なんで女神である私がこんな奴と異世界チート無双ハーレムライフしなくちゃいけないのよ~~~!
「はぁ~~~っ、タイクツ~~~っ!!!」
私はアルテ、この地球とは違う世界で女神をやっています。
わけあって地球に来ています。
というのも、私の世界では変革を起こすために異物、つまり異世界の魂を呼び込むという風習があるのです。
けど、めぼしい魂がなかなか見つからない。
じれったくなって、”異世界への転生を希望の方はこちらへ!”と書いてある看板を立ててはみたのですが、それでも結果はダメでした。
最近は転生モノが流行ってないのかしら?
もしかして、チートを配ってないことがどっかから漏れた?
そんな私じゃどうにもならない不毛なことを考えている最中、一つの魂が私に突撃してきます。
キャッチ バシッ‼ うぅ~~~っ、いっっった~~~~~い
なんの変哲もない魂だけど、やる気採用ってことで、もうこの魂でいいかな。
あんまり遅くなると爺たちに怒られるし。
ということで、転生させても大丈夫か確かめるために、この魂を生前の姿に戻してみる。
その魂の生前は、黒髪黒目で極めて凡庸な見た目をした日本人でした。
でもなんだが疲れている様子、大丈夫かしら?
「あれ? ここは……」
魂が動き出す。
「ここは死せる魂の通り道よ。周りを見てごらんなさい。たくさんの魂が浮かんでいるでしょ。」
「本当だ……あれが魂。ここにいるってことは、俺……」
「残念だけど、あなたは死んだわ。死因は……交通事故でトラックに惹かれたみたいね。」
そう伝えると、魂は急に叫び出した。
「Yes! Yes! イエェ~~~~~スッ!」
「やっと死ねた! これでクソみたいな労働から解放される! しかも目の前には女神らしき人! 死因はトラック! アッハハハハハハハハハ~~~~~っ シャイ!」
え、なに? この人怖い
「えっと、大丈夫?」
「えぇ! 大丈夫です! それよりも異世界転生させてくれるんですよね? 女神様! あの看板にも書いてあるし!」
「えっと、そう思ってたんだけど、やっぱりやめようかしら? 転生の条件に貴方は合わなそうだし。」
元々、世界に変革を起こすために転生させるわけだし。
全然見つからないから、この人で妥協しようと思ったけど、やっぱ却下で。
何の才能もないのに精神異常者とか転生させられるわけないじゃない。
絶対碌なことにならない。
最近は転生者が自分のために用意された異世界だって勘違いして、現地の人も生きているってことを忘れてめちゃくちゃやるって話も聞くし。
「ふざけるなぁ! 行かせろよ! 異世界に行かせろよ! じゃないとパンツ引ん剝くぞ!」
そういって彼が私に襲い掛かってくる。
えっ、ちょっと待って下半身に手が伸びて、……、こいつ本当にパンツ降ろすつもり⁉
いやっ、やめて!
キモイ!キモイ!キモイ!キモイ!キモイ!キモイ!キモイ!キモイ!
「やめて! 離れなさい!」
「じゃあ早く転生させろ! というかパンツ脱げ! パンツ!パンツ!」
「俺は異世界は、好きなだけ女を侍らせてハーレムを作るんだよ!」
「お前もその一人な、やっぱ神様枠は一人ぐらいいないとな。」
いやぁ~~~~~っ! キモイ!キモイ!キモイ!キモイ!キモイ!キモイ!キモイ!キモイ!
こいつ、仮にも女神である私を肉奴隷にするつもりだ!
早く逃げなきゃ! というか目的が転生からパンツにすり替わってない⁉
「この私に向かってなんてこと! 一瞬でもこの魂でいいかなって思ったのが間違いだったわ!」
シュル へ?
パンツが脱げた~~~~~!!!
こいつなんてことしてくれてんのよ。乙女のパンツを脱がすだなんて!
うぅ~~~っ、ぐっすん。もうお嫁に行けない~~~っ。
「よっしゃぁ、パンツゲットォ~」
「ん? なっ、クロッチのところにシミが!」
「す~っ、は~っ、す~っ、は~っ。」
「ぐすん、すんっ、もう止めてぇ、許してよぉ、転生させるからぁ。」
私は涙を流しながら、この異常な魂に訴えかける。
「まじ⁉ よっしゃぁ~~~っ、じゃ、ちゃちゃっとチートつけて頼むわ。」
こいつ、ここまでしておいてチートまでもらえると思ってんの⁉
許さないわ。こいつが転生する場所は、人なんかじゃ生き残れないちょー危険なところにしてやる!
チートどころか、能力値は最低ラインにしてやる!
次いでにこいつを殺せば、女神の屈辱を晴らした英雄として、最高ランクのアイテムがドロップするようにしてやる!
そんな荒れ狂う気持ちを押し殺し、笑顔で転生陣を起動する。
「さっ、この陣に乗って! チートもこの陣を通れば付与されるわ!」
「よっしゃぁっ、とうっ、こうして異世界チート無双ハーレムライフが始まるのだった。」
「何言ってるのよ。さっ、送るわよ。」
「と、その前に。」
私の手が強く引かれ、転生陣に入った。
「やっぱ、異世界は便利アイテム女神は必須だよなぁ~~~」
「へ?」
転生陣が起動し、私と彼は異世界に転移させられた。
え? 転移? 転生じゃなくて?
しかも何ここ! 上空じゃない! 転生陣の設定どうなってんのよ! というか、ここからどうやって生き残るのよ!
「ひゃっほーーーい」
私の少し下で、バカが叫びながら落ちている。
落ちたら死ぬとは一ミリも思っていない表情だ。
そのまま地面に叩きつけられて死んじまえ! パンツの恨みよ!
ずどどーーーーーん
彼が地面に落ちた。やったか?
と思ったのもつかの間、なにやら強そうなモンスターをクッションにして生き残っていた。
ちっ。
「いや~~~っ、びっくりしたぁ。お? なんかモンスター倒しちまったわ。これが転生得点ってやつ? 経験値ウッハウハ♪」
いや違う。お前の能力値は最低に設定してある。
だから、ちょっと強そうなの倒したくらいじゃチートになれないぞ。
そして、下敷きになったモンスター哀れなり。
「さてと、もう一つの転生得点はっと。」
そういうと頭上を見上げてきた。
こいつ完全に私のことをモノ扱いしてやがる。
あっ、私もそろそろ地面に落ちる。
あいつの上に落ちないかなぁ。死なないかなぁ。
ドン ぼふ
よっしゃ、私、ついてる! 運よくこいつの上に落ちれた!
「転生早々、女神の尻に踏まれることになるとは、異世界さいこ~」
え、なんでこいつ生きてるの?
まさか、さっきのモンスターの経験値のおかげ⁉
というか、私の小股にナマの息がかかってきて。
そういえば、パンツ外れたままだったんだ。
てことは、私の小股に直接こいつの口が……いやぁ~~~~~っ! キモイ!キモイ!キモイ!キモイ!キモイ!キモイ!キモイ!キモイ!
ボスボスボスボスボスボスボスボス
何もかも嫌になって、殺意を混めてこいつの腹を殴りつける。
「はぁはぁはぁはぁ」
「どうしたの? ヒステリー? それとも、一昔前に流行った暴力系ツンデレヒロイン?」
こいつ、ここまでやってなんで平気で生きてんのよ。
まぁ、いいわ!
女神権限で天界に戻って、天罰をくらわして、それでおしまいよ。
こいつの精神性が理解の範疇を超えていて、酷く取り乱してしまったわ。全く私らしくない。
さて、女神権限、帰還!
ひゅ~~~~~
木枯らしが舞う。
え? ウソウソウソウソウソウソウソウソ~~~~~っ
女神権限が発動しない⁉
もしかして、転生陣通っちゃったから、私も生まれ変わったことになって、女神じゃなくなっちゃったの⁉
ウソ~~~っ、どうしよ~~~っ、パパ~~~~~‼‼‼
「変なポーズ取って何やってんの? お前。」
「……いいえ、何でもないわ。」
「んじゃ、行こうぜ! 俺の異世界チート無双ハーレムライフに!」
「……えぇ。」
いつかこいつをぶっ殺して、天界のおうちに帰ってやる~~~~~~~っ!!!