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q153「格の違いとは」



「なんだ? 何が起こっている?」



 戸惑う龍の腹の中で、僕は行動を開始する。

 未だ球体の力なんて碌に引き出せない小者ではあるけれど、妹を泣かせたやつは兄として少し懲らしめてやらないとね。


 そう思い、僕はシン族が敵わない相手に対し、何をやれるのかを考えた。


「お兄……ちゃん……?」

「まさか、光明……」

「いったい、何が……?」


「なんだこれは⁉ 我はいったい、何を食ろうたのだ⁉」




 ――――考え抜いた末、僕はある方法を試すことにした。

 僕には「思考/加速」があるから、綿密に……ではないけれど、それなりに時間をかけて考えたからね。成功間違いなしだろう。たぶん、きっと。



「ごぶぅ! ぐえっ、ぶええ!」



 苦しむ龍の口から、大量の()()()が吐き出された。

 色は白色で濁っていて、質感はゴムに似ている。あと嫌な匂いのオマケ付きだ。


「ぐべぇ! ま、不味い……」


「酷いなァ。一応僕の体なんだから、もっと味わってよ」


 その声に竜が驚き、目を丸くすると。

 彼の目の前には、僕の姿があった。




「「「おかわり、要る?」」」




 しかも、何人もである。

 忍法、分身の術……なんてね。


「げ、げぇ! き、貴様、いったい……」


「ただの人間だよ。ちょっとばかし分身が得意なだけのね」


 なにせ、この分体機能はアイミスに褒められたくらいの得意分野だ。

 龍の腹で分体を大量に出現させるくらい、朝飯前さ。


「ふ、ふざけるな! 消し炭にしてくれる!」


「え? ドラゴンブレスって、龍じゃなくてドラゴンの技じゃ……」


「消えろ!」


 次の瞬間、何人もいた僕が一瞬でその場から消え去る。

 その光景に、遠くから悲鳴が聞こえて来た。


「いやああ‼ お兄ちゃん‼」


「なに? 呼んだ?」


「って、ええええ⁉ ど、どうなってるの⁉」


「あはは、大丈夫だよ。あれも分体だからさ」


 そう言って、僕は龍の腹に残っていた分体から()()()分体を生み出していく。内側からの圧力に、龍の体が膨張し始める。


「あ、ぐ、ぐあああ……」


「そういえば、このまま龍が破裂したりするとマズい?」


「……へ、え? あ……いや、もしそうなったとしても、また十二年後に……復活するから、大丈夫……です」


「なら、よかった。これで癸姫を泣かせた分のお仕置きは完了かな」


「へっ? あ、う……」


 目の前で起きていることが理解できないのか、三人とも唖然としている。

 特に癸姫は、僕の顔をジッと見すぎじゃないかな。


 なんだか顔も赤い気がするし、風邪でも引いたの?



「……お、の、れええええ!」


「うわ、器用なことするなァ。熱くないのかな?」



 すると、龍はあろうことか自分の体内に向けてブレスを吐いたらしく、腹の中にいた僕の分体が全て焼かれてしまった。

 龍もダメージにはなっただろうが、形勢逆転だ。このままブレスをこっちに吐かれると非常にマズい。防ぐ手立てがない。


 ……と思いきや、どうやら今のでブレスが吐けなくなったらしく。

 龍は怒りを露わにして、僕たちに向けて突進してくる。


「おのれええええ‼」


「じゃあ、こんなのはどうかな? ぬーりーかーべー!」


 そう言い放ち、僕は擬態機能で自らを巨大な()()()へと変身させた。本家の七曲君(ぬりかべ)に巨大化なんて無いかもだけど、今の僕なら姿を変えるだけなら朝飯前だ。


「そんなコケ脅し、効かんわ!」


「やっぱり? それじゃあ、一反木綿! かーらーの、チュパカブラ!」


 そう言って、今度は滅茶苦茶長い一反木綿に変わり、龍の全身を覆うように巻き付いた。ついでに新たに生み出した無数の分身をチュパカブラの姿にすると、龍の体から血を吸うように「操作/エネルギー吸収」で力を吸い始める。


「なんだとっ⁉」


「どうする? 今度は全身、こんがりと焼く?」


「ふざけるなっ! こうなれば、貴様の仲間を道連れに……」


 龍はその勢いのまま、癸姫たちのいる方向へと捨て身の突進を始める。

 うーん、これは流石にマズいかも。また塗り壁で受け止めるか?


(アイミス、なんとかできない?)


〖朝飯前です〗


(真似しないでよ)


 困った時のアイミス頼りだ。

 それで、どうするのかと見物していると。



「過去最高の力を得た我は、最強なのだああああ‼」


〖笑わせますね〗


「ヒイッ⁉」



 突然、龍は何かに怯えたように急停止すると、その場にとぐろを巻くように丸まって震えはじめてしまった。


(アイミス、何したの?)


〖さて、何でしょうね。もしかしたら、自分など比べ物にならないくらい大きな()()()()でも感じ取ったんじゃないでしょうか〗


(……ああ、なるほどね)


 なんとなく察したけど、たぶん球体を通してラスターさんやそれに準じた存在(ちから)でも見せつけたのかもしれない。

 それなら勝負にならないよね。龍に力を与える地球人が何十億人いようと、たぶん宇宙の規模は文字通り()()()だと思うから。


 というか、僕がまだ使いこなせていないだけで、球体を充分にコントロールできればそんなこともできるんだね。流石はアイミスだ。


「わ、我が間違っていた。我なぞ、井の中の蛙だったのだ」


「……えっと、とりあえず終わりってことでいいのかな?」


「わ、我、もう逆らいません。我なぞ貴方様に比べれば、大蛇と糸蚯蚓(イトミミズ)でございます。我、眷族になりますので、どうかお許しを」


「……だってさ?」


「ええ……?」

「あの龍が……」

「いったい、何をどうしたら……?」



 うん、アイミス、明らかにやり過ぎだね。

 結果、(のち)に至上最悪と言われたこの年の龍は、どういうわけか僕の眷族となることで決着したのであった。


 よかったね、イリエ。眷族仲間が増えたよ。

 帰ったら先輩眷族として挨拶してもらうことにしようかな?



〖それはやめてあげたほうが……〗



 今回一番の功労者であるアイミスにそう言われたので、僕は操作機能でエネルギーを操って龍を眷族にし、鎮魂とやらに成功したのであった。


「鎮魂、終了かな。めでたし、めでたし」


「こ、こんなの鎮魂じゃなーーーーい!」

「なんて息子だ」

「成長したわね、光明……」



 こうしてフラグ回収を終え、僕たち一家は無事に帰路に就いたのであった。


 ちなみに倒れていたシン族たちは癸姫が方々に連絡し、龍のことも自分たちが鎮魂したと説明してくれたそうだ。

 危うく各所に正体がバレるところだったね。危ない危ない。



今年も777チャレンジ(7月7日に7本投稿するという特に意味の無いチャレンジ)をやります。まだPCが動いているうちに、少しでも前へ。

今日も起動するまで2回再起動したので、明日はどうなるか。怖い怖い。

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