドの質の悪さを見ただろう?」


「え~、逆にあれだけ質が悪いから山賊にならずに稼げない?」


 真っ向から意見が対立してしまった。冒険者ギルドの質が低い前提で、山賊が上か下か争う不毛なものだ。


「良し、金目の物と奇麗な布、そして使えそうな武具だけ回収! 肉は食って良いよ」


 僕がこの力に目覚めた頃よりは柔軟に動くゴブリン達。慣れかな? ダイアウルフの方は全然動かない。


「ダイアウルフはその裸を食え!」


「ガウ!」


 こっちはまだ細かい命令が必要か。一年前に出していればと思うけど、維持費を考えると無理だと自分で納得する。


「色々集まったけど、何か欲しいものあった?」


 ソフィが興味無さそうに言う。


「衣服の質が悪い。それと裸を見ると余り肉付きが良くない。下っ端だ。クワックヴィルの山賊全体の内、どれ位がこの質かで難易度が変わってきそうだ」


「面倒~! 私が全部焼くから」


「それだが、クワックヴィルは直接攻撃できないかもしれない」


「はぁ!?」


「あいつらはやり過ぎだ。今回領主の依頼を受けた行商人を襲った。領主が動く準備をしているかもしれない」


「で?」


「謎の勢力がクワックヴィルを先に滅ぼすと目を付けられる」


「む~」


「それに領主のスパイが潜り込んでいるかもしれない」


「権力には弱いね!」


「ふっ、怖さを知っているからな!」


「バカじゃない?」


「酷! だけど本当に領主とかを敵に回すのは面倒なんだよ?」


「私とアイクが居たら敵なんていないのに!」


 本気で言っているのは分かる。でも世界はもっと広い。僕が見せてあげる事が出来るだろうか? いや、見せよう!


「大人になったら一緒に世界を見て回ろう。それで敵がいないと分かればソフィが好きにすれば良い」


「それって……アイクだもね」


「え、え~? 結構名セリフっぽくない?」


「はいはい。行くんでしょう?」


 ソフィがクワックヴィルを指差す。


「二度とモールスヴィルへ来ようと思わない程度には被害を出す!」


 それがレイとモールスヴィルの最善に繋がると信じて僕達は森へ入る。



応援よろしくお願いします。

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