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傭兵、爆発に巻き込まれて異世界に転移する(第1部完)  作者: @ルケミー
第1部 第1章 傭兵、異世界でサバイバルをする。
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現状確認2

 ノームの操縦席に戻った俺は、手に持っていたヘルメットを座席の上に放るように置いて、操縦席の後ろにある梯子を滑るように降りて副操縦席に入り、そこの座席の後方に置いてある携帯口糧専用保管庫を漁っていた。

「今日の飯はー......おっ、これに決めたっ。ハンバーグセット風味」

『ああ、ハンバーグという昔のレシピを合成食材で再現した人気上位の味ですか。

 正直、本当にハンバーグの味なのか胡散臭いと思いますが、実物を作るなんて不可能ですから、調べようも無いですねぇ』

「な、なんだ、イクス、聞いてたのか? そ、そんなことより、俺の好きな一本夕食バーを馬鹿にするのか? いくらAIが飯を食う必要がないからって適当なこと言ってるなら流石に怒るぞ」

 漁ってすぐに見つけたものがお気に入りのものだったので俺がホクホクと喜んでいると、イクスの興味なさげな声が聞こえてきたので俺は声がしたほうを振り向くと梯子のほうから覗き見ていた。

 独り言のつもりで呟いていた俺はてっきりイクスが操縦席の台座に嵌まって待機していると思っていたので、彼がこちらを覗き見てしっかりと俺の声を聞いていたことを知り、湧き上がる気恥ずかしさを誤魔化すように彼へ反論をする。


『いえ、そう言うわけでは。主食、主菜、副菜、スープ、デザートなどの食事を1つの棒状にまとめ、食べる箇所で味が変わるという一本食事バーシリーズはメニューの数が携帯口糧の中では最も多いと聞きますが、昔の食事シリーズはどのように調べて再現しているのか気になったもので』

「ああ、なんか大昔の人が遺したレシピ本を企業が買い集めて研究してるらしいぞ。原本なんか小国の国家予算1年分並みで、どこに保管されてるか幹部や役員でも知らないってさ。

 それに下手に嗅ぎ回った奴らが暗部に消されてるって噂もあるから不用意に近づかないほうがいいぞ。といっても、ここは異世界でもう関係のないことなんだがな」

『それは残念ですね。まあ、合成食材も素材や製法が世界規模で機密扱いされていますし、流石の私でも興味本位で食に関してあれこれ調べようとは思って無いですよ。好奇心はAIも破壊するんです』

 俺に合わせてくれたのか、何事もなかったようにイクスが返答したので俺は気を取り直して彼と話しながら保管庫の隣にある給水器からカップを取って水を入れ、左手に携帯口糧を、右手に水の入ったカップを持って副操縦席の座席に座る。すると、こっちに降りてきたイクスが俺の目の前にある専用台座に嵌る。

 結局、こいつは何がしたいんだ、と俺はイクスの行動に疑問を持ったが、まずは飯を食ってからだなと考え、携帯口糧を食べながら彼との話を適当に聞き流したり、たまに反応したりしていた。


「うん。美味かった。今回のやつは俺の一番好きな並びだったな。やはりハンバーグセットは上から肉、野菜、肉、パン、スープの順番で食うのが一番だぜ。

 いやーマジで、同じものでも並び順が違ったりするから色々なパターンを試せるってのが一本食事バーの一番凄いところだと思うよ」

『確か、[至高の組み合わせはどれか?]という議論が長年にわたり交わされ続けていましたね。一時期は戦争にまで発達しそうになったとか。人間の食への探究心はAIの私からみても恐ろしく感じます』

「随分と懐かしい話だな。まあ、いくら生命維持に必要っつっても誰だって折角ならば美味しく頂きたいと思うぞ」

『そういうものですか』

「そういうもんだ」

 食べ終わって俺が軽く感想を言っているとイクスが子供のころ通っていた学校の歴史で習った有名な話を持ち出してきた。懐かしさを感じつつ人間の欲求とご飯事情についてイクスと軽く話した後、カップの水を飲みほしてホッと一息ついた俺は座席の背もたれを少し後ろに倒す。


「くぁーっと。ふぅ。荷物が置いてあるとはいえ、副操縦席はやはり少し狭いな。それでも寝るにはいい場所なんだよな。いい感じに狭いのが落ち着く」

『その言葉、あの人が聞いたら発狂しそうですね。聞かれる心配はないのですが』

「うっ、やめろやめろ。夢に出てきそうだぜ。ったく、えーっと、あとやるべきことは......

 探索は確定で、あとはそうだなぁ......できればノームの修理をしたいなぁ」

『マスターの考えに賛同します。ノームが動かせるようになれば探索の幅が一気に広がりますからね。そのためには、金属類を探さないといけないですが。

 私達の世界ではその辺にある所有者や管理者がいなくなり放棄された建物や道路から簡単に金属を頂戴できましたけど、ここには人工物が無さそうですね』

 周りにぶつけないよう手足を伸ばして軽く伸びをして両手を枕代わりに頭の後ろへまわし、両足をイクスのいる台座へ乗せてくつろぎながら副操縦席の評価をしていると、イクスがとんでもないことを言い、それにより公国で出会った担当者の迫真の顔を一瞬で思い出してしまったので俺は右手で散らすように振り払い、絶対に思い出さないようにと次の行動を考えた。

 ノームつながりから、ノームが動けるようになれば間違いなく生き残れる確率が大きくなると考えていたら、イクスも同じことを考えていたらしく、さらに彼はそのための行動計画についても考えていた。


「ああ、適当な金属さえあればノームに搭載されている特殊合成ナノマシンが損傷や欠損箇所を自己修復してくれるんだが......

 やはり、探索だな。探索の最優先事項は金属で、あとは食糧になりそうなものの調査と異世界人の捜索だな。昔の人は自然物を食ってたっていう話だから異世界だろうが何だろうが自然物があるってことは何か食えるもんがあるはずだ。でないと困る。

 異世界人の方は、あくまでいるかもしれないという仮定の話だから、そこまで優先度は高くない。もしいて、文明なんかを築いてるんだったら、この世界の事情を知るための会話や食料関係などの交渉ができるかもしれねぇ。だがまあ、できれば対話するなら人間に近いやつがいいね。俺は異世界人どころか異星人と会ったこともないんで、いきなり異形種が出てこられると上手く話をする自信がねぇ」

『マスターの言う異星人のような存在がいるかはさておき、異世界人が友好的とは限りません。もし、敵対してしまった場合にはノームが必要となる可能性があります。手持ち系の武器はあの爆発で全て失い、頭部機関銃は弾が切れていますが、胸部E機関砲と素手だけでもやりようはあります。最悪そこらの木の枝で剣もどきを作るだけでもマシにはなるでしょう。やはり、ノームの修理は最優先ですね。

 ということで、ある程度装備を整えてから明日、金属を探して採りに行きましょう。金属探知は私にお任せを』

 ノームの自己修復能力が機能し動かせるようになればなんとかなるのでとにかく金属を探しに行くのと、目の前にある自然物を見て自然がまだあったころではそれを食べて生活していたという話を思い出して、もしかしたら異世界でも同じなのではという希望的観測のもと食料についても食べられそうなものがないかとそれに伴う知的生命体に関する調査をする必要があると俺は考えるが、自分がいた世界では住んでいる星とは別の星には手足が8本あったり目が3つ以上あったりと人間の姿をしていない知的生命体がいるという物語が子供向けの作品でよく出されており、自分も子供のころはよく読み、普通に存在するものだと思い込んでいた時期があったので、この世界に物語に出てくる異星人のような存在がいる可能性も考えていた。

 イクスは俺の懸念について一部は保留し、自衛手段としてノームの修理を最優先するという部分に同意し、俺と同じく金属の探索を優先することを提案する。

 俺とイクスが大体の行動予定を決め終わる頃には外が暗くなっていたので、俺は近くに畳んであった毛布を取り出し、背もたれを一番後ろまで倒して寝る準備に入る。


「異世界でも朝とか夜とかはあるんだな。ということは、ここは惑星かなんかか? うーん、どうなんだろう。異世界じゃなくて別惑星の可能性が? いや、今の状況じゃ何も分からんな。

 あ、そういえばよう、イクス。色々とあって今まで忘れてたけど、ここが異世界ということは、お前、管理局のAI監視網から外れて制限が解除されてねぇか?」

『......あ、確かに、今の私の状態は制限がかかっていないですね。これまで能力半減が当たり前だったので、ここに来てからも無意識にいつも通りの性能で行動していました。いやはや、慣れというのは恐ろしいですね』

「えぇ......そんな呑気な......

 まあそれで、これからどうするよ。今のお前なら1人で自由にやっていけるだろうさ」

 俺は目の前に映し出される光景を見て考えていると、ふと今更になって気づいたことがありイクスに尋ねる。すると、イクスも気づかなかったらしいが、ここの世界の景色を初めて見たときのように慌てることはなくいつも通りの様子で答えたので本当に気づいてなかったのかと俺は思い、もしや制限解除によって何か良からぬことを企んでいないかと疑いたくなり、少し試すようなことを彼に言うが、彼は慌てることなくあっさりと返す。


『何を言っているのですか? 私のマスターは貴方しかいないのですから、貴方のそばを離れるわけないでしょ。それに、貴方はこの異世界を1人で生きていけるというのですか? 今まで叡智の結晶体である私がいなければ生活すら満足にできなかったくせに』

「いや、それは言い過ぎだろ。そんなことは......ない......はず。うん。ごめん。いや、ごめんなさい。私が悪かったです。

 で、でも、ありがとな。そう言ってくれて」

『当然です。私はマスターの相棒ですから。たとえ火の中爆炎の中異世界の中、どこまでもお供しますよ』

「ありがとう。助かるぜ。......ん?」

 一見、普通に見えるがよくよく聞くとなにやら怒っているような、いやそんなことより俺への評価低すぎないですか? いや待てこれ完全に怒ってるぞ、そう思った俺はすぐにイクスへ謝罪をして彼の言ってくれたことへ感謝を述べた。すると、イクスも許してくれたようで俺は再度感謝の言葉を言った。何か不穏なことも言っていた気がするけど気のせいに違いない。

 そんなやり取りをした俺は少し恥ずかしくなりイクスも同じだったのか特に何かを言ってくることもなくそのままお互い無言になり、しばらく副操縦席の中でその状態が続いたが、俺は疲れていたのかいつの間にか眠っていた。途中でイクスが何かを言っていたようだが警告音が出ていなかったので特に重要性を感じていなかった俺には全く聞き取れなかった。

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