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傭兵、爆発に巻き込まれて異世界に転移する(第1部完)  作者: @ルケミー
第1部 第5章 傭兵、魔物を蹂躙する。
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不穏な気配

「んー? 森方面の討伐系依頼のほとんどが3級以上になってるな」

『今の森はかなり危険な状態らしいですよ。詳しくは私も知りませんが3級冒険者でも苦戦しているらしいです』

「よく見たら薬関係の採取系依頼が4級以下に多く出回っているわ。もしかしたら今の状況ってかなり不味いのかしら?」

 朝、俺は朝飯を食ってから宿を出たあと、昨日立てた予定通りにギルドへ赴き受けられる依頼の中から採取系依頼を受けるべく冒険者がそこそこいる掲示板の前に立った。

 そして、目の前に貼られている様々な依頼状況からイクスやソフィアと共に色々と推察をしてしまうが、詳しいことは何一つ分かっていないので俺はいったん保留することに決める。


「まあ、俺達があれこれ考えても仕方ない。何かあればギルドの方からなんか知らせが来るだろ。今まさに採取系依頼を受けようとしてたんだし丁度いいと思っておくか。

 それに、報酬もそこそこ良いみたいだしな」

『そうですね。私達がしゃしゃりでてもそれが必ずしも良い方向へ転がるとは限りません。巻き込まれているわけではないので今は普通にしていましょう。

 それにしても、現状、仕事には困らないのでこの世界ならマスターは金欠にならないですみそうですね』

 分からないことをいつまでも考えていては時間の無駄だな、と俺は思って話題を変えるべく目の前にあった4級依頼を指差してイクスとソフィアに話しかけた。

 だが、俺の意見に同意したイクスがいつものごとく余計なことを言いだし、それを聞いたソフィアが何か勘違いをしたのか憐れみのこめられた視線を俺に向けてくる。


「あんなに凄いのに金欠って......お兄ちゃん達の世界って厳しいのね」

「ソフィア、絶対勘違いしてると思うが、その話は後でするからな。イクスは余計なこと言うんじゃねえぞ。

 ほら、予定は決まったんだからさっさと行くぞ」

 事情があったんだが、それを話すために色々と話す必要があるしそこそこ時間が掛かるから今話すわけにはいかねぇ、と俺はすぐにソフィアにはあとで訳を話そうと言い含めておきイクスには釘を刺しておき、薬草採取の依頼を受けるための手続きをしてから外へ出た。

 その後、俺は見慣れてきた街並みを眺めつつ門前に向かい門兵と手続きをして街の外へ出てノームに乗り込む。


「さて、準備はいいか?」

「端末を起動させてっと。うん、問題ないわ」

『なかなか手際が良いですね』

「これでも暇な時間はちょいちょい弄ってるからね。特にメモ帳って機能は素晴らしいわ。色々なことを書いて記録することができて嵩張らないから便利すぎるわ」

 俺がソフィアに副操縦席の準備ができたか聞くと彼女はすでに終わらせていたらしく、イクスが感心していた。

 昨日今日でここまでできるとは凄いな、と俺もイクスと同じように思っていると、ソフィアから端末を使いこなしているかのような発言が飛び出してきたので、俺は彼女の能力の高さにただただ驚くばかりで、つい感想が漏れる。


「使いこなしてんなぁ。

 とりあえず、反応探知をしてみるか? 進行方向に魔物や人がいないかの確認と薬草探しに」

『そうですね。ソフィアさん、まずは魔素反応探知を行ってください』

「えっと、魔素に切り替えてっと......あ、出た出た。

 たしか、地図上に出てるモヤみたいなのが魔素を表してて、濃度が薄いものが青色で濃いものが赤色になるのよね?」

 予想以上のソフィアの頭の良さに俺は内心舌を巻きつつ、彼女の練習のために気持ちを切り替えてすぐさま指示を出し、イクスが指示内容の補足をした。

 すると、ソフィアは確認しながら操作を進めていき、初めてとは思えない速さで探知をしてみせた。この結果に俺は、新人オペレーターよりも速いし十分に使いこなしてねえか、と驚き固まってしまった。

 固まる俺を他所にイクスによるソフィアのオペレーター実習が始まる。


『そうです。周囲の魔素についてある程度認識できたら次は生命反応探知に切り替えてください』

「切り替え切り替えっと......

 おっ、街以外の周囲に強い生命反応は無いわ。だいたいは植物系の反応で埋め尽くされてるわね。

 魔素が濃い場所はないから薬草類もここら辺には無さそうかな」

「あ、ああ、分かった。しばらく道なりにノームを歩かせるから適度に探知を行ってくれ。

 あと、気になることがあればすぐにイクスか俺に言ってくれ」

「分かったわ」

 当たり前な感じで操作してるが、昨日教わったばかりとは思えねぇくらいにできてるんだよなぁ、ソフィアに言ったほうが良いのだろうか、と俺は悩みつつ彼女の探知結果を受けてノームのカメラ越しに見える範囲を警戒しながらノームを歩かせていった。

 そして、ソフィアが薬草を探知で見つけ、イクスが判別し、俺がノームから降りて採取をするという流れを十数回行っていった。最初は大雑把に把握できても細かい判別ができていなかったが、回数を重ねていくうちに慣れてきたのかソフィアは間違える回数が徐々に減っていき今では正確に薬草を見抜けるようになっていた。

 その後はソフィアの完璧かつ念入りな探知によって道中特に何もなく目的の薬草を集めていくのである。


「......あっ。この反応は目的の薬草かな?」

『正解です。もう完全にモノにしていますね。流石です』

「まあね。探知を使って魔素を読むのってお婆ちゃんから教わった魔力の流れを読むのと同じようなものだったからすぐに理解できたわ。まあ似たような反応には戸惑ったけどね。もう慣れたものよ。

 まあでも、探知で魔素が可視化できちゃうのって反則だわ。これなら誰でも魔力を読めちゃうしノームちゃんって魔術士殺しだわ」

「イクスならノーム使わなくても魔素とか魔力とか分かるんじゃねぇか?」

『可能ですね。ただ、範囲が人間にとっての中距離の半分程度なのでノームの探知性能には劣りますが。一応、私自身である程度の探知は可能です』

「やっぱりイクスさんの存在が反則だわ......」

 もうすっかり並みのオペレーターだな、これなら俺も安心して任せられそうか? いや、まだ実戦を経験してないからそれ次第か、だが、現状だけでも十分だよな、と俺がソフィアの技量について思っていると、余裕のできたソフィアがノームの凄さを褒めていた。

 なので、俺が茶化すようにイクスの方がもっとヤバいと伝えるとソフィアは彼にドン引きするような反応を見せた。

 そんなこんなで、目標数の薬草を集め終えて、俺はこの後のことについて話をする。


「よし、これで依頼で指定された量は確保できただろうからあとは探知しながらゆっくり帰るだけだな」

『折角ですから、ソフィアさんには遠距離の反応探知を体験してほしいですね』

「そういえば、遠距離はまだやっていなかったわね」

「じゃあ、今やっておくか」

 帰り際でも探知の練習はできるだろうからあえてノームをゆっくり歩かせても良いかもな、時間も昼前だし問題ないだろ、と思った俺はゆっくり帰ることを提案するが、イクスの案を聞いたソフィアが賛同したので彼の案を選択することになった。

 そういえばやってなかったな、と思った俺は歩かせようとしたノームを止めてソフィアの探知が終わるまで待つ。


「ええっと、遠距離の魔素反応探知でいいかな......

 えっ!! な、何これ! 森の方なんだけどとんでもないくらい魔素の濃度が濃くなってる! 普段の森の魔素濃度を探知で計測したことないから分からないけど、ここの濃度と比較してみれば異常事態だと考えられるわね」

『確かに、私が前に計測したものより濃度が明らかに濃いですね。

 生命反応はどうですか?』

「そうだわ、ちょっと待ってて......

 あっ! オーガくらいのが4つと......人の反応が5つあるわ! 地図で見た限りだと追われてるっぽい!

 オーガっぽいやつもノームちゃんの記録に載ってるものより魔素が多いみたいだし上位種かそれ以上の別の魔物もしれないわね。これって助けに行った方が良いんじゃないの?」

『何かしらの情報を持っているかもしれないですね。助けたほうが良いと思います』

 ソフィアが慌てながら報告をあげ、それを聞いた俺が、森の方で魔素が異様に濃くなっているのか、魔素が濃いとどんな影響が出るんだ、と思っていると、イクスに言われてハッとしながら生命反応を探っていた彼女が今度は慌てることなく独自の分析結果とともに報告をしてきた。


 うーん、報告を聞いた限りだと何とも言えないな。追われているらしいが下手に首を突っ込んでいいものか......だが、イクスの言う通り、情報収集のために様子を見に行った方が良さそうだよな。まあ、状況はソフィアが予想している通りだと思うから戦闘準備はしておかないとな。

 と、あれこれ考えた俺は追われている集団を助ける方向で動くことを決め、ソフィアに戦闘になることを言う。


「知っちまったからには無視するわけにはいかねぇ。助けに行くぞ。ソ

 フィア、いきなり実戦だが補助頼むぞ」

「う、うん。分かったわ。なんとかやってみる」

『道案内は私がします。ソフィアさんは引き続き探知をお願いします。戦闘時にはまた指示を出します。

 マスター、今回は速度が重視されるかと思われます。そこで、ノームの制限を解除したほうが早く現場に着けると思いますがいかがしましょう?』

 イクスの提案を受けて俺は、魔鉄製のノームに慣れてきたし、そろそろ従来以上の能力に対応できるようにならないといけないところではあるが、本来ではありえない、通常の範囲を超えた運用であるから操縦者への負担を考えると慎重に扱うべきだよな、と考え彼にそう提案する。


「制限解除か......制御装置があるとはいえ身体への影響を考慮すべきだ。

 だから、いきなり上げずに少しずつにしてくれ。

 ソフィア、身体に異変を感じたらすぐに言ってくれ。スーツを着ていない分負担がデカいからな。無理はするなよ」

「う、うん。分かったわ。一応、身体強化はしておくわ」

『さあ、出撃しましょう』

 ノームを走らせながら徐々に出力を上げていき、125%あたりでソフィアの身体に異変が生じたので安全を考慮して110%の状態を維持したまま俺は探知で把握した場所へ急行した。

 そして、俺は冒険者と思われる集団が負傷者を抱えて森から出てくるのと、それを追いかける赤いオーガの集団を発見するのであった。

ニャ?

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