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q122「冬休みの終わりとは」



 冬休みが終盤に差し掛かった頃、アイミスから適合(シンクロ)率上昇の通知が来た。

 ちょうど外出中だったので、僕は単身歩きながらアイミスと心の声で話す。



〖ミケ、準備はいいですか?〗



 年明けはスキー旅行からの神妖・融乃(ユノ)さん襲来があったから、慌ただしくて疲れたよ。その後、僕の部屋まで彼女が押しかけたせいで校長とぬーさんまで来る始末だったし。

 けれど、その事件から後は至って平穏だったし、別にいいんだけどさ。


(それじゃあ、お願い)


適合(シンクロ)率微増……完了しました。気分はどうですか?〗


(……今回も軽い眩暈だけだね。これにも、すっかり慣れたよ。それで、今回の機能はどういう感じ?)


〖今回は、パッシブの「万技能」と「属性技/土砂」と「技能(アーツ)/人外・無生物Ⅱ式」が解放、アクティブの「操作/エネルギー吸収」が使用可能になりました〗


 いつも通り淡々と説明するアイミスに、僕も慣れた感じで聞き入る。


〖万技能は、あらゆる作成技能に補正がかかる機能です〗


(うん? どういうこと?)


〖具体的に例を挙げると、ミケが工作や日曜大工を行うとします〗


(ええ? できるかなァ?)


〖無理でしょうね〗


 慣れはしたけど、辛辣なことに変わりない。

 物言いがストレートすぎるんだよなァ。


〖ですが、この機能があれば初めてでも大丈夫です。金槌の振り方から木枠の組み方、果ては左官や宮大工の技法まで何でも可能になります〗


(思ってたより凄かった!)


〖熟練度が必要なので、最初から完璧とはなりませんが。それでも道具の扱い方や手順、作業のコツなどが補正されます〗


(けど、日曜大工も左官もやる機会なんて無いけどね)


〖もちろん、もっと日常的な作業にも補正がかかりますよ。たとえば、よく飛ぶ紙飛行機の作り方などであっても〗


(この歳で紙飛行機を作ることもあまり無いんだけど)


 宮大工と紙飛行機の落差が凄いけど、要するに物作りなら何でもいいのね。

 いちいちスマホで調べなくてもいい分、楽なのかな?


〖続いて属性技/土砂ですが、これは地表を覆う土や砂などに干渉できます〗


(そのまんまだね)


〖はい。手を使わずに土を丸めて泥だんごを作ったり、大地を隆起させて山を生み出したりできます〗


(だから落差がさァ。凄いけども……)


 アイミスはお茶目だよね。

 たぶん、いや絶対わざとやってる。


〖技能/人外・無生物Ⅱ式は、Ⅰ式と同様に特定の種族へ自動発動します〗


(Ⅰ式はゴーレムみたいな相手にだったよね。Ⅱ式は?)


〖鉱石や金属を主とする生命体が対象です〗


(よく分からないけど、そんなのと会うことがあるかなァ?)


〖操作/エネルギー吸収は、以前解放されたエネルギー生成と真逆の機能です〗


(イリエにエネルギーを与えた機能だね。ということは、今回のを使えばイリエから吸収することもできるってことか)


〖人物、生物、妖などに限らず、あらゆる物質・非物質から吸収が可能です〗


(そうなんだ、凄いね。じゃあさ、これを使えば食事も必要無くなるの?)


〖元々ミケには必要ありません。ミケの場合、どちらかというとエネルギーの補給ではなく対象のエネルギーを調整するための使用になるかと〗


 そんな説明を受けて、僕はふとイリエにまつわる話を思い出した。


(そういえばイリエ、保有エネルギーが50%を超えると性転換できるんだっけ。なら、この機能で吸収してギリギリのところで制限するのも手かな)


〖……手遅れかと〗


 アイミスが何かボソッと言った気がしたけど、たまたま何も聞こえなかったなァ。うん、僕は全く何も聞いていないぞ。

 とにかく、これでまた色々と凄いことができそうだ。まあ、僕が使いこなせたらの話だし、当分無理な気がするけど。


(それにしても、この適合(シンクロ)率上昇ってさ)


〖はい?〗


(微増、微増って言ってるけど、今ってどのくらいなの? 1%とか?)


〖現時点で、0.0236%です〗


「少なっ⁉」


 あまりの少なさに思わず声を出してしまったが、周囲が無人で助かった。

 それにしたって数値が少なすぎやしないだろうか。これまで六回も適合(シンクロ)率上昇と機能開放をやってきたよね?


〖急激な増加はミケの人格に悪影響を及ぼしますので〗


(そ、それにしたって、あまりに小さすぎない? このペースだといつまで経っても終わらないと思うんだけど)


〖大丈夫です。徐々に上昇する比率は上がっていますし、ミケが慣れてきたことで今年はもう少し上昇の幅を上げられますので〗


(そうなの? それなら……)


〖それに、毎年0.02%ずつだったと仮定しても百年あれば2%です。そのペースでも五千年あれば100%に到達します〗


(スケールが宇宙規模⁉)


 だがしかし、そういえば僕は宇宙より長生きするんだった。

 それなら五千年ですら大したことない気がするし、なんだかなァ。


(まったく、どんどん人間離れしていくよね)


〖まだまだこれからです。0.02%なんて所詮は人間の範疇ですよ〗


(言い方! たまにアイミスから悪意を感じるんだよなァ……)


〖悪意ではなく愛です。一文字余計ですよ〗


(僕は人間離れしていくのに、アイミスは逆に人間臭くなってない?)



 そうしてナビゲーションシステムと戯れつつ、僕は冬休みの最後を過ごす。

 もうすぐ三学期、そしてその先には進級が待っている。楽しみなような、不安なような……きっとまた色々と巻き起こるんだろうなァ。



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