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q106「デートプランとは」



「真冬に山登りとか、お兄ちゃんは馬鹿なの?」



 山登りを終えて帰宅後、妹から辛辣な言葉をもらい、僕はテンションを下げる。

 すると彼女は「あっ」と口を手で覆った。言葉が過ぎたと反省したのかな?


「貴重な冬休みを無意味な山登りに費やすとか、お兄ちゃんは阿呆なの?」


「ちょっと待って? なんで今、追い打ちをかけたの?」


「お兄ちゃん、きっと疲れてるんだよ。たまには真冬の山にでも行って心身ともにリフレッシュしてきなよ。お馬鹿が治るかもよ?」


「おっと、この妹はバグってるのかな? 兄の罵倒にノリノリだね?」


「それで、真冬の山登りで何か得たものはあった? 何も無かったでしょ。じゃあ無事にお馬鹿を自覚できたところで、可愛い妹にお小遣いちょうだい♪」


「いい運動になりましたけど? そしてこの流れで僕から小遣いが貰えると思ってるなら、癸姫は本気でバグってるね。頭でも打った?」


 そんな可愛い妹とのじゃれ合いを終えたところで、僕は冬休みの宿題に取り掛かった。もちろんアイミスの力を借りるつもりだ。

 夏休みと違って大した量では無いものの、やり忘れては大変だからね。さっさと終わらせて冬休みを満喫しよう。


「おかえりにゃ! 早速遊びに行くにゃ!」

「たわけ。今まさに帰ったところじゃろうが」

「お姉ちゃん、大人しくしてるニャ。ミケは宿題で忙しいみたいニャ」

「けど、宿題やってる高校生というより、情報を処理してる機械に近いポン」

「ありゅじしゃま~しゅき~」

「グー、すぴー、ZZZなの~」


 部屋に戻るなり賑やかな面々にほっこりしつつ、僕はポンちゃんの言う通り機械のように宿題を処理していく。だって改造人間だもん。

 なお、光理は山登りで疲れたのか、帽子のまま分かりやすい寝息を立てている。本当に寝ているのか怪しいところだけど。


「……そういえば皆は、何処か行きたいところってある?」


「すげぇポン。高速で宿題やりながら俺らに話しかけてるポン」

「引くわー、ドン引きだわー、なのじゃ」

「ちょっとしたホラーですニャ」

「本格的に人間離れしてるにゃね」

「ゼット、ゼット、ゼット……なの……」


「球体の機能さまさまだよ。皆しかいないんだから、別にいいでしょ」


 妖怪組からも辛辣な言葉をもらい、僕は少し悲しくなりながらも宿題をガンガン終わらせていく。まあフラットになるからいいんだけど。

 というか、光理は絶対に起きていると思う。寝言や(いびき)でハッキリとゼットって発音する人なんて見たことも聞いたことも無いし。


「まあ、ワシらに気を遣ってくれるのは非常にありがたいのじゃが……」

「それより、識那を優先した方がいいと思うポン」

「初デートが待ってるのにゃ」

「最初が肝心ですニャ」

「パパ……ムニャムニャ……男を見せる……すぴぴー、なの……」

「ありゅじしゃま~らいしゅき~」


「うん、まあ、それはしっかり考えてるからさ。大丈夫だよ」


 逆に皆から気遣われ、僕は識那さんの顔を思い浮かべて手を止めた。

 流石に初デートを(ないがし)ろにはできないし、宿題が終わったら真面目に考えないとな。識那さんと打ち合わせ済みで、日程は既に決定してるんだけど。


 そして僕は止まった手を再起動させて宿題を片付けると、次にスマホの検索に「デート 行き先」と打ち込んだ。アイミスに聞けばいいんだろうけど、こういう青春っぽいのも一度くらいやってみたいんだよね。


「えっと……ショッピング、テーマパーク、温泉、旅館、ホテル、動物園、水族館、ドライブ、イルミネーションに夜景……」


「オシャレだにゃ。それにするにゃ」

「それって、どれだポン?」

「ドライブデートはミケには無理ですニャ」

「イルミネーションと夜景もじゃが、旅館やホテルも現実的ではないのじゃ」

「ムニャムニャ……パパ、ご休憩でベビー誕生なの……」

「ありゅじしゃま~おんしぇんしゃいこ~らいしゅき~」


「うーん、現実的なのはショッピングとテーマパーク、動物園か水族館かな? それより、イリエは温泉入ったことあるの? というか人魚って温泉大丈夫?」


 それを言ったら、彼は上陸して(あまつさ)えクッションの上に生息しているわけだが。


 それはともかく、今回のデートには一つ大きな問題がある。

 実は今回の日取りは、十二月の二十四日なのだ。つまりはクリスマスイブ。


「……初デートがクリスマスイブって、大丈夫なのかな?」


「別に変ではないと思うポン」

「というか、仕方ないのじゃ。付き合ったタイミング的にのう」

「聖夜に皆で行進するにゃ!」

「お姉ちゃん、二人の邪魔しちゃ駄目だニャ」


「そっか、よかった。まあ、大人のデートと違ってディナーとか泊まりとか考えなくていいから、遊びに行く感覚でいいよね?」


「パパ、甘いの。きっと識那はロマンティックな演出を期待していると思うの。雰囲気次第では股を開く準備も万端なはずなの……ムニャムニャ」


「光理? 寝たふりして好き放題言ってるけど、今の下品な発言はアウトだよ。罰として今日一日は変な形のオブジェの刑ね」


「ありゅじしゃま~げんきゃきゅれしゅてきれしゅ~」


 イリエは厳格で素敵って言ったのかな。幻覚でステーキ、ではないはず。

 それはともかく、僕は有言実行で光理を変なオブジェに変え、気を取り直してデートプランを練っていく。


「そろそろ真面目に考えてやらんと、識那が可哀想じゃぞ」


「いや、僕はさっきからずっと真面目に考えてるよ? 皆が巫山戯(ふざけ)てるだけで」


「失礼だにゃ。ウチらも真剣そのものだにゃ」

「そう言い張るなら、ミケの頭の上で仁王立ちするの止めるポン」

「自由すぎるお姉ちゃん、素敵ですニャ」


「……初デートは水族館に行って、その後ショッピングして、アミューズメント施設のクリスマスイベントに参加して解散って感じで行こうかな」


「パパ、とってもスムーズに決定したの。まるでAIが決めたみたいなの」


「ハハハ、まっさかァ。皆が巫山戯(ふざけ)てる間にしっかり考えただけだよ?」


 嘘である。アイミス先生のおかげである。

 このままでは皆とじゃれたまま決まらずに終わる気がしたので、コッソリとアイミスに相談してみたのだ。皆のことも頼りにしてるけどね?


 さておき、こうして僕の初デートの計画はあっさり決定し、あとは明日を待つばかりとなったのだった。識那さん、喜んでくれるといいなァ。



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