40話 装置発見 / 校庭の一幕
本公舎屋上、鉄柵とコンクリートの床以外、何も無い真っさらな場所。
下に見えるのは校庭、少し遠くの大通りの様子。
そして、今は少し暗く見える空の色のみ。
「……クラスの連中か。アイツら、ちゃんと逃げられたみたいだな」
クラスメイト達は校庭に避難した後、隔てられた結界の壁をただ見つめていた。
皆、立て続けに起こる超常現象や非現実的な状況に疲れていた。
最早叫ぶ者もいなかった。
行動を起こす事自体がリスクであると悟り、ただ静観を貫いていた。
「待ってろよ。今出してやるからな……」
風間がそう意気込みながら辺りを見回すと、早速怪しい物が目に映る。
少しの段差も無い見通しの良い場所故に、結界を展開する装置もすぐに見つかった。
「あった! 絶対これだ!」
それは筆箱くらいの大きさの黒い筒状の塊。
重さも大した事は無く、鉄アレイよりは軽かった。
中央だけが長方形に窪んでいるだけで、他にパネルやボタンといった機械的な部分は見当たらない。
「……?」
風間はハテナマークを浮かべながら、その装置を手に持って思考する。
「エフ、エム……? イニシャルか……?」
更に得た情報は、先端部分に刻まれたロゴの様な物。
小洒落たフォントでアルファベットが二文字、『F.M』。
「……」
他に何かあるんじゃないかと、どこかを押してみたり、回してみたり、高く上げてみたりした。
しかし、何も起こらない。
「…………結界よ! 閉じろぉ! おらっ!!」
声を上げてみても、特に動く様子も無い。
空の色も薄暗いまま。
「……」
そして、大きく息を吸い……
「……アイツ、やり方教えてねぇじゃねぇかぁぁぁ!!!」
叫んだ。
※ ※ ※ ※ ※
その叫び声は校庭まで届き、体育座りで俯いていた七瀬の肩を震わす。
「ひっ! い、今なんか聞こえた!?」
「え……? どうかした? あーちゃん……」
横に座る黒木は気づかずにいた。
「あ、いや……気のせいか。多分、ウチ今、神経どっかおかしいんだわ。さっきので……ちょ、ちょっとだけ過敏になってんだ……」
「あーちゃん……」
七瀬は公舎の方に目線を送る。
「まだあそこにいんだよね……テロリストのガキと、あの大男……」
「風間っちも宇都見っちも、りょーちゃんもね……」
「ウチ……やっぱり……!」
「だ、ダメだよ!!」
立ち上がろうとする七瀬の腕をぎゅっと引き寄せる。
「そう言ってさっきもヤバかったじゃん!! この前の時だってりょーちゃんは生きてたし……ね? だから任せようよ。し、死んじゃうよ……」
「ウチらは二度も助けられてんだぞ!? 涼香を見殺しになんか出来るか!?」
「あーちゃん……! 私だって気持ちは同じだよ!? でも……! 私達が行ったってどうしようも無いんだよ!」
「それでも行かなきゃなんねぇんだ。ダチの命より重い物なんて無いんだよ!!」
黒木の静止を振り切って七瀬は再び立ち上がった。
「あーちゃん!」
「ヨルカはここにいなよ。ウチは必ず戻るからさ……」
「だったらアタシも……!!」
「……じゃあ、まずはその震えを止めてからっしょ」
黒木の脚は震えていた。
逃げていた時も、教室のいた時もずっと。
安全を確保出来た今でさえ、その震えは止まらずにいたのだった。
「……それはあーちゃんだって同じでしょ!?」
それは七瀬も同様だった。
あそこまで死に近づいたのは、大橋での事件とは比にならない程。
恐怖するのに、それ以上の理由など無かった。
息巻いていた彼女の体はあれからずっと震えていたのだった。
「う、ウチは……別に……」
「あーちゃんも怖いよね? 私も怖いよ。それは多分、りょーちゃんも一緒。だから、私も一緒に行くよ。また怖がるかもしんないけど、二人がいなくなる方がもっと怖いから」
「ヨルカ……アンタ……」
その真剣な眼差しを見て、もう止める事など出来なかった。
「……しゃーない。分かったよ。うん、じゃあ一緒に行こう。ウチらまだ、恩返し出来てねーし。助け合うのが、真のダチっしょ!」
「うん! B、F、F! だね!!」
「イェーイ!! B!F!F!」
震える心を隠す様に、ハイテンション気味に二人は再び校舎へと足を向かわせる。




