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q9「機能解放とは」


 平和な一日が終わって。

 放課後になると、僕は真っ直ぐ帰宅し、今日もアイミスを質問攻めにする。



 そのアイミスによると、今後の方針としては、まず僕の適合(シンクロ)率を徐々に上げていく必要があるという。そうしないと球体の恩恵に(あずか)れず、機能の解放も碌にできないからだ。


〖当面の目標は適合(シンクロ)率微増、及び身体強化と特殊機能「擬態」を使いこなすこと。それから球体の機能をいくつか使用可能になることを目指しましょう〗


「昨日言ってた出力系、能力系ってやつだね」


〖はい。特殊機能で外見や動作の隠蔽をしつつ、出力系で身体能力を向上させていきます。能力系はミケの知識や経験を参考に、全機能をミケが理解しやすい形へと分類・統合しました。徐々に身に着けて行きましょう〗


 球体の機能は主に出力系、能力系、特殊機能の三つがあるのだとか。

 ゲームでいうところの、ステータス系、スキル系、ユニークスキル系……いや、課金要素みたいなものかな?


「じゃあ、どれからやる?」


〖では――――まずは学校の宿題を終わらせてください〗


「ですよね。頑張ります」


 適合(シンクロ)率がいくら上がっても、学校の宿題をやっていなくて放課後に居残りさせられたら時間の無駄だ。というわけで、アイミスのサポートを借りつつさっさと宿題を終わらせ、いよいよ本題に入る。


「今度こそ始めようか」


〖では、適合(シンクロ)率の上昇を開始します。違和感があれば三回まわってワンと言ってください〗


「普通に申し出ちゃ駄目かな⁉ そうする必要ってある⁉」


〖冗談です。では、いきます〗


 お茶目なアイミスはさておいて、本体である球体に意識を集中する。

 すると、ほんの一瞬だが眩暈のような感覚に襲われた。


〖……適合(シンクロ)率微増を完了。気分はどうですか?〗


「ちょっとだけ眩暈がしたかな? でも変化は特に感じないや」


〖ほんの僅かでしたから。人格や記憶に影響が出ては元も子もありませんので〗


「ありがとう。それで、何か変わったの?」


〖一部機能が解放されました。出力系「モード:身体強化(ブースト)」が使用可能です〗


「おお! ちょっとワクワクするね!」


 まるでゲームのようなアナウンスに、僕は目を輝かせる。

 身体強化とは、運動音痴な僕にはありがたい。


「それで、どうやって使うの?」


〖……柳谷癸姫の帰宅を確認。心の声での「念話」を推奨〗


(おっと、もうそんな時間か。癸姫がいてもできる? 外に出た方がいいかな?)


〖室内で可能です。まずはテストを行いましょう〗


 そうして言われるがまま、僕は部屋にあった三キロのダンベルを持ち上げる。

 これは脳筋父……もとい父さんが二年前の誕生日にプレゼントしてくれたものだ。少しばかり埃を被っているのはご愛嬌。


(普通に重い、かな)


〖それでは、モード:身体強化(ブースト)を使用します。モード:柳谷光明(オリジナル)から移行中……〗


(うわっ⁉ ダンベルが軽くなった⁉)


 アイミスのアナウンスと同時に、僅かだがダンベルを軽く感じた。

 漫画などで見かける、修行のためのウェイトを外した人みたい。


〖ダンベルが軽くなったのではなく、ミケの身体能力が上がった影響です〗


(凄い! 僕、ムキムキになったの⁉)


〖いえ、見た目は変えていません。興奮しているところに水を差すようですが、これでもまだ一般的な15歳の男性平均には届いておりません〗


(……左様ですか。つまり今までの僕は平均以下の()()男子だったってことね)


〖ご理解いただけて何よりです〗


 全くフォローしてくれないアイミスに涙目になるが、何はともあれパワーアップしたことに変わりはない。

 軽くなったダンベルを何度も持ち上げていると、部屋の外から癸姫の声がした。


「お兄ちゃん、いる? ただいま~」


「おっ? おか、えり……」


 だが調子に乗ってやり過ぎたのか、返事をする際に息が切れてしまう。


「……お兄ちゃん? なんで部屋の中でハアハア言ってるの? まさか……」


「ちっ、違う! ダンベル使って筋トレしてただけだから! ほら!」


 癸姫の訝しげな声に、僕は大慌てで部屋のドアを開ける。

 すると予想通りというか、癸姫はジト目で僕の方を見つめていた。


「……なーんだ。てっきり変なことしてるのかと」


「変なことって何だよ?」


「まあ、男子高校生だもんね? てゆーか妹の口からそんなこと言わせる気? お兄ちゃんの変態~」


「そんなことって何⁉ 健全な筋トレだから! 癸姫の方が変態だろ!」


 危うく誤解されるところだったが、どうにか間に合ったようだ。

 それよりも小学生のくせに、ませた妹である。いったい何処でそんな知識を身に着けてくるのやら。


「癸姫、父さんと母さんの前で絶対にそんなこと言うなよ? 二人ともショックで寝込んじゃうぞ?」


「分かってるって。お兄ちゃんにしか言わないから。その代わり、お兄ちゃんこそ告げ口したら駄目だからね?」


「はいはい。そもそも僕の前でも言わないでほしいんだけどね」


「は~い。それより筋トレとかやり過ぎてお父さんみたいにならないでよ? うちは筋肉バカのお父さんとナヨナヨのお兄ちゃんでバランス取れてるんだから」


「誰がナヨナヨだ。見てろよ、僕だって鍛えて、そのうち……」




 余談だが、後日誤解を招かないようリビングで筋トレをすることに。今の球体(ぼく)に筋トレは必要無いから、本質は身体能力のテストだが。


 すると、その姿を見て感激した父が次々と筋トレグッズを買ってくるようになり、お金の使い過ぎに母がキレることになるのだが……それはまた別のお話。



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