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傭兵、爆発に巻き込まれて異世界に転移する(第1部完)  作者: @ルケミー
第1部 第1章 傭兵、異世界でサバイバルをする。
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現状確認1

「よし、ここが異世界だろうがなんだろうが関係ない。イクス、とりあえずはマニュアルに沿ってサバイバル生活をするぞ。基本は変わらないはずだ」

『はい、マスター。まずは現状を把握して今後すべきことの優先順位を決めていきましょう』

「その前に物資の確認をしないとな」

 少し長い現実逃避から帰ってきた俺は、落ち着いてきたイクスと共に現状から生き残るためにまずは意見を出し合うことにした。

 そのために俺は操縦席の座席後方の下にある梯子を下りて副操縦席に移動してそこの座席の後ろに置かれた戦争に参加する前の依頼のために用意をしていた物資を漁る。


「飯は携帯口糧がだいたい1年分あって、水も給水機があるからしばらくは問題ないな。寝床は毛布があるしノームの操縦席で眠れるから大丈夫だな。救急箱はこの前の積み荷護衛の時に補充して使わなかったから余裕はある。服は......戦闘用スーツで我慢しよう。サバイバルに特化したタイプだからスーツ内部の浄化装置で常に体もスーツも清潔で安心安全。これならしばらくノームの中で生活しても問題ないな。いやぁ、マジで依頼期間が長いからと余分に用意しておいてよかったぜ」

『まさか、ここに来てマスターの機内泊セットが役に立つなんて思いもしませんでした』

「宿に泊まれねぇときとかよくあったからな。普段からサバイバル生活してたようなもんだ」

 物資の確認を終え操縦席へ戻り座席に座ってからマニュアルのチェックリストを見て俺が過去の自分の行動を褒め称えるいると、イクスから呆れの声が上がる。宿に泊まれず駐機場で機内泊という自分でも言っていて悲しくなることを誇らしげに言っても虚しいだけだと思ってしまったので、このことを思考の隅においやり次の問題に取り組む。


「ただ、問題があるとするなら、ここが異世界である場合なんだよなぁ。

 水や空気はノームの周囲から取り込んで内部の浄化装置で浄化して操縦席内に循環させているから、もし、取り込むものに未知の毒素や危険物質が紛れ込んでいて、それが何らかの理由で浄化されずに中に入り込むと非常に不味い」

『そうですね。それに、食糧が尽きれば外に出て探しに行かなければなりません。結局のところ、外の大気の状態がマスターにとって毒となるかどうかを調べなければいけませんね。今なら周囲に生命反応や機械反応がありませんから安全に調査できます』

「よし、一旦確認作業は止めて、最優先事項として大気の調査をするか。空気も水もノーム内に残されたものだけで1ヶ月はもつが、ずっと中に籠り続けるには無理があるしな。余裕があるうちにやっておかないと」

 こうして、俺はイクスと話し合うことで最初の行動指針を決め、そのための準備として対人対小型武器であるハンドガンとナイフの状態を確認してからヘルメットを被り重力制御を切り、操縦席の上部にある出入口を開け、台座から離れたイクスと共に周囲を警戒しながらノームの外へゆっくりと出る。


「どっかの自然公園だと思えば、見た限り普通の世界で特に異常も無さそうだよな。まあ、自然公園なんて入場料が高すぎて遠目から眺めるだけで一度も入ったことないんだけどな」

『どの自然公園にも存在しない草木だらけなので実質異常ですよ。あくまで見た目だけで判断すれば何の変哲もない光景ではありますが。

 さて、大気中の成分分析を開始します......』

「うーん、ここは本当に異世界なんかねぇ。見た感じだと太陽は1つしかなさそうだし、空の色も青いし、この光景を実際に目で見ても異常ではないことを信じたくなるという気持ちが出てくるわ。もしかしたら俺はまだ眠っているか最悪すでに死んでて夢を......なわけでもないしなぁ」

 イクスが黙々と作業をしているあいだ、俺は空を見上げたりあたりを見渡したりして元の世界と異世界の違いを探してみたり、膝くらいの高さの草が生い茂る大地にノームから降り立ちスーツに付属する靴越しに何度も踏み締めてみたりして今置かれている現実を受け入れようと努力をするが、なかなかに苦戦をしていた。

 まさか、初めて踏む大地が自然公園じゃなくてどこかの知らない大地になるとはなと思考することに疲れて足元の小さな塊を足でつつきながら思っているとイクスから作業終了の音が出る。


『分析終了。ここの空気は私達がいた場所と同じ成分で構成されています。ですが、1つだけ未知なる物質があります。これがマスターの身体にとって無害だと判明すればこの世界で生きることが可能となります』

「大気中に含まれる未知なる物質ねぇ......うーん......やはりここは異世界ってことになるのかぁ......

 んで、無害かどうかなんてどうやって調べるんだ? 実際に少し吸ってみるとか?」

『専用の機材がないと調べることができません。あとは、動物ではない、異世界の人間がいれば彼らを観察することで調べることができますが、動物と思しきもの以外の生命反応が今のところありません。なので、マスターが言ったような自身の体を張って実験するほうが1番効果的で効率的かと思います。それを言うからにはもちろん、協力してくれますよね?』

 イクスからの結果を聞いて、誰も気が付かなかったとか最近になって生まれた新たな物質とか可能性としてあるのでは、いやそんなことありえねぇなと自問自答し最終的に諦めるようにこの世界は異世界であると認めた俺が思考を放り投げるように冗談半分で言ったら、彼が真面目な声で返してきた。イクスの言った案に俺は一拍遅れて理解する。


「......は? えぇ......マジかよ。流石に怖くてやりたかないんだけど、この問題が解決しない限り結局のところ生きられねぇし、いるかどうかも分かんねえ異世界人を探すのもなぁ......

 うーん......ぬぬぬ......くそっ。やるぞ。やったるぞ。どうせここでウジウジしたって状況は改善しねぇんだ。イクス、ヘルメットのバイザーを少し開けて呼吸をする。俺の体に異変を感じたらすぐに止めてくれ。頼んだぞ! マジで頼んだぞ!!」

 『頑張ってください。マスターの健康状態を観察します。いいですか、マスター?ビビらずしっかり大きく深呼吸をするのですよ。でないと、例の物質による影響を観察することが出来ないのでいつまでも終わりませんよ』

 「わ、分かってら! こちとら、そこそこ優秀なBランク傭兵なんだ。常に生きるか死ぬかの大博打を10年もやってきたんだ。こんなことでいちいちビビってられるか! 本当だぞ!?」

 『何のフリですか。常に安全第一じゃなかったんですか? いいからさっさとやってください』

 下手をすれば少量吸い込むだけで死ぬかもしれないという恐怖でビビる俺にイクスが早くしろと茶々を入れ、俺は仕方なく、本当に仕方なく震える手でゆっくりとバイザーを少し開けて数回深呼吸をする。その後バイザーを急いで閉めてイクスからの報告を過去一番にドキドキしながら待つが、その間、特に体に異常を感じることはなかった。そして、普段と何も変わらない様子のイクスから淡々と吉報が告げられる。


『例の物質を解析してみましたが、毒性はありませんでした。さらに、吸い込む時と吐き出す時の量が全く変わっていません。つまり、体内に蓄積されることは無いということですね。それと、一度体内に入り込んでも特に身体に何の影響も及ぼさないようですね。いったい何なのでしょうかね、この物質は?

 まあ、それよりも、良かったですね、マスター。完全に無害であると確定したので自然豊かなこの場所を生身で気兼ねなく歩くことができますよ。私達の世界の方々がさぞかし羨むことでしょうね』

「良かった、生きてる。あー怖かった。何が未知なる物質じゃ、脅かしやがって。

 ふー。安心したら、ここの景色が大変素晴らしいものだと心の底から感じられるようになったわ。異世界万歳!

 しっかし、俺達の世界には無い完全天然物の自然かぁ。折角だしあとで散策しようぜ、イクス」

『そうですね、マスター。例の物質を研究したいところですが、流石に情報が無さすぎるので情報収集を兼ねた散策もとい探索をしたいと私も考えていました。

 ですがその前に、一度ノームに戻りましょう。爆発に巻き込まれて異世界に来たばかりですから頭を冷やし身体を休めたほうが良いかと思います。探索は翌日に行いましょう』

「おっと、そうだな。危ない危ない、色々とあり過ぎて危機感が無くなっていた。腹の感覚的に飯の時間だし。飯食って落ち着いてから現状確認と優先順位決めの続きをするか」

 イクスからの報告の最初の部分を聞いた俺は即座にヘルメットを外し異世界の空気を肌で感じながら再び深呼吸をして生きている喜びを表すべく内心で小躍りをし、浮かれに浮かれ自身の置かれている状況を忘れてこの後の自然探索にワクワクしていたが、イクスの提案を聞いてハッとなり、意識と思考がいつものように戻る。そのおかげか空腹を感じたので彼の言うとおりにノームの操縦席へ戻ることにした。

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