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q156「人生とは」

777チャレンジ、今年も無事に達成しました!

急な予定変更で、今日一日かけて書き直ししていたもので。ギリギリになってしまい、申し訳ありませんでした。PCが不調でなければ、もっとゆっくり書きたかったですが。


それでは最終話、どうぞお楽しみください。



 高校一年生の春、僕は一度、死んだ。

 僕の体は未知の球体へと変わり、僕は新たな人生をスタートさせた。



 ……今となっては、あの頃の出来事全てが懐かしい。

 最初は妖怪すら見えなかったから、初めて見えた時は驚いたっけ。



〖それが今では、あらゆる種族が見えるまでになりましたからね〗


「アイミスのサポートのおかげだよ。ここまで本当にありがとう」



 そう言って僕は、宇宙空間から地球を見つめていた。

 今となっては本当に懐かしい、僕の母星である。こうして見ると、本当に小さくて美しい星だったんだなって思う。



〖色々なことがありましたね〗


「そうだね」


〖ミケが謎のヒーロークダンに変身したり、妖怪一つ目の乳房に心奪われたり、あとシン族の皆の前で恥部を……〗


「そーーの話は忘れようかァ⁉ そんな黒歴史より、もっと色々あったじゃなーーい⁉ たとえば癸姫の前で龍を眷族にした時とかさァ⁉」



 相変わらず僕のことを揶揄うのが好きなアイミスだが、今やそれ無しでは寂しく思うくらいに長い時を重ねて来た。

 今の僕の仲間は、もうアイミスだけしか――――





「ほんと、お兄ちゃんってば変わらないわよね」

「それが光明の良さだぞ」

「あらあら、そうよねぇ」


「ミケ! 宇宙ツナ缶寄こすにゃ!」

「たわけ! おのれが言うのは地球のツナ缶じゃろうが!」

「相変わらず騒がしいポン」

「お姉ちゃん、今日も絶好調で素敵ですニャ」

「パパ、ぼくもあの頃と比べてすっかり成長したの。今夜も寝室でぼくの成長をたっぷり確かめてほしいの」


「その言い方だと、一夜を共にしているみたいに聞こえるのねん」

「実際は寝室で、寝る前に状態確認のスキャンをしているだけなんだな」

「件から白澤に戻っても、全く変わってないでっさー」





 ――――このように、僕の仲間たちは今でも健在である。

 元々長生きな妖怪やシン族たちではあったんだけど、今は僕の眷族化によって不老不死になっているからね。もちろん自室には、あの妖怪も。



「さっき、ミケちんの部屋から「ありゅじしゃま~」って聞こえてたぁよ」


「いつも通りだね。遠野さんも相変わらず、その姿なんだね」


「だって可愛いっしょ? ミケちんも好きみたいだし?」


「ちょっと? 語弊があるよ? まあ、好きだけど……」



 そうして遠野さんを含む人に化けた妖怪も一緒だが、流石に普通の人間は既に亡くなっている。残念だけど、あの頃の同級生や先輩後輩、町の人々も、もう。


 灰谷君、それから識那三重籠という女性も、当然――――





「ちょっと、いのりちゃん? 抜け駆けなのかな? うん?」

「す、すみませんでした。怖いってば、三重籠ぅ」


「相変わらずだな、こいつらは。ねえ、ライカさん」

「バア!」

「ぎゃアアアア⁉」


「こっちも相変わらずだね」





 ――――ではなく、なんと彼ら彼女らは生存していた。


 種明かしをすると、灰谷君や三重籠さんなど一部の人間は不老不死になっていたのだ。その原因というか救世主は、人魚のイリエである。



「いやあ、灰谷君も三重籠さんも、一時は駄目かと思ったけどね」


「おかげさまで、()()()()で、この通りだよ」


「ハァ、フゥ。まさかコーメイがそんなことになってるとは当時は知らんかったが、死にかけの俺を助けるために飛んできてくれたことには今でも感謝しているぞ。おかげで不老不死になって、こうして宇宙規模で生き物の観察が続けられているからな」


「わたしも。お別れかと思って泣きながら死を待ってたのに、まさか永遠に一緒にいられるなんて思わなかったよね」



 死にかけた人を救うためには、人魚の肉が最も手っ取り早かったのだ。

 とはいっても、そのアドバイスはアイミスから貰ったもので、当のアイミスはたぶん他の方法も知っていたのにわざとそれを勧めたんだろうけど。


 まあ、おかげでこうして今も一緒にいられるから、いいんだけどさ。

 ちなみに人魚(イリエ)の肉を食べた者は、人魚(イリエ)が死ぬまで不老不死のままである。そして人魚(イリエ)は僕の眷族化しているので、僕が死ぬまで死ぬことはなく……つまりはそういうことなのである。


 なお、僕の眷族の眷族という不思議な状況のせいか、人魚の肉を食べた者の精神は僕と似たようにフラットになるらしく。

 つまりは永遠の生への絶望とかそういうのも消失するみたいで、彼ら彼女らはあの頃のまま、明るくて元気である。



「さて、最後に地球も見ることができたし、そろそろ行こうか」


「あいあいさー」

「了解です、マスター」

「緊張するなあ」




 僕らは地球から離れ、宇宙の外を目指して移動し始める。

 僕らが目指すのは、この宇宙の外側。そこにある数多の宇宙が存在する世界、その深淵とも呼べる場所である。


 用があるのは、そこに存在する……もとい、そこを中心として何処にでも存在する、謂わば僕の生みの親だ。




 やがて、僕らの前に小さな空間が現れては消え、無数の光が線路のように伸びていき、全ての物の形が崩れて消え、そしてまた何かが形作られる。


 そうして出現した浮島のような大地に、僕は降り立った。

 仲間たちも続いてそこに降り立つと、僕だけがその中心へと進む。



 そこから、どれほどの距離を歩いたのだろうか。

 未だ数ミリも進んでいないようだが、実際は宇宙が現れてから消えるほどの時間を歩き続けている。しかし、それすらも到着すれば一瞬になる。


 地球で高校生をやっていた頃の僕だったら「何言ってるのか意味が分かりません」とか言っていただろうな。まさか、地球の物理法則がまるで通用しない世界がこんなにもあるだなんて、分かるはずがないよなァ。



「あ、いたいた。あそこみたいだね」


〖はい。間もなく到着です〗



 アイミスがそう言ったのとほぼ同時に、僕の目の前に滑らかな銀色の肌の何者かが現れた。そのメタリックシルバーの姿は、随分と懐かしさすら感じる。

 気付けば、さっき別れたはずの仲間たちが僕の前方に集まっている。どうやら空間がループしている()()の部屋みたいだ。



「……お久しぶりです、ラスターさん」


「ふむ。わざわざ会いに来てくれたのだね。呼んでくれてもよかったのにね」


「ええ。貴方にお借りした球体の機能、100%まで引き出せるようになりましたから。折角なので来てみました。随分と時間がかかってしまいましたけど」


「ふむ。時間なんて気にしなくていい。それは無限にあって、巡り続けるだけの要素だからね。ワタシにとっては一瞬より短かったくらいさ」


「あはは、そうでしょうね」



 そう言って、ラスターさんは僕に向かって手を翳した。

 すると僕の姿は人間から球体へと変わり、ラスターさんへと何かのコードを送信してから沈黙した。



「……ありがとう、と言うのだったね。キミたちの星では」


「それが、その情報が、僕の知り得る()()についての全てです」


「ようやく、手に入ったね。このためにキミに球体を渡したのだったね」



 そう言うと、ラスターさんは当時を懐かしむように表情を停止させた。

 今なら分かるけど、ラスターたちにも表情ってあるものなんだなァ。当時は銀色のスベスベにしか見えてなかったんだけど。



「おかげさまで、ワレワレは次のステージに進むことができそうだよ。君も是非、一緒にどうかね?」


「……」



 その提案に、僕は無言で答えた。

 ラスターたちと一緒に次のステージへ向かう。その意味するところは、自らが意識統合型生命体(ラスター)の一部になるということだから。



「……そうかね。残念だが、それもまた選択だね」


「はい、ありがとうございました。ですが、僕たちは僕たちの()()進むことにしますので。ラスターさんたちは、先に行って待っていてください」


「……なかなか言うね? キミ、ワレワレと同じ場所へ辿り着けると?」


「今は無理でも、いつかきっと」


「…………キミ、面白いね。全てのラスターがキミに興味津々だよ」


「それは光栄です」



 ラスターさんは……というより、ラスターたちは急激に情報の分析に取り掛かると、あっという間にQ点の正体へと辿り着いたらしく。

 念願を果たした喜びに震え、それからすぐに行動を開始する。



「…………その球体は、キミにあげるよ。ワレワレには既に不要だからね」


「はい、ありがとうございます」


「では、先に行って待っているよ。また会おう――――」



 そう言い終わると同時に、ラスターたちは此の世界から消滅した。

 何故なら、ラスターたちは()()()()へと旅立ったからである。彼らの念願とは、Q点という此の世界における最後の謎を解き明かし、それを利用して神の領域へ到達することだったのだ。


 シンと静まり返った大地の上で、僕は仲間たちと共に祈りを捧げた。

 それはラスターたちへの手向けでもあり、祝いの言葉でもあった。



 そして僕は、目的も何も無くなった此の世界で、ただポツンと佇む。

 これで、僕の役目は、一生は終わりを迎え――――








「じゃあ、僕たちも行こうか」








 ――――終わりなどではなく、これが始まりだ。


 実はアイミスから、Q点の正体や神々の領域について聞かされて、僕たちは既に全てを知っていたのである。



「アイミスってば、意地悪だよね」


〖これが最善です。あの者たちの努力を実らせるためには〗


「まあ、そうだよね。自分たちで達成することに意義があるだろうからね。僕はアイミスのおかげで楽できたけど」


〖私ではなく、機械と科学技術(テクノロジー)の神の采配です〗


「そうだったね。どんな神様なのかなァ? 会うのが楽しみだよ」






 …………僕らは、旅の果て。


 アイミスを遣わした神の下へと、新たな旅に出る。


 僕たちの長い長い旅は、ここから再び始まる。


 その先に待ち受けるものが何であっても、ただ楽しんで、乗り越えて、さらにその先へと進み続けるために。





「アイミス。それに皆も。これからも、よろしくね」











 こうして、僕たちの物語は区切りを迎える。



 ――――これは、僕が究極進化した宇宙人と遭遇したら、球になってしまった物語。その、ほんの序章に過ぎない。








 ……のかもしれない。分からないけどね。











 おしまい♪

いかがだったでしょうか。


無事に完結まで至ることができ、感無量です。

ただ、ここ数ヶ月は怠惰(色々あったけど)により投稿が疎かで。PCの不調も、もしかしたら完結させろとPCさんからの最後のメッセージだったのかもしれませんね……なんちゃって。


そんなわけで、qの物語は終了となります。

いつもなら設定集など書くのですが、たぶん間もなく(?)PCさんが寿命で動かなくなる気がするので、今回は活動報告を書いて完全終了とさせていただきます。

もしよければ、この後の活動報告もお付き合いくだされば幸いです。



それでは、ここまでありがとうございました。

皆様に幸多からんことを。また何処かで。

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